1949年兵庫県生まれ。’73年早稲田大学政治経済学部卒業,同年,阪急電鉄(株)に入社。’97年同社流通本部流通統括室長,’98年鉄道事業本部鉄道計画室長などを経て,’00年取締役,’02年常務取締役,’03年代表取締役社長。’05年阪急ホールディングス(株)代表取締役社長,’06年阪急阪神ホールディングス(株)代表取締役社長現在に至る。その他関連会社の多くの取締役などを務める。
小林一三が私鉄のビジネスモデルをつくったと言われますが,実は1910年に箕面有馬電気軌道として梅田~宝塚を結んだ,そのはるか昔,1885年には南海電気鉄道が大阪と堺を結ぶ路線を敷いていました。一緒になりました阪神もすでに開業していました。
輸送需要がある路線は押さえられていましたので,新たに輸送需要をつくる必要に迫られたわけです。
新しくお客さんを呼ぶことができないかと,沿線に住宅をつくり,池田の室町が第1号ですが,ここで2つ新しい取り組みをしました。
1つは住宅ローン。当時はありませんでした。それと,鉄道会社は電気を自らつくっていたので,電車を走らせるだけでなく,町の住宅用電気もつくったわけです。――その後,国策として,電気をつくる鉄道会社や大阪市の電気局を集約して関西配電ができ、今の関西電力となっています。
宝塚に輸送需要をつくろうと,郊外に住宅をつくり,朝の通勤のお客さんだけでなく,昼に奥様に買い物に来ていただきたいということで,梅田にターミナルデパートをつくりました。
逆に,沿線外の人に宝塚へ行ってもらう観光需要をつくりたいということで,歌劇ではなく,室内の温水プールをつくりましたが,不評でした。そのころ,三越百貨店さんの少年音楽隊が好評でした。三越さんが少年なら,阪急は少女で行こうと少女歌劇団をつくった。
プールに失敗し,その跡地利用を考えたとき,三越さんがいいヒントになって宝塚歌劇が生まれたというのが経過です。
宝塚音楽学校,今年は99期生です。一昨日が100周年の1000日前でイベントがあったのですが,来年の春には100期生が入ります。音楽学校は2年です。予科があって,本科があって,初舞台を踏みます。したがいまして,100期生が入って2年後,2014年春に歌劇団が100周年を迎えます。
毎年40人入っていただきますが,大体20倍以上,多いときは1,000人を超える方が受けます。コネとか情実とか一切通用しません。
話題を変えますと,「阪急電車」という映画が4月23日にスタートし,今までに約87万人,興行収入が10億7千万円を超えました。
東宝も小林一三が始めた事業で,グループ企業です。東宝の長い映画の歴史で,非常にローカル色の強い映画,オムニバス風の作品はヒットしないという2つのジンクスがあるのですが,その2つを打ち破りました。
ネットを使って宣伝したところ,「阪急沿線に住んだことを誇りに思う」という書き込みがありました。これほどありがたい話はなく,社員に紹介し,期待を裏切ったらあかんという話をしています。
音楽学校の様子をDVDで見ていただきますが,本科生による予科生への教育は,体育会系をさらに厳しくしたようなものです。寄宿舎ですから,24時間態勢で先輩から教育を受けます。
4月に入学すると自衛隊の伊丹の駐屯地へ行ってもらいます。隊列の組み方,行進,敬礼とかを自衛隊から教えていただきます。その辺の空気をDVDにまとめましたので,ご覧いただきたいと思います。
-(DVDを約10分間上映)-
同期生が本当に仲がいいのは,先輩の本科生の予科生に対する指導が厳しいからです。1年間厳しい指導を受けるので,予科生は団結するのです。2年目になると,今度は皆で力を合わせて後輩を育てていく,本当にいい伝統です。重要な事業としてやっていきたい。
阪急ブレーブスと宝塚歌劇団が双子の赤字と言われた時期があり,1980年代ですが,両方とも約10億赤字だったと思います。ブレーブスはオリックスさんにお買い上げいただき,宝塚は改革し,利益計上できるまでになりました。
東京は2,000席の新劇場,5組制を敷いて以来,毎年100%です。東京という大きなマーケットで2,000席の劇場ですので,非常に高稼働をしております。
宝塚は非常にスターがいいとか,作品がいいとかになるとその稼動は90%ぐらい,平均的には80%ぐらいですが,2,500席です。
東京の100と宝塚の80というのは,ともに100万人来ていただいているわけです。
宝塚ファミリーランドのすぐ横にある関西学院の小学校の学費が年間120万円。小学生で,かなり数を集めて,それぐらいないと成り立たない。音楽学校は寄宿舎をつくっていますが,全国から入られますので,授業料は月5万円にさせていただいています。
足らずは阪急電鉄が大体年間9,000万円を補助し,1人100万円の補助で2年かけて舞台人として一人前になっていただく。小学生のころからバレエを習わせたり,声楽をしたりという人だけの集団になると問題があるということで,舞台に対する情熱がなくてはなりませんが,後は本人の将来性,やる気とか,もちろん一定の容姿がなければダメですし,きちっとした声が出なければダメですが,プロ的な要素は2年かけて教えます。必ずしも子どものころからトレーニングを積んできた子だけじゃなく,門戸を広げ,比較的リーズナブルな授業料で来ていただこうとしています。
これからもこの伝統をきちっと守っていく使命があると思っておりますので,どうか温かく見守っていただければありがたいです。