1939年生まれ。1998年7月当クラブ入会。'06~'07年度当クラブ会長ノミニー。1964年3月慶応義塾大学法学部卒業,同年4月(株)大丸入社。'87年4月同社本社営業企画部長。'91年9月(株)大丸オーストラリア代表取締役。'95年5月(株)大丸取締役,本社営業戦略室長事務管掌。'96年5月常務取締役,'97年3月社長。'03年5月取締役会長兼最高経営責任者,現在に至る。
〈大丸社員の方によるファッションプレゼンテーションと共に〉
全国百貨店の売り上げは,この2年間,対前年ほぼ3%減で,どんどん縮小していましたが,今年に入って4月以降が非常にうまく持ち直し,9月以降は前年を上回っています。大阪地区も同じような動きで,一応底打ち反転の動きが出てきていると思われます。
本年の消費の特徴で一番大きいのは,この8年間,前年割れを続けていた紳士物に,「クールビズ」効果などで回復の兆しが見えてきたことです。個人消費を飛行機に例えると,男性消費は後ろの車輪で,景気が後退するときには先に落ち,回復時は一番最後に離陸する。これが,前年を上回ってきた。いよいよ景気も本格回復してきたと感じます。
本日は個人消費の動向を3つのキーワード,「男性消費の復活」,「女王様ファッション」,「ロハス(Lohas:Lifestyles of Health and Sustainabilityの略)」,この3つで解いてみたいと思います。
「男性消費の復活」で一番特徴的なのは「クールビズ」効果。奥さんに任せっ切りだったネクタイやワイシャツを自分で選ぶ,おしゃれを楽しむ,自分らしさにこだわる男性が増えてきたという気がいたします。「ちょいモテおやじ」として,オジサンもカッコよくありたい,女性にモテたい,こういった願望が非常に強くなってきています。
ジャケットの特徴としてシングルボタンが2つ,ほっそりしたシルエット。「ナロースーツ」と呼んでおります。パンツを見ていただきますと,ノータックかワンタック。このように細身のシルエットのものを着ますと,靴がちょっと変わってくるわけです。つま先部分が長くなった「ロングノーズ」という靴がはやっております。ネクタイもちょっと細めでございます。
冬の「ウォームビズ」として,中高年層の皆さん方に人気があるのはカシミヤ。少し値段が高いのですが暖かくて非常に軽い。しかも柔らかく上品な感じがする。また,暖かさで注目されているのが発熱性の素材を使ったアンダーウエアです。汗を繊維が吸収し,ウエア内の湿度を約20%少なくしてくれる。肌着だけで12月は対前年25%ぐらい売り上げが増えています。また,スイス製機械時計などは15%から20%伸びています。
2つ目の「女王様ファッション」では,19世紀後半のイギリスのヴィクトリア女王のファッションを取り入れた「ヴィクトリアン」とか,18世紀の「ロココ時代の貴婦人スタイル」など,レースとかコサージュを使った装飾性の強いものが売れております。
売れておりますのは,ウエストを非常に細く絞って,腰のあたりが随分ふんわりとしたボリューム感のあるシルエットの「ふんわりスカート」です。上にはレース,フリル,リボンなどの装飾を施し,上着はベルベット素材。リボンとかコサージュなどで飾りのついた,丈の短いコンパクトジャケットが人気の中心となっております。
最後に,「ロハス(Lohas:Lifestyles of Health and Sustainability)」。「おしゃれで楽しい生活」のために開発された商品とかマーケットを言います。健康的で環境に配慮した商品,サービスを選ぶライフスタイルで,自然と調和した快適な生活を送りたい,家族の健康を考える,おしゃれなどの個人の要望を満たす運動です。その中で目立つのは「ヨガ」で,ヨガ関連商品が非常に売れてきております。それから,「医食同源」。特に漢方薬を材料にした新しいお菓子が開発されて,よく売れております。
消費のお話はこのあたりで終え,ファッショントレンドのご紹介を申し上げます。
ビジネスシーンでは先ほどご紹介したナロースーツが人気ですが,オフタイム版としては,艶っぽいベルベットのジャケットを着て,下はジーンズ,シャツはボタンの1つ目を外してアクセサリーを少し見せるというスタイルが流行っています。
2番目は「ウォームビズ」ファッションで,カントリー風のジャケットに明るい色のシャツ,スラックスはコーデュロイをはいております。
3番目は,クラッシックな半端丈パンツスタイルです。「小公子」の主人公を彷彿させるような丈の短いタイプであります。トラディショナルな感覚のツィードパンツを膝の位置で断ち切って,裾をダブルに仕上げて折り返しています。足元は当然ブーツでございます。足元の太さを気になさるミセスの方にも好評をいただいております。上着はクラシックで,いぶした感じのゴールドのメタルボタンを使っております。
ことしは男のおしゃれが目覚めたということを申し上げましたが,女性の専売特許であったおしゃれにオジサン方が加わっていただいたということで,非常に心強く感じているわけです。特に男女とも,いつまでも若く,美しくありたいとアンチエイジングに取り組む人が増加しています。GDPの60%を占めるのが個人消費でございますので,これが活性化してまいりますと本当に日本経済が復活してくるわけでございます。そういったことで,ぜひ皆さま方にもおしゃれと不老長寿に取り組んでいただくということをお願い申し上げます。