1937年神奈川県生まれ。早稲田大学政経学部卒業。’67年衆議院議員初当選(以後14期連続当選)新自由クラブ代表,科学技術長官,内閣官房長官,自民党総裁,副総理外務大臣,第71代,72代衆議院議長。’09年7月議員を引退。
新しい内閣ができて,新しい政治がスタートしました。私は,民主党幹事長に決まった岡田さんには大きな期待と若干の不安を持って見ています。
これからは党内融和も幹事長としては非常に重要な仕事ですが,もっと重要な仕事は,野党との間に政策的な合意をどうやって求めるかということです。これに真剣に取り組まなければならないと思います。
民主党の中で菅体制ができたから,菅さんの言ってきたことをどんどんやろうと言ったって,参議院の状況は違いますから,野党ときちっと合意ができなければ法案としては成り立たないわけです。
そこは自民党,とはあえて言いませんが,野党と話ができる,野党が理解できる,合意のできる政策案をどうやってつくるかということが非常にこれから重要で,それをやらなければ私は政策は進んでいかないと思います。野党と話がきちっとできるようにぜひ努力をしてほしいものです。
民主党の2週間という代表選の時間は,今考えてみてもずいぶん危なっかしい2週間だったんじゃないでしょうか。この間に,日米関係にもいろいろ問題は出てきました。日中関係もきわめて深刻な状況だと思います。また,経済的にも,景気政策,あるいは為替の問題。本当に真剣にやってもらわなければならんと思います。
日本とアメリカの関係は近年になくざらついて,難しい関係になっていると思います。アメリカは,中間選挙を控えています。しかも,その中間選挙の予想は,どうも民主党は不利だ,共和党優勢,と言われています。民主党は伝統的に経済問題に力を入れてしぼってきます。アメリカの国内有権者に対するパフォーマンスからいっても,そこはやはりかなり厳しい状況がこれから1~2カ月続き,それをどうやって日本の外交が受けとめ切れるか,どういうふうに処理をするか,日本外交にとって非常に難しいところだと思います。
かつて自民党が政権を担い,外交を担っていたころは,いろいろなご批判もありましたが,やはりそこには非常に蓄積された人間関係とか人材があったんですね。日中といえば,この人とこの人は,先方のこういう人との間でざっくばらんな話ができると。あなたはこういうことを言っているけれども真意は何だ,どうすれば,あなたのほうは理解ができるのかというような話です。飛んでいって,某夜密かに話をして何か解決策を引き出すというような人材とか人脈とか,あるいはそういうやり取りの蓄積があったと思いますけれども,民主党に果たしてそういう人材の蓄積があるか,あるいはそういう経験の積み重ねがあるかというと,多少不安なしとしないと言わざるを得ないと思うんです。
しかし,そこをぜひしっかりやってもらわなければいかん。国民の期待を集めて政権を担っているわけですから,そこはとにかくしっかりやっていただかなきゃならんと思います。
それじゃ民主党だけしっかりやれと言えばそれでいいかというと,そうではなくて,やっぱりその民主党がしっかりやるかやらないかというのは,野党である,言ってみれば自民党,公明党といったところがもっとしっかりしなきゃいかんというふうに思います。
私は,中国に対しては,今回のようなことがあるけれども,せっかく始めた日中議員交流を今年はとりあえずやめるみたいなことを言わないでほしいと思うんです。
これは私ごとですが,北京に行って人民代表大会のトップと話をして,行政同士のやり取りは行政同士のこととして,議会同士のやり取りを別途やろうじゃないか,議会間交流も大事だよと言って,先方もそりゃそうだと-。もう何年か,先方から議員団が来る,翌年は日本から議員団が行く,ずっとやり取りをしてきたのです。が今年はやめるとポンと中国側が言ってきているんです。お互いにどんな理屈があるのか,お互いに今どんな心境でいるかということを話し合うためにも,議員交流なんかはやってほしいというふうに私は思っているわけです。もっともっとわれわれも世界に目を向けて,国際的なことを考えなきゃいかん。
世界の大学で一番いいのはハーバードだ,これは自他ともに認めるようですが,ハーバードに留学している中国,韓国からの留学生,正式の留学生というのは今3桁いるそうですね,数百人。
一方,日本から来ているのは今1桁しかいないんだそうです。
この1桁という数字が何年か後に必ず効いてくる。こんなことじゃだめです。もっと教育を大事にする必要があります。
もちろん家庭教育とか,社会教育も大事にする必要があるけれども,それと同時に,やはりトップの人たちの教育の環境を整えてやる。意欲を喚起して,国際的な知識といいますか,教育を受ける,そういう場面をぜひつくらなきゃいかんと思います。
そういうことを考えるにつけて,日本では最も国際的なセンスをお持ちの方々がロータリークラブには集まっておられる。どうぞひとつ,ロータリアンの皆さん,国際的な認識といいますか,気持ちといいますか,経験といいますか,そういうものをぜひ今の若い人たちにも教えて下さい。
私は,パソコン持ったままでいいから,もっと街へ出ろ,国際的な街へ出ろと言いたいと思っております。