1969年Maryville College of the Sacred Heart(米国)卒業。'77年東京大学大学院人文学研究科修士課程終了。小林聖心女子学院で28年間に亘り教鞭をとり,その間,'90年~'02年小林聖心女子学院小学校・中学校・高等学校校長。'02年4月現職及びカトリック女子教育研究所所長に就任,現在に至る。聖心会会員。
国際性や奉仕とは何であるか。なぜ必要なのか。私の短い小さな人生でございますが,私を育ててくれた教育現場,そして,私が教育に携わった現場の思いを,このようなタイトルをつけてお話をさせていただくことにいたしました。
私が現在,理事長を務めます学校法人聖心女子学院には,7つの学校があり,高等教育としては東京の聖心女子大学と,聖心女子専門学校があります。聖心女子大学は創立60周年になる小さなカトリックの女子大学でありますが,皇后陛下や緒方貞子さんの母校として知っていただいているかもしれません。
私は,宝塚市にある,阪急今津線の小林(おばやし)の駅から歩いて5分ほどの小高い丘の上にございます小林聖心女子学院で中高時代を過ごしました。1923年に創立の学校でございまして,私が在学いたしましたのが1955年ぐらいからです。
戦後のまだ復興の過程にありました日本の社会の中で,女子学院では,将来何らかの形で社会貢献ができる女性を育てたいということで,シスターたちは,とても厳しく,しかも愛をもって生徒一人ひとりを育ててくれておりました。今も学校の敷地の中にお墓がある珍しい学校でございまして,25のお墓がありますが,1つだけが日本人であとはみな外国のシスターたちのお墓でございます。私どもが在籍しておりました時代には,たくさんの外国人のシスターが学校にいました。
学校自体がとても国際的な雰囲気を持っておりまして,英語を習ったわけです。ごく自然に外国の方たちと触れ合いながら,国民性であるとか文化だとか,マナーを学んでいたような気がいたします。
また,シスターたちは大変興味がおありになりまして,何か私たちがうっかり言いますと,それは何だとどんどん追及してこられるわけで,しどろもどろの英語でその日本文化について説明をさせられた記憶がございますが,国際的であるということの中には自分の文化を知っている,自分の国について知っていることが必要なんだと子ども心に感じていたような気がします。
初代学院院長のドイツ人のマザー・マイヤーでしたが,彼女の“Big you, small I”という言葉がございました。私たちは英語では,「I」は大文字で,「you」は小文字で書きますが,心の中で「you」こそ大文字で書きなさい。「I」は,小文字でいいのです。“Big You, small i”ということです。
もちろんマザー・マイヤーはドイツ人として戦前日本に来られてから,日本女性の当時の立場,位置の低さに驚かれまして,日本女性が本当に自己確立をしなければいけないと,熱心にそのことを生徒たちに教育なさったわけですが,と同時に,一人の人間として他者を本当に思いやる心,大切にする心を重んじ,何かが必要だとわかったら実践していくようにということを説かれておりました。それが彼女の“Big You, small i”だったわけです。
彼女ご自身は,戦前,1930年代の経済不況の時期に,この関西の地にあって,一番生活が厳しい方たちがどこに住んでいるのかを探してくるようにと当時の保護者にお頼みになりまして,その方たちのために何ができるか考えなさいとおっしゃったそうです。
そして,経済的なことは保護者の方が何らかの形で世話をしながら,聖心会の会員が外に行って直接的に働けないので,そういう方たちのために直接に仕事ができる修道会を海外から呼んでこようとなさったということです。そこで,愛徳姉妹会のシスターたちを日本にお招きすることになって,大阪の今宮に聖心セツルメントを開設したそうです。
それから,1950年代の話ですが,当時の小林駅付近にはまだまだ生活の厳しい状況が続いている人たちがたくさんおりましたので,無料診療所,保育園,それの前身になるものを何とか同窓会で始めろということで,同窓生たちは尽力を尽くしました。
系列の不二聖心女子学院には静岡県・三島駅から車で行くことが多いのですが,いつのころからか「米山梅吉記念館」という標識・看板を途中で見るようになり,その名前を見るたびにどういう人物か知りたいと思っておりました。このロータリーのお話を伺って,少しロータリーについて勉強しなければと思って,パンフレットを読ませていただきましたら,「米山梅吉翁」の名前が出てまいりました。5月の中旬に不二聖心に訪問にまいりますときに,三島駅から,「米山梅吉記念館に行ってください」とお願いして,たっぷりと時間をかけて見学してまいりました。
あの時代にアメリカに渡り,すばらしい志を持ってお帰りになりました。そして,私が感激いたしましたのは,青山学院初等部をおつくりになって,ご自分で校長もなさったわけで,小さいころから教育を始めなければいけないということをなさったということにも感銘を受けました。その方の思いをこうして日本のロータリーの方たちが受け継いでもう100年近くに,日本のロータリーは1920年でございましたか,始まったようでございます。すばらしいロータリアンの方がいらっしゃるということは本当に心強く思いました。
生徒たちが,ロータリーからお金をいただいて,どこどこに留学に行きますとか,親善使節として派遣されてきましたとか,よく報告をしておりました。きょうはそのお礼も申し上げたいと思いました。そのような形で若者の教育をサポートしてくださっていることは,本当にありがたいと思っております。