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2008年8月1日(金)第4,218回 例会

未来を描き実現するエグゼクティブコーチング

足 立  興 治 氏

(株)野村総合研究所
ヘルスケアイノベーション事業二部長
足 立  興 治 

1987年千葉大学大学院社会科学研究科経済学専攻終了。同年(株)野村総合研究所入社。経営計画研究部,事業開発研究部,経営システムコンサルティング部や事業企画室などを経て,コンサルティング事業本部大阪オフィス代表。現在へルスケアイノベーション事業第二部 部長。

 本来自分の持っている能力をどう引き出すかというアプローチが最近注目されていますので,ご紹介します。

 申し上げたいことは4つあります。まず経営の方針やビジョンは,その会社の従業員や派遣社員には意外と伝わっていないということです。2番目に,そもそも自分の持っている能力を引き上げていかないと,なかなか伝わらないということです。3番目に,何を皆に伝えていくかという中身を少し考えてみます。最後にまとめを簡単に説明します。

伝達は分かりやすい言葉で

 人間には「イヌ型人材」と「ネコ型人材」がいます。「イヌ型」というのは,事業や組織に対してものすごい忠誠心がある。ところが,「ネコ型」は,「はい,はい」と聞いておいて,自分には自分の世界があるという,自分主義,自己実現に目が向いている。どっちも大事な人材です。こういういろんな価値観を持った様々な人たちに,どう経営ビジョンを伝えたらいいのかが結構ポイントになってきます。

 昔(イヌ型時代)は,正社員が対象で,経営の言葉でそれを記述し,それを崇高な聖域的な存在として伝えてきました。しかし,ネコ型の比率が増えてくるイヌ・ネコ混在時代,あるいはネコではないけれども正社員以外の方が入ってくるとなると,そういうやり方ではなかなか伝わらない。それは難しい言葉ではなく,わかりやすい言葉にする必要があるということ,あるいは理解しやすいようにかみ砕くことも大事ではないかということで,「ストーリー・テリング(物語による伝達)」の活用,エピソードみたいなものを組み合わせてやっていくという方法が今はフィットするのではと考えています。

 では,中身をどうするんだということですが,その前に,経営能力に少し触れます。経営能力を上げるための取り組みをやらなくてはいけないけれどもよくわからない。やりたいことをどう研ぎ澄ましたらいいんだろう。文章に一度は書いたけれど,そのままになっていたりする。それから,経営能力を高めるためのよい手段が確立していないということがあります。

 コンサルタントがケーススタディで説明するかもしれませんが,その事業をやっているのは経営者の方,皆様方ですよね。コンサルタントよりも皆さんのほうがわかっているわけです。でも,意外と,ウーンと悩んでいるときに,ちょっとしたことでハッと気がつくことというのはないでしょうか。

 ちょっとしたきっかけで,なるほどそうだったのかということを感じることというのが,いろんなところで経験があったかと思うのです。これを別の言い方をすれば,実は答えは自分の中にあって,納得できるものというのはなかなか言葉になっていない,形になってない。これをどうやって引っ張り出そうか,これがコーチングの最初のステップです。

自分のやりたいことを明確に

 一番大事なのは「したいこと(意欲の源泉)」なんです。何がやりたいのか。価値観とか人生の夢とか志とかありますが,自分の会社を,自分の組織をこっちのほうに持っていきたいということをどう伝えるか。これが,実は従業員の方々はわかっているようでわかってない。これが伝わらないからバラバラになっているんじゃないかと考えています。この「したいこと」というのをうまく引っ張り出し,それを伝えていくということにコーチングが効力を発揮しているととらえております。

 エグゼクティブコーチング活用の例を出しますと,まず,経営者がおられて,こちらにエグゼクティブコーチがいます。コーチは経営のプロでも何でもなくて,とにかく経営者に質問をしていきます。その質問に対して経営者は,どうかな,こうかなといろいろと考えて,「ああ,そうか」と気づきがあったときに,「じゃ,それやってみますよ」ということで実際にやってみる。

 私がここで申し上げているのは,経営者の方と対話することで,経営者の皆さんの中にある「やりたいこと,考えていること」,そういうものを引き出すという位置づけです。皆さんが受ける側に回って,コーチがいろいろ質問をして,皆さんが答えたことに対してまた質問が返ってきて,そのキャッチボールをする中で,どんどん自分の思いというのが研ぎ澄まされていくというようなことです。

伝えるべき中身を本音で語る

 多くの経営者は,「自分が一生懸命言っても,どうも現場には3%しか伝わってない」というようなことを言われます。そのときに,「建前でしゃべってませんか」というようなことを我々は質問するわけです。本音で言いたいことをかみ砕くと,モチベーションが上がってきて組織の一体感ができるんじゃないかと考えているところです。建前ではなくて本音で語られると,人間というのはそれを受けとめようとして,一生懸命それに対してどう応えていこうかとなるんです。こういった本音をしっかりと出して,それを皆にぶつけていくというのは,大事だと考えております。

 今日のまとめになりますが,イヌ型,ネコ型,いろいろな方がいるので,まず伝え方ということに気をつけます。そして,伝えるべき中身は本音で語れて,皆がわかりやすく,皆がそうだねとやる気になれるようにやってみる。そのためにエグゼクティブコーチングは非常に便利なツールということでご理解いただければと思います。深く考えて実行に移していくことが大事で,思いを実行に移してこそいい会社になるのではないかと思います。自分がやりたいことをうまく引き出すということを,どこかのタイミングでお考えになってみてもいいのではないかと思います。