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2007年4月13日(金)第4,157回 例会

J-REIT市場 5年間のあゆみ

西 山   晃 一氏

日本ビルファンドマネジメント(株)
代表取締役社長
西 山   晃 一

1951年兵庫県西宮市生まれ。'74年に東京大学法学部を卒業後、三井不動産(株)に入社。同社ビルディング本部ビルファンド事業室長などを経て、2000年から現職。

 まず、J-REIT(不動産投資信託)の歴史をさかのぼりながら、上場前のお話をさせていただきたいと思います。特に経済情勢で言いますと、厳しい時代が続いていたわけでございます。

バブル崩壊からの再生

 この話をどこから始めようかと思ったのですが、やはり私の経験も含めて1995年1月に阪神淡路大震災がありました。3月にはサリン事件、4月には青島幸男・東京都知事(当時)による世界都市博覧会の中止決定がございました。

 96年あたりから不良債権の表面化、オウム事件、薬害エイズ等がございました。97年の後半は不良債権処理というよりも北海道拓殖銀行の破綻とか、山一證券の破綻とか、まさに長期不況、金融不安と言われるような時代でございました。

 これはバブル崩壊以降ですが、地価は当然のことながら下がる一方で、いったん評価したものを再評価するとまた下がり、まさに泥沼になってきたわけでございます。

 そういった中で、不動産の価格を底止まらせるにはどうするか。そのためには、不動産の流通といったものをまず底支えして、きちんとした価格が出るような仕組みをつくらなきゃいけないというところから、J-REITの構想がまさに96年、97年ごろからできてきたわけでございます。

 当時の大蔵省、建設省がバックアップをして不動産の証券化というものの一類型として、東京証券取引所に上場されるという形をとるという仕組みができました。

免除される法人税課税

 J-REITの基本的な構造とは、真ん中に投資法人というのがありますが、投資法人というのは一つの箱でございまして、一見株式会社のようでございますが、役員しかいなくて、従業員がいない組織でございます。

 実質的に不動産を買ったり、運営したり、私どもの場合はオフィスビルを運用するファンドでございますので、オフィスビルを買ってきたり、そのオフィスビルを実際にテナントさんに貸したり、日々運営管理したり、そういう業務をやるのが、投資法人から業務委託を受けております私ども日本ビルファンドマネジメントという資産運用会社です。

 われわれはテナントさんから家賃をいただきます。まず、NBF(日本ビルファンド投資法人)という投資法人が資産であるオフィスビルを所有をしております。その所有の中には当然負債の部分と出資の部分がありますが、負債の利息は借入先にお支払いをし、出資の部分は分配金として投資主に分配する。普通の会社の株式に相当する投資口というものが、東京証券取引所で日々売買されています。

 日本ビルファンドの決算実績および業績ですが、第11期ですと、賃貸事業収入、これは私どもNBFのファンドが今55棟6,700億円ぐらいのオフィスビルを所有しております。その上がる賃料等の収益が258億円でございます。営業収益が258億、営業利益が116億になり、当期純利益が97億6,500万円ということになります。

 一般の事業会社ですと、この利益の中から法人税を払って、なおかつ会社として配当率を定めて株主に配当するわけです。つまり税引き後、自らの決めた配当政策によって配当するというシステムになっております。

 ところが、J-REITの場合、97億6,500万円を全部配当するのです。ですから、これを口数で割ったものが1口当たりの分配金ということになります。一定の要件を満たすことによって法人税課税を免れるということで、配当が非常に高くなります。

2%の利回りの評価

 2001年9月10日、私ども日本ビルファンドとJRE、これは三菱地所系のファンドですが、この2社が上場をいたしました。その翌日、9月11日があの米同時多発テロということでございます。

 62万5,000円で売り出しまして初値が63万円、ほぼいい線かなと思っていたのですが、翌日、あの飛行機がビルに飛び込む映像が全国に流れまして、もちろんREITだけではなくて、全部の株が下がったことは覚えておられると思います。  その後のJ-REIT市場全体の時価総額の推移ですが、2001年9月で2,400億円というのがまさに最初2社が上場したときでございまして、現在では6兆2,000億円ということになっております。今ビルファンドの時価総額が大体9,000億円で、われわれのところは、J-REIT全体の概ね15%の割合を持っていると考えていただければいいと思います。

 投資口価格と東証REIT指数でございますが、投資口価格というのは企業で言う株価、東証REIT指数というのはREIT全体の指数です。2001年9月初値63万円で、上場して半年のところでは50万円を割るような水準になりまして、市場の評価を待つしかないということでいろいろやっているうちに、ちょうど2005年に右肩上がりに上がってきまして、特に去年の秋ぐらいから大変上がりましたが、今株価が大体180万円前後をつけております。そういう意味では、上場時60万円から180万円ということになるわけです。

 最初の2001年、2002年のころには、5%で利回るという商品でございます。ところが、現在株の利回りは2%。ですから、今の株価で私どもの投資口を買って、予想の分配金を得れば、2%の利回りということになります。個人の投資家の皆さんにとって、2%の利回りというのがどういう評価を得られるのか、もちろん個人の投資家だけではなくて全般の投資家の中でどういう評価を得られるのか、これが今後のマーケットの行方かなと思っております。