1940年生まれ。'64年京都大学法学部卒業,同年(株)毎日放送入社。'89年東京支社テレビ営業第一部長。'91年テレビ営業局次長,テレビ編成局長を経て,'97年取締役ラジオ局長。'99年常務取締役テレビ本部長,'01年専務取締役テレビ本部長,'02年現職。'06年3月当クラブ入会。PH準フェロー・米山功労者。
演題の「オーサカキング」は3年前から,夏に大阪のランドマークである大阪城公園一帯で展開する,住民参加型の地域活性化イベントです。1年目が42万人,昨年が47万人。今年は55万人を予定しています。さて,「オーサカキング」をお話しする前に,まず,放送を取り巻く最近の状況と,地域における役割などをテーマにお話をしたいと思います。
テレビの地上波放送は,2011年7月24日には,アナログ放送が終了,完全にデジタル放送に移行します。デジタル放送は,2003年の12月1日に東京,大阪,名古屋でスタート,今年中には全国で始まります。現在のデジタル放送受信機の普及状況は,1,200万台です。日本にテレビ受信機は1億2,000万台。つまり,1人に1台の割合ですから,これには足りませんが,全世帯の約4分の1には普及しています。
われわれ送信側には大きな課題があります。生駒山には現在,NHKと在阪民放テレビのうち4局の計5局分の電波を送る鉄塔が建っています。在阪民放テレビ5局のうちの4局が近畿圏広域放送局,テレビ大阪は大阪の県域局です。生駒の親局を含めまして現在,鉄塔が5本あり,全エリアの83%をカバーしています。今年中に,もう4本を建設して,計9本になります。NHK及び民放4局の共同建設で,近畿870万世帯の90%に届くことになります。残りは10%ですが,あと100本ほど鉄塔を建てないと,100%になりません。山の多い地域のローカル局,地方局は,さらに大変だろうと思います。
そこで,「マスコミ集中排除の原則を緩和しよう」と言われています。放送局の資本を持つ割合が規制されたり,東京のキー局が1つのエリアで1局しか持てないとか,各エリアの多様性を保つために集中を排除する原則があります。これを少し緩め,ローカル局の経営負担を軽くする方法が語られております。また,国や地方公共団体からの公的支援についても話し合われている最中です。
こうした中,通信と放送の課題が表面化しています。昨年初めには,ライブドアとフジテレビ。同年秋には楽天とTBSの問題が起きました。いずれも通信側から放送側に向けた企業統合に関わる話でしたが,不調に終わった,あるいは不調に終わりつつあります。一言で言いますと,放送の持っている社会的な役割,放送文化論についてはまったく語られず,放送という企業体をビジネスツールとして考えたことに問題があり,それが日本の社会では受け入れられなかったのではないかと思います。
われわれ放送側は,通信との連携――融合ではなく連携と言っています――については,たくさんの試行や実績を積み重ねてきました。ですから,楽天とTBS間で,楽天側からいろいろな連携ができるだろうという提案がたくさんありましたが,既にあちこちで皆がやっていることでした。われわれ放送側は,通信側と連携をする枠組みを作ろうと,どんどん動いています。放送と通信が得手,不得手な部分を補い合うのが望ましいと考えております。
放送の社会的責任が問われるなか,何をなすべきなのか。放送は免許事業で,有限の電波を使用して成り立っています。そこから総合すれば,われわれは地域にどう貢献すればいいのか,となります。私ども毎日放送は企業理念として,スーパーリージョナルステーションを目指そうという表現を使っております。スーパーリージョナルは,「とびっきりの地域特化」とでもいいますか。「地域の優れたものを発掘,創造して,文化の複合体をコーディネートし,全国に,世界に発信していこう」という理念であります。
それに基づいた活動をさまざまな形でやっております。OBPにあります「シアターBRAVA!」がそのひとつです。劇団四季が移られた後,関西ならではの文化発信の場にしようとの思いで,「大阪MBS劇場」を「シアターBRAVA!」と名前を変え,存続を決めました。
イベントでは年末の風物詩「1万人の第九」を大阪城ホールでやっています。また,「音舞台」という表現をしていますが,9月初めに京都,奈良の神社の境内で,東洋と西洋の文化の出会い,芸術の出会いとしてイベントを展開しています。1回目は平成元年。金閣寺を舞台にイベントを行いました。また,「京都プロジェクト」として,京都の文化遺産や自然遺産も含めた発掘,紹介も行っています。神戸では「神戸コレクション」というユニークなファッションショーを行っており,今年は横浜,昨年は東京や名古屋,数年後には上海で展開することになると思います。
その中の1つに「オーサカキング」があります。タブロイド版の“新聞”を作りまして,「大阪城サマーフェスティバル2006――天下の台どころ・芸どころ・遊びどころ」をコンセプトにしています。期間内に大阪城界隈で行われているイベントをまとめて,いろいろ動こう,という枠組みもスタートしました。
各局も,いろいろなイベント展開を行うなか,何か連携プレーをしようとも話し合っています。連携をしながら枠組みを広げるのがメディアの役割。経済活動を刺激し,促進し,はやし立て,バックアップさせていただく,そういう役割がメディアの役割だろうと思っております。