1989年12月9日生まれ。韓国籍。中国医科大学で臨床医学を学んでいたが,建築を学びたいという希望が大きく,2010年10月から大阪日本学生支援機構大阪日本語センターに入学。目下,日本語を学ぶ。日本語歴3カ月なれど,優秀な成績で,今後,英語,数学を学び,大学に進学し,建築を学ぶ予定。2011年4月~12年3月2660地区米山奨励奨学生として,当クラブが世話クラブとなり,カウンセラーを井上晶博米山奨学委員長にお願いしている。
皆さん,こんにちは。今年度の米山奨学生の金雪美(キム セツミ)です。1989年,韓国ソウル生まれの21歳です。昨年の10月来日して,「大阪日本語教育センター」で日本語を勉強して,ちょうど1年になります。私は中国でも暮らしたことがあって,中国語もできます。日本語学校や寮には中国から来た留学生が多く,ついつい中国語で会話することが多く,なかなか日本語が上達できません。できるだけ日本の人と接して,日本語が早く上達できるように心がけています。
初めて日本に来たときには,韓国で行儀がいいことが日本では行儀が悪いとされたり,またその逆もありました。例えば,日本人はご飯を食べるとき茶わんを持って食べますが,これは韓国では失礼だと思われます。また,韓国の女の人たちは,チマチョゴリを着て立てひざをして座りますが,これも日本ではちょっとひどいなと思われそうです。こういう文化の違いで戸惑いましたが,今ではすっかり慣れました。
そして,日本人が電車で携帯電話を使わないとか,時間や約束を守ることとか,いつも人に迷惑をかけないことに大変気を使っていることに感心しました。
今回の大震災でも被災者が列をつくって順番を待ったり,原発事故の現場で危険を覚悟して命をかけて人々のために頑張っている人がいたり,節電のために全国の人々が協力しています。将来,母国に帰って,この日本人のすばらしさを伝えたいと思っています。
私は,今年の4月より米山奨学生に推薦され,当クラブに受け入れていただき,大変お世話になっております。先生からは,大阪RCは大阪で一番大きいロータリークラブでいろいろ大変だと言われましたが,私は毎月の例会で自分のお父さんやおじいちゃんのような人たちに優しく声をかけていただいたり,いろいろと教えていただいたり,大変勉強になっております。今では,毎月出席することを楽しみにしております。
9月の米山奨学会のレポート提出で,カウンセラーの井上さんから,「内容も字のきれいさも僕以上だ」と褒めていただきましたが,私の日本語能力はまだまだ不足しており,これからも一生懸命勉強しなければならないことはよくわかっております。現在,日本語学校では,日本語だけではなく,英語や数学,物理,化学などの基礎科目も勉強しており,来年4月に卒業し,大学に進学する予定です。
幼い頃からの夢は,建築デザイナーか弁護士になることでした。ところが,私の父は大変厳しい人で,どうしても私を医師にしたく,また家族全員もそう望んでいました。家族の希望どおり,母の生まれ故郷である中国医科大学の試験を受けて合格し,2年間臨床医学を専攻していました。ところが,いつの頃からか毎日がとても充実しているとは思えなくなり,そのうち本当に医学の道が私に合っているかどうかと悩むようになりました。
父に相談しますと,「この2年間を無駄にするのか」と厳しく怒られました。多くの友人たちも,「2年間のキャリアを無駄にするのは余りにももったいない」と反対しました。しかし,人の一生は短く,今我慢して医学の勉強を続ければ,結局は5年間を無駄にすることになると考え,家族の反対を押し切り,私は日本で建築家になる夢を実現しようと決意しました。 日本には世界的に有名な大学がたくさんあります。この日本で,私の夢の実現のために一から日本語を学び,一生懸命勉強して有名大学で建築を学び,卒業後いろいろな国へ行って建築の研究をしたいと考えています。
1995年,阪神大震災では約6,400人が犠牲になりました。うち8割の人が建物の倒壊による犠牲者でした。2008年,中国四川大震災では約7万人が犠牲になりましたが,ほとんどが家屋の倒壊によるものでした。2004年のスマトラ沖地震では約23万人,今回の東日本大震災では,死者・行方不明者を合わせて約2万人の犠牲者が出ましたが,多くは津波による犠牲者でした。これからも世界各地で地震が起こり,建物の倒壊による犠牲者が絶えないと思います。
世界で最も地震の多い日本の建築は耐震性が高く,もし同じ規模の地震がほかの国で起こったら,犠牲者の数は想像できないほど多くなると思います。
建築は,精神的な美しさを持った芸術であると同時に,安全性が最も大事だと思います。日本の大学で,「地震工学」,「振動工学」,「弾性力学」などの基礎学問から,「構造制御」,「制震構造」,「免震構造」など幅広く勉強し,建築に関する基礎と専門分野の先端的な知識を徹底的に身につけたいと思っております。
災害が起こったときの最大の犠牲者は,いつも貧しい人々です。将来は,地震が多く,貧しい国の人たちのために,安くて,安全な建築構造を開発し,貧しい人もお金持ちの人も,平等に安心して暮らせるような安全な家をつくるのが私の目標です。
私の家族が希望するお医者さんになることとは異なる方法で,広く世界の人々の役に立てることが私の夢です。現在,私にとってその夢の実現は大変長くて厳しい道のりですが,この大好きな日本で,必死に頑張ってチャレンジしてまいります。皆さん,どうかよろしく応援してください。ご静聴ありがとうございました。 (他に米山奨学会作成のDVD上映)