1961年生まれ。’85年朝日ビルディング入社。’96~’03年旧フェスティバルホール営業担当。スケジュール管理やブッキング・企画業務に携わる。’07年から現職。
フェスティバルホールは先日,4月10日に開幕いたしました。イタリア・ベネチュアからの「フェニーチェ歌劇場」の特別コンサートで幕を開けました。卓話の副題を「伝統の継承と進化」とさせていただいておりますが,以前のホールは1958年から2008年の12月末まで同じ中之島の地で約51年間コンサートホールとして活動してまいりました。旧ホールは多彩なジャンルをやってまいりました。ご来場者の数は延べで4千万人を数えます。
もともとフェスティバルホールというのは,イギリスのエジンバラやオーストリアのザルツブルクでやっているような国際的な音楽祭をやろうということで,この大阪の地に誕生いたしました。いわゆる「大阪国際フェスティバル」で第1回は「大阪国際芸術祭」という名前で幕を開けました。第2回から「大阪国際フェスティバル」として閉館の年まで,約50回を数えました。ですから「フェニーチェ歌劇場」は「大阪国際フェスティバル」の第51回の再開公演ということでも,幕を開けました。
旧ホールが皆様にご賞賛いただいた「天井から音が降ってくる」と言われる音響の特性は,新ホールにも活かそうということで,こちらが「伝統の継承」です。間口30メートルの大きな舞台も特徴です。客席からステージを見たときにドンと大きな間口30メートルのステージであるというのはフェスティバルホールの一つの顔でしたから,これも継承しました。赤いカーペットに赤い椅子,ホールのイメージカラーもございましたので,そういったものも継承しております。天井の形状でありますとか,意匠も新しいホールは引き継いでおります。
「進化」というところでは,演出が大規模になってきているのに対応して舞台の面積を倍に増やしました。間口は30メートルで一緒ですが,袖と奥を広げてステージの面積を倍にしました。これによってブロードウェイなどの大型ミュージカルや,オペラの引っ越し公演にも対応できるようになりました。皆様が劇場にいらしたらホスピタリティーも大事ですので,椅子の幅も一回り大きくしました。それから,幕間にトイレに行かれますと,特に女性の方が長くトイレに並んで,次の開幕に間に合うかどうかといったことでハラハラされるといったこともございしたので,女性のトイレの個室は3倍に増やしました。私がしゃべるだけではなかなか皆さんイメージがわきにくいかなと思いまして,当方でつくっております紹介用のDVDを持参いたしました。それを見ていただきまして,その後もう一度お話をさせていただきたいと思います。(以下,DVD=略)
このような次第でホールができたわけですが,当然ホールは建物ができただけではだめで,これからいかにここで何をやっていくかということが非常に大事になってくるかと思います。フェニーチェ歌劇場の後に,ヴェルディの「オテロ」,同じく特別コンサートの「椿姫」でありますとか,リゴレットのハイライトコンサートがありました後に,ロリン・マゼールさん指揮のミュンヘン・フィルが来られました。ロリン・マゼールさんは,旧ホールと合わせて今回のフェスティバルホールでの公演が17回目となります。新しいホールの感想をお聞きしましたところ,非常にクリアでいい音が届いているというご評価をいただきました。
皆様,旧ホールのほうも経験なされているアーティストですので,私たちは「伝統の継承と進化」と思ってつくってまいりましたが,やはりそれを実際に演じていただくアーティストの方がどう感じていただけるかということが非常に気になっておりまして,そういう意味で言うと,きのうでクラシック,オペラ,バレエ,狂言,ポップスと各ジャンルが一巡いたしました。クラシックはいいけどポップスはねとか,ポップスはいいけどクラシックの音を聞くのにはねとかいうことを非常に心配しておったのですが,皆様の大変よい評価をいただきました。特にさだまさしさんは「神様がつくったホール」とかいったようなことでいろいろ評価していただいておりましたので,私の前の支配人が建て替えに当たっては真っ先にご挨拶に伺いました。新ホールにどういったことを望まれますかといったようなことをお聞きしましたら「同じ図面で同じ材料でつくっても,同じ音にはなりませんよ。新しくつくるならいいホールをつくってください。せめて,惚れた女の娘でいてほしい」というふうにおっしゃったそうです。この話を私たちは「旧ホールの面影を残したホールにしてくださいね」ということだと理解しています。
これからも多種多様,多彩な公演をお届けしていこうと思っております。この後8月にはブロードウェイからの初のブロードウェイミュージカルで「ドリームガールズ」,9月には,映画でも大ヒットいたしました「レ・ミゼラブル」の舞台版が約1ヵ月間行われます。9月末にはミラノスカラ座もやってまいりますし,ティーレマン指揮のウィーン・フィルと,ラトル指揮のベルリン・フィルの世界2トップのオーケストラが,同じ11月に演奏していただくことになっております。これらはすべてオープニングシリーズという冠をつけてやって行く予定でおります。今後ともいいものをお届けしたいと思っております。
芸術とかエンターテインメントは「心の栄養」になると思いますので,ぜひ皆様もフェスティバルホールのほうに足を運んでいただきたいと思っております。