1962年神戸大学経済学部卒業。住友商事(株)入社。’96年同社常務取締役,欧州住友商事(株)社長などを歴任後,’00年4月同社副社長。’00年6月からレンゴー(株)社長。
’07年より関西生産性本部会長。
なぜ環境問題についてお話しするかといいますと,私の会社(レンゴー)の事業が製紙・段ボール・印刷・紙器・フィルムの加工ということで,非常にエネルギーを消費する事業だからです。そもそも地球環境に一番問題なのはエネルギーを大量に消費することにあります。ということから,私は社長就任以来,この炭酸ガスをいかに軽減させることができるかという研究をずっと続けております。
環境対策は,はっきり言って3つなんです。空気をいかに汚さないか,水をいかに汚さないか,土に変なものを埋め込まない。この3つが基本です。
水に対してはいろんな規制があるわけですが,一番大きいのは,BOD,COD,SSをなくしていこうということです。BOD(生物化学的酸素要求量)というのは,下水に流すときに有機物を流さないようにチェックする。COD(化学的酸素要求量)は,無機性の化学物質を流したときに,これ以上の規制値になったらいけませんよということです。SSは,浮遊物で溶けないもの,いわゆる粘土質のものです。
私どもが,なぜ大気汚染,あるいは水質汚染をチェックしなければならないかといいますと,紙1tつくるのに水を最低10t以上使わなければならないからです。10t以上の水に苛性ソーダが入ったり,あるいは繊維物質が残ったり,SSが残ったりということで,BOD,COD,SSのチェックを非常に厳しくやっております。
それから,もう1つ,化学物質をかなり使うわけで,この化学物質も非常に厳しくチェックしております。
そういうことをやっていてもなおかつ問題になるのは「臭い」なんです。大きな問題としてはVOC(揮発性有機化合物)でして,特に印刷インクを使うときにはこのVOCが非常に問題になってくるということで,絶えずチェックをしています。
この「臭い」というのは各個人によって個人差がありますから,なかなか測りにくいわけです。閾値(いきち)と言うのがあります。人間が自分の限界以上に感じ過ぎる段階のことを言うわけですが,この閾値が各個人によって違うわけです。われわれは,関係官庁の許可をちゃんととって,その閾値内に収まっているわけですが,苦情を言ってこられている方は耐え切れんということなんです。人間が感じる臭いというのはなかなかコントロールできないところがあって,今われわれが一番困っているのはそういうことです。
もう1つは音,振動です。音についても,一応決められたホン内に抑えておるわけですが,近隣の方が,「ちょっと聞こえてくる」と言ってこられたりしています。
その中でも今一番問題なのは,地球温暖化に対する問題でして,やはり炭酸ガスの発生量をいかに少なくするかということです。一番炭酸ガスを発生させるのは,いわゆる化石燃料です。石炭,石油,あるいはLPG(液化石油ガス),LNG(液化天然ガス)という石油関連なんです。それ以外のエネルギーというのは,例えば太陽熱とか,水力とかウランとかいろいろあるわけですが,そういうふうに炭酸ガスを比較的発生させにくいエネルギーを使って,今後ともそういうエネルギー対策をしなければならないというのがそもそもの大目的であります。
エネルギーには,第1次エネルギーと,これを転換して使いやすくした第2次エネルギーがあります。日本で第1次エネルギー源として使われているのは,石炭20%,原油50%,天然ガス14%,水力3%,原子力1.2%,地熱その他で1%ということになっています。結局,必要な日本のエネルギー源の84%が化石燃料というのが現在の状態です。したがって,炭酸ガスがそれに見合うだけ発生するということになるわけです。
その発生したエネルギーがどういう用途になっているかというと,産業用途48%,民生28%,運輸24%に分かれているわけです。したがって,われわれ産業分野で48%のシェアになっているわけですから,これをいかに化石燃料からほかのエネルギー源に変えていくことができるかということを絶えず研究しているわけです。
日本で発生している炭酸ガスの総量というのは,私の推定値で年間13億5,000万tぐらいです。そのうち,関西ではどれぐらい発生させるかというと,1億7,000万tぐらいです。 関西の中でやはり京都・大阪・兵庫県の3府県が圧倒的に多くて,1億7,000万tのうち1億4,500万tぐらいが出ています。一番多いのは兵庫県です。兵庫県はなぜ多いかというと,関西電力があり,神戸製鋼があり,王子製紙があり,われわれレンゴーがありということで,エネルギーを大量に消費し,炭酸ガスを大量に発生させている工場が多いがゆえであります。兵庫県で7,000万tぐらい,次いで大阪府で6,000万tぐらい,京都府が1,500万tぐらいということになっております。
要は化石燃料をいかに少なくするかであります。要するに重油を減らして原子力に変えなければならない。これは関電さんに頑張ってもらわないかん。ガスを使った場合には,重油を直接使った場合の炭酸ガスの70%で済むということですので,大阪ガスさんにも頑張っていただかないかん。たまたまこの大阪RCには,関電さんも,大阪ガスさんもいるというところで,関西を地球環境保全先進地域にして,やらなければならないというのが私の結論であります。