大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2008年5月16日(金)第4,207回 例会

Every child has the right to good education

Barry Clarke 氏

セーブ・ザ・チルドレン世界連盟
直前理事長
Barry Clarke

1940年生まれ。’70年からセーブ・ザ・チルドレン(SC)の活動に参加。’98~03年SCUK(英国)理事長。’02年から2期6年間,SC世界連盟理事長。企業のマーケティング活動などにも精通している。

 きょうは教育についてお話をするわけですが,教育制度の質において世界に知れわたったこの日本という国でお話しすることを光栄に思います。

 教育は,紛争中であったとしても基本的な人権であり,教育を受けることを家族や子どもは望んでいます。教育を受けることによって,時代に対する意識を高め,生きるための重要な能力を学べます。乳児死亡率を下げることもでき,教育の効果は何世代にもわたって受け継がれていくのです。経済成長・平和・安定性を高めることもできます。

学校に行けない子は7,000万

 世界の指導者たちが教育を優先課題に2000年初め,合意をしました。この合意にある8つのミレニアム開発目標の中には,極端な貧困の中で生活している人の割合を半分にすること,エイズの蔓延防止などがうたわれ,15年までに達成しようというのです。

 目標のうち2つは,特に教育に焦点を当てています。普遍的な初等教育を15年までに達成すること,初等・中等教育での男女格差の解消を05年までに達成し,すべての教育レベルにおける男女格差を15年までに解消すること,としています。

 実際に,就学できない子どもの数は1999年に9,600万人だったのが,2005年には7,200万人に下がっています。また世界の初等教育の就学率も6.4%増えました。初等教育における女子のネットでの就学率も世界平均で1991年に88%だったのが,2005年には96%に改善。05年までの男女格差の解消は残念ながら達成できていませんが,118カ国では初等教育での男女格差解消が達成されています。

 初等教育で,5億7,000万人の子どもが就学しているという良いニュースに我々は喜ぶわけですが,同時に約7,000万人の子どもたちがまだ学校に行くことができないという現実があります。こういった子たちは自宅で家の仕事をしたり,薪を集めたり,街で物乞いをしたり,仕事を探したり。あるいは最も危険で不適切な労働に就くこともあるのです。

武力紛争の影響が深刻

 学校に行けない子どもたちの半分以上が,武力紛争の影響を受けた脆弱な国々の子たちです。武装民兵に雇われたり,人身売買や虐待の対象となったり。彼らの未来は紛争によって悪化し,貧困の循環の中に取り残されるのです。

 これまで長い間,セーブ・ザ・チルドレンはこういった子どもたちのため,緊急時のサービス回復,インフラ再整備,教師の訓練,備品供給などに努めてきました。教育システム強化へ紛争当事国の支援もしてきました。

 私たちの活動でわかったことは,教育が大事だということを理解している子どもたちがたくさんいるということです。

 サイファさんはコンゴにいます。姉妹が殺され,彼女もレイプされた。戦場で人も殺しました。1歳の息子がいますが,彼女自身まだ15歳の子ども。彼女は「食べ物も服も,学校へ行くお金も全然ない。だから,私は学校に行けないの。誰かお金を払ってくれれば学校に行けるのに」と言っています。年間たった2,700円でサイファさんのような子を学校に送ることができるのです。

 すべての子どものための教育は必要であるだけでなく,可能なことです。これを実現する最も効果的な方法は,学費の廃止です。

 私たちは国際社会の資金の拠出,そして,政府の決意によって教育に大きな変化がもたらされてきたことを知っています。政府が全児童の就学を保障する最大の責任を担っていますが,国際社会もまた,教育の実現に果たす役割があります。

 基礎教育に対する援助総額は2004年,2,820億円から5,320億円に上がりましたが,05年には3,860億円に下がっています。援助が十分でないことは明らかです。

「学校は人を変えます」

 国際的な教育資金援助の不足はネパールのヘナング君のような子の未来を暗くします。彼は13歳のときゲリラに誘拐されました。兵に銃を突きつけられ,ついてこなければ殺すと脅され,何度も逃げようとしたけれど毎回捕まり,司令官に殴られた。彼は,ついには司令官を殺しました。傷だらけの彼が安全な所に逃れるには,それ以外なかった。ヘナング君の教育は暴力で中断されたのです。

 教育は,武力紛争に直接従事してきた子どもに,より良い生き方の可能性を与えます。カルメ君は,コンゴのゴマに住んでいます。4年間,学校をやめ戦っていましたが,彼は自問自答し,今は教育こそが意味あるものだと思っています。ゴマ東部の都市に住む家族のもとにセーブ・ザ・チルドレンの支援を受けて戻りました。彼は今,中等学校3年生で,3,000円の学費を学期ごとに払っています。ガソリンを売って学費を稼ぎ,「将来はエンジニアになりたいんです」と言っています。

 子どもたちは自分の未来へ大望を抱いています。彼らは学びたいのです。

 南部スーダンで10歳になるメアリーさんと会いました。1年前,学校へ行き始めたばかり。戦争のため逃れた北部スーダンから家族で戻ってきてからのことです。彼女は言います。「今も学費を払うのはとても難しいですが,私は学校で勉強するのが好きです。学校での勉強で私たちは何にでもなれるし,どこへでも行けるのです。学校は人を変えます」

 皆さまにお願い申し上げたいのは,何百万人という社会から取り残された子どもの未来を書きかえるため,それぞれ何ができるかを考えていただきたいのです。子どもは待つことができません。私たちは今,行動しなければならないのです。

 (※当日は英語でのスピーチ。インターオーサカによる日本語同時通訳を記録・編集,掲載しました。)