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2010年6月4日(金)第4,304回 例会

中国料理のマナー

Monte Cassim 氏

辻調理師専門学校
技術顧問 前 中国料理主任教授
松 本  秀 夫 

1949年生。辻調理師専門学校卒業後香港の「楽宮楼」に料理留学研修。その後,母校で中国料理研究に携わる。著書も多く, ’10年,春の叙勲で瑞宝単光章を受章。

 私は、香港を中心に中国料理を長く研究しておりますが、今日は中国に行かれた時に覚えていた方がいいだろうということも含めて「中国料理のマナー」についてお話します。まず、中国料理は楽しく食べることが基本です。その前に今日の海老チリ(昼に供されたカレー)ですが、辛味が少しストレートですので、白ネギのみじん切りを多めに入れますと、非常に香りが立って、味に深みが出ると思います。もう一つ,卵を溶いて少しだけ入れると,さらに旨味が加わり,マイルドになります。

適量は人数プラス1品

:レストランの予約は必要か
:予約なしでもOKです。予約が必要なのは常に満席か,人気があって並ぶのが大変という場合です。むしろ予約なしで入れる料理店の方が,おいしいかもしれません。服装は,正式なディナーではない限り,ほとんどノータイです。中国の人と接する場合は,カジュアルな感じで食事を楽しまれた方がいいでしょう。ただ、店にもよりますが、10分ほど遅刻しただけで予約を取り消さることがあります。これは覚えておいてください。


:料理を注文する時の注意点は
:すごく量(一皿分)が多いので,たくさん注文せず,「人数プラス1品」とすれば,およその目安になります。足りなければ麺とかチャーハンを追加します。注文の中に必ず野菜料理を入れてください。肉なら肉,魚なら魚と,そのものずばりの料理が多いので,野菜を加えた方が栄養のバランスからもベストです。白いご飯は「米飯」と書いて「ミィファン」と言います。発音が難しければ「米飯」と書けば,白いご飯を注文できます。


:お酒の飲み方で注意することは
:宴会では,基本的に3つグラスがあります。大きなグラスはビール。中国のビールはアルコール度数の低いものも多く,日本のビールがおいしいからといって,中国の方にどんどん勧めると,「濃い」と言います。  中くらいのグラスには紹興酒が入ります。「老酒」は長く醸造した酒ですが、一般的には3年以上熟成させた紹興酒をいいます。紹興酒に砂糖を入れますが、一説には昔、紹興酒の保管が悪いと酸度が高くなり、その酸度をやわらげるために砂糖を少し入れて飲んだといわれます。  小さいグラスには「白酒」を入れます。白酒はアルコール度数が高く、例えば「茅台酒」などは55度もあります。乾杯はこれでやります。宴会の間,ずっと乾杯です。お酒を楽しむと同時に,仲間意識があるかどうか,その人を試すということもあります。お酒の弱い方は気をつけてください。乾杯したら,必ず杯をひっくり返します。一滴も残っていません,ということです。白酒を飲むと頭はすっきりしていますが、脚にきます。中国には無礼講がないので,酒の席で酔っ払いますと「これは信用ならん男だ」と見られる恐れもあります。


:お碗やお皿を持つのはよくない
:中国では、お箸とちりれんげを用いて食べます。日本のようにお碗を持ったり、お皿を持って食べることはほとんどありませんので、必ずテーブルの上に置いて,箸の上げ下げで口に運びます。ちりれんげは,スープや液体の多いものを取る道具です。お碗をじかに口に持っていくという食べ方は,中国の人たちから見ると奇麗ではありません。例外はご飯です。中国のご飯は普通,いわゆるインディカ米でパラパラ。ご飯だけはお碗を持ってそのまま箸で,という食べ方です。


:大皿料理は,どのように取る
:自分のじか箸で取ってあげるのはマナーとして間違いではありません。横の人に取ってあげ,どうぞと。日本では取り箸がありますし,お箸を逆にして使いますが,そうすると逆に,こいつはよそよそしい奴だということになります。必ずじか箸で先に取ってあげ,そして自分の分を取る。そうしてコミュニケーションを図っていくというやり方です。


:料理を残すのはマナー違反か
:コースは最後に魚料理で終わります。魚が出ると宴会料理は終わりと考えてもいいでしょう。料理を全部食べ切るといのは、我々日本人のマナーですが、中国の人は料理を少し残します。特に最後の魚、あるいはその前の料理を残すと、これで,「これ以上は食べられない」という意思表示になります。残りものを包んで持ち帰るというのは失礼には当たりません。


:支払いを割り勘にするというのは
:中国の人には割り勘という概念がありませんので,これは気をつけてください。ほとんどのお店にはレジがなくテーブルで清算します。友達同士で今日は割り勘というのも最近は増えましたが,伝票を最後に持った人が払うというのが習慣です。面子があるので,俺が,俺がとなって,決めるのに30分ぐらい掛かることもあります。伝票があっちこっちに行って,最後は誰が持つのか,見ていると喧嘩しているようで面白い。

お勘定は「埋単」で!

 今は中国も日本食ブームです。日本食レストランのステータスがとても高い。日本食は安全で新鮮であること,最近は日本にも中国の方が大勢来て,日本食のおいしさを知っている方が増えたということもあります。生ものも,回転寿司ブームでほとんどの人が食べるようになった。刺身でも寿司でも,好きなのは赤い色です。サーモンやマグロをメインに出されたら,自分の好物を出してくれたと,点数が上がるはずです。最後に,勘定をする時は,手を挙げて「埋単(マイタン)」と言うと,清算してくれます。くれぐれも伝票は持たないよう注意してください。