1930年生まれ。’55年京都大学法学部卒業,警察庁入庁。’76年同庁交通部長。茨城・愛知県本部長を経て,’84年大阪府警本部長。’87年関西国際空港常務・専務取締役。
’93年ジャパンメンテナンス,’01年マイカルを経て’03年一富士債権回収代表取締役社長,’08年から同社会長。’02年に当クラブ再入会。副会長・理事など歴任。R情報委員長も2度目。
今月はロータリー理解推進月間で,ロータリークラブについてお話するのが本来ですが,既にその哲学や精神についてはご存じと思います。その話は少しにして,後は「世相雑感」ということでお話しします。
推進月間に因んで『ロータリーの友』1月号にRIの李東建会長のメッセージが載りました。超我の奉仕にかかわる「奉仕・親睦・多様性・高潔性・指導性」という5つの価値観が示されています。
奉仕・親睦・指導性については説明するまでもないでしょう。多様性については,既にロータリーは世界200国を超える加盟が実現しており,多様性を持って運営に当たる必要があるという趣旨だと理解しています。
高潔性は「Integrity」という英語からすると,「完全」とか「誠実」ということになります。李会長は高い倫理規準,あるいは人望ということに重きを置いて高潔性を挙げています。
ここから「世相雑感」に入ります。今日,お話ししたいのは,日本が抱えているたくさんの問題は,占領政策による日本の弱体化というのが(背景に)ある。その最たるものは教育の改悪で,これを改めない限り問題の根本的解決にはならないということです。
戦後,教育勅語が廃止され,さらに修身と歴史,地理の教育も廃止されました。日本の伝統や文化を中学生,小学生段階から教えるということがなくなったわけです。教育体制も改悪されました。633制で,義務教育の中学校は進路のいかんに関わらず,学力のいかんに関わらず,3年間同じ教育をする。これがいわゆる日教組の平等というもので,私は悪平等だと考えています。
日本が抱えるもう一つの大きな問題は,新憲法によって与えられた人権・自由・平等が,歯止めなき権利の主張,放縦と言ってもいいほどの自由,先生と生徒が平等であるというような間違った平等感の蔓延につながっていることです。
では(本来の)人権・自由・平等とは何か。抑圧,あるいは圧政から解放されるための戦いの中から勝ち取られたのが人権であり,自由であり,平等だが,本来これらの権利は何らかの義務を伴う。国家,あるいは社会のもとで生活している以上,当然守るべき義務がある。憲法第3章も「国民の権利及び義務」という見出しになっているが,義務のほうは忘れられて権利だけが走ってきました。
教育改悪によって,日本人として教えられるべきところが教えられなかった。非常にゆがんだ教育が制度的にも内容的にも実施されてきた。また,人権・自由・平等とは何かという精緻な議論がされることなく今日まで来た。この2つの弊害が根底にあり,これを背景に日教組が,まさに好き放題をやってきた。
これに対し,教育に関心を持った政治は全くと言っていいほど行われてこなかった。国家は領土と国民と主権の3つで成り立つというのが政治学上の定義です。企業において優秀な社員の育成が不可欠であるように,国力を向上させるためには国民に対する教育が非常に重要です。
明治以来,教育勅語のもとで,学校教育を通じて道徳教育が行われてきました。欧風化が進んだ当時の世情を明治天皇が非常に憂慮され,何らかの道徳上の指針を示す必要があるというところから審議会のようなものができて,教育勅語が明治23年に成立しました。
諸外国に比べ,宗教道徳が国民生活に定着していないわが国では,学校教育を通じて道徳を教えるしか道がなかった。敗戦と同時に教育勅語と修身教育がなくなり,極端に言えば無道徳国家になりました。
次に,代議制民主主義と三権分立主義の消化不良という問題があります。例えば“郵政選挙”の時,刺客候補を送るということが行われました。広島県では広島を全く知らないホリエモンの堀江さんが立候補した。片山さつきさんも静岡から立候補しました。地元住民の要望も何も知らない人が,ただ,郵政民営化賛成だというだけで出て,当選した人もかなりあります。代議制民主主義からみて,選挙自体もおかしいし,それを当選させる選挙民の政治意識も問題です。
三権分立は立法・行政・司法ですが,立法は国会,行政は内閣です。内閣を支えているのが霞ヶ関の中央官庁です。改革すべき点はたくさんあると思いますが,三権分立を維持する以上,やはり内閣がしっかりしなくてはならない。いかにして良い内閣にするか,良い霞ヶ関にするかという議論と並行して,改めるべきところを改める。この辺の根本的理解があるのかどうかと,懸念を持っています。
では,どうすればいいのか。今は大変な状況にはありますが,日本の経済と科学は基本的にしっかりしている。問題は,政治と行政と教育です。解決策は総理大臣が先頭に立って教育改革を国民に訴えること。月に2回ぐらいテレビに出て,日教組の主張はここが間違っている,国民を良くするためにはこういう教育をやらなきゃならないと,丹念に訴える必要がある。公立中学校と公立高校においては,進路別学級をすみやかに導入すべきです。中学を卒業して就職する子どもと,難しい高校へ進学する子どもに,同じ教育を3年間続けることによって悲劇が生じています。
それから,教育勅語に代わる最低限の道徳律を国の責任において確立し,小学校から徹底的に教える必要があるでしょう。歴史・地理・伝統文化の教育の復活は当然のことです。