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2014年1月10日(金)第4,469回 例会

新春を寿ぐ“能と狂言”

山 本  章 弘 君(文化)

解説
会員・能楽師
山 本  章 弘  (文化)

1960年生まれ。幼少より父,故山本眞義に師事し’83年,故25世宗家観世左近に入門。’88年独立。現在26世宗家観世清和に師事。3歳にて初舞台。主な披曲は「石橋」「猩々乱」「道成寺」「望月」「翁」「安宅」「砧」「求塚」など。アメリカ,欧州,オーストラリア等海外公演多数。公益社団法人能楽協会本部理事および大阪支部常議員。重要無形文化財保持者総合指定。関西大学文化会能楽部講師。子ども達への能楽の普及にも努める。「とくい能」「上方伝統芸能ナイト」などの新事業を立ち上げ,あらゆる世代に向け新たな能の魅力を伝えるべく,積極的に普及活動を行っている。大阪文化祭奨励賞,なにわ大賞大阪21世紀協会賞,博報賞日本文化理解教育部門,ティファニー財団賞などを受賞。 ’09年12月当クラブ入会。

 能とは,伝統芸能である歌舞劇の1つです。源流は,大陸からもたらされた曲技やものまねを中心にした散楽で,平安時代には猿楽と言われました。室町時代に観阿弥・世阿弥の天才親子が演劇的な現在の能を完成させます。演技はシテと呼ばれる主役中心主義で,人間や幽霊,神,草花の精などを演じます。音楽的比重が高く,数名のコーラスによる地謡(じうたい)がドラマの情景描写やせりふを謡います。2001年5月,狂言と共にユネスコの「人類の口承および無形遺産の傑作」と宣言されました。

半能「高砂(たかさご)」

 醍醐天皇の時代,九州阿蘇神社の神主友成 (ともなり)は,都見物の途中,播磨国(兵庫 県)の名所高砂の浦に立ち寄ります。そこに,松の木陰を掃き清める一組の老夫婦があらわ れました。やがて老夫婦は,友成に,自分た ちは高砂と住吉の「相生の松」の化身であると 告げると,住吉での再会を約して小船に乗り 沖へと姿を消して行きました。
 残された友成の一行は,老夫婦の後を追っ て,高砂の浦から住吉へ向かいます。住吉の 岸に着くと,男体の住吉明神が姿を現しまし た。月下の住吉明神は,神々しく颯爽と舞い, 悪魔を払いのけ,君民の長寿を寿ぎ,平安な 世を祝福するのでした。
 高砂は,室町以来現在に至るまで,能の代 表的な祝言曲として,広く親しまれてきまし た。寿ぎ,祝いといっためでたさに貫かれ, どこまでも明るく,崇高で清らかな雰囲気に 満ちた,気品のある,名曲中の名曲です。素 直に見て,聴いて,感じて,楽しめる能です。
今回は半能形式(後半部分のみを演じます) で,後半の住吉明神が現れる所から始まります。

狂言「盆山(ぼんさん)」

狂言とは,いわゆる日本の喜劇のことです。 喜劇だけで1 ジャンルを形成している演劇は 世界でも珍しく,滑稽なものまね芸が洗練さ れ,室町時代に今の芸態に定着しました。口 語体で権力や世相を風刺した中世の庶民芸能 です。能と狂言は一緒に演じられ,合わせて 「能楽」と呼んでいます。
 ある男が盆山(お盆の上に山や小川など 色々な景色を造り楽しむもの)が欲しくてた まらないので,盆山をたくさん持っている人 の所へ盗みに入ります。ところが,持ち主が 物音に気付き太刀を持って見回りに。 男は とっさに盆山の陰に隠れますが隠れられるは ずもなく,持ち主に正体がばれてしまいます。 ところが男は盆山の陰に隠れ続けるので,持 ち主はちょっとからかってやろうと考えます。
【出 演】
観世流・半能「高 砂」
 シテ: 住吉明神  山本 章弘
      (重要無形文化財総合指定保持者)
  笛: 斉藤  敦(森田流笛方)
 小鼓: 古田 知英(幸流小鼓方)
 大鼓: 守家 由訓(観世流大鼓方)
     (重要無形文化財総合指定保持者)
 太鼓: 中田 弘美(金春流太鼓方)
     (重要無形文化財総合指定保持者)
 地謡: 井戸 良祐(観世流シテ方)
     林本  大(観世流シテ方)

和泉流・狂言「盆 山」
シテ:盗人    小笠原 匡
(和泉流狂言方
 重要無形文化財総合指定保持者)
アド:盆山の主人 泉  愼也
(和泉流狂言方)