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2004年8月6日(金)第4,034回 例会

長嶋ジャパンのメダルの色は?

長 崎 慶 一 氏

元プロ野球選手 長 崎 慶 一

1950年高知生まれ。 '69年北陽高校卒業, 夏の甲子園大会出場。 '72年東京六大学野球・春夏連続首位打者, 同年プロ野球ドラフト会議にて大洋ホエールズ1位指名,'73年法政大学卒業後入団。 '85年阪神タイガースに入団,21年ぶりの優勝に貢献。 '87年阪神退団。
2000年日本野球チーム打撃コーチとしてシドニーオリンピック出場, 4位。 '03年東京都荒川区議員, 現在に至る。

※当初予定の芦原弘子氏, ご本人都合により変更。

 前回のシドニー五輪で私は日本の野球チームのコーチをしました。メダルを取れなかったわけですが,当時のアマチュアの力は非常に落ちていました。それに金属バットから木のバットに短期間で切り替えないといけませんでした。また,大会前の合宿では洗濯も自分でし,食事も簡素,部屋も3人部屋と待遇は良くありませんでした。なによりも大会までの準備が足らなかった。

 当時は,読売の渡辺オーナーがすごく反対されました。巨人は絶対選手を出さない。なぜそこまで反対されるのかな。後でうかがった話では,あくまでもオリンピックはアマチュアの大会だ,プロが出るべきではない,こういう考えだったそうです。プロの協力がありませんでした。その結果,本当に屈辱的な成績で終わってしまいました。初めて野球がオリンピックでメダルが取れなかった。非常に申し訳ないという思いがありました。

絶対勝たないと

 その反省を踏まえて,今回はオールプロという方式を取りました。監督に長嶋さんが決まると,いきなり8億円という予算がつきました。前回では選手の移動は全部普通の指定席,飛行機はエコノミー,団体で一番後ろ。それが今度はビジネスクラスで,待遇もこれだけ違ってくる。残念ながら,長嶋さんは病魔に倒れられました。今でもまだ右下半身麻痺が残っております。皆さん見られたように「3」という数字を精一杯書かれました。あの字は力強くありません。それでも長嶋さんが書かれた。ですから,今回行く選手24人,コーチ3人,非常に大きな運命を背負っております。長嶋さんのためにも,日本の野球のためにも,絶対勝たなければいけないんです。

 自分たちがやったときには,キューバの野球チームは予選では力を抜くんです。日本の選手はどれぐらいの力かなと,測りながらします。それと予選の戦い方,1位-4位,2位-3位です。必ず4位になるチームに対してどうやって戦っていくかと考えるんです。ですから,2位でも3位でもいいんです。今回参加している8チームのうちのどこと当たれば必ず準決勝で勝てるか,こういうことを考えております。キューバが1位であれば,日本は対戦相手になるので絶対4位になっちゃいけないんです。キューバが2位だったら3位になったらいけないんです。それが一番のメダルへの近道だと思います。

負ける勇気も必要

 長嶋さんがいればそれができると思うんです。中畑はどうかなと思います。非常に真っ直ぐな人間なんです。すべてを勝ちにいってしまうんです。そうじゃなくて,準決勝のためにどう戦っていくか。強敵のキューバと当たらないために,どういうふうにやっていくか。もう絶対取らなきゃいけないんだという意識が非常に強過ぎます。負けることの勇気がないのです。だから,最終的に準決勝でどこと当たって,決勝でどこと当たるか,そういう考え方ができればいい色のメダルも取れるのではないかと思います。

 ベスト4に入れそうなのは日本,キューバ,カナダ,台湾,オーストラリアあたりですね。伏兵としてオランダ。ギリシャ,イタリアはそんなに強くありません。

 長嶋ジャパンが金メダルを取れると野球は明るくなります。指導者というのは明るくないといけないんです。長嶋さんの何に引かれるかと言いますと,明るいんです。あの方がアテネに行けないのは非常に残念なんですが,長嶋さんのユニフォームがベンチに入ります。ビデオレターも行きます。皆そういう長嶋さんのためにと集まった24人なんです。プロ野球を背負っています。サッカーに追いつき追い越されたところを,もう1回,本来の野球界に明るい兆しを見つけなければいけないんです。メダルを取れなかったら大変なことになってしまいます。

中畑の采配がすべて

 今祈るのは,長嶋ジャパンが金メダルを取って帰って来ること。それはひとえに中畑の采配にかかっていると思います。予選をうまく戦えるかどうか,準決勝でキューバと当たらないように考えることができるのかどうか。多分しんどいと思います。彼は予選7つ,7戦全勝で通過しようということしか頭にないと思います。そこのところを柔軟にすれば,金メダルの可能性は大いにあると思います。ですから,中畑が何もしなければ勝てると思います。選手24人に「お前たち,好きにやれ」,そういう野球ができれば勝てると思います。長嶋ジャパンのために,長嶋さんのためにとあんまり頑張り過ぎると,逆効果が出るんじゃないか。

 キューバ戦だけが非常に心配です。ですから準決勝の組み合わせ,何とかキューバに当たらなければ,金か銀なんです。自分たちが失敗したのは,予選で韓国に負けたからです。最終的に準決勝3位決定戦でも韓国に負けてしまった。プロアマの難しさ,勝つことの難しさを嫌というほど味わいました。

 日の丸を背負っていくプレッシャー,大変だと思います。金メダルで新しい風を日本に吹かしてほしいと期待しています。今のプロ野球の問題,長嶋ジャパンが金メダルを取ることによって,すべていい方向に行くんじゃないかなと期待しております。