大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2012年7月6日(金)第4,400回 例会

新年度を迎えて

松 澤  佑 次 君(内科医)

会 長 松 澤  佑 次  (内科医)

1941年生まれ。’66年大阪大学医学部卒業,’67年同医学部第二内科学教室入局。
’77年米国カリフォルニア大学サンディエゴ校留学。’88年大阪大学講師,’91年教授,’00~’02年大阪大学医学部付属病院長,’03年大阪大学名誉教授,住友病院院長(現職)。国際動脈硬化学会会長エレクト,同アジア太平洋地区連合会長,総合科学技術会議専門委員,日本学術会議連携会員などの要職を務め,著書も多数。
当クラブ入会:’93年11月。健康を守る会委員長,ロータリー財団委員長・理事,職業奉仕委員長・理事,’08年S.A.A.等を歴任。

 新年度を迎えまして,会長を拝命した私として,一言自己紹介とともに抱負のようなものをお話しさせていただきたいと思います。私は,大阪大学第二内科の教授に就任して間もない1993年,前任教授でいらっしゃいます垂井清―郎先生と,当時医学部長をしておられました松本圭史先生(残念ながら最近退会されました)のお2人に推薦していただきましてこのクラブに入会させていただきました。早いものでもう20年になります。

 2003年に大学を退官しホテルのお隣の住友病院に移ってきたときに,ちょうど岸本忠三先生が会長に決まっておられまして,先生から,「君はロータリー例会場の近くの病院に来たのだから,何か役をやれ」と言われて仰せつかったのがロータリー財団委員長でございました。その2年後には,江崎会長のもとに職業奉仕委員長を拝命いたしました。このような役を経験する中で少しはロータリアンとしての心構えができたとは思っていましたが,2010年,当時の伊藤会長と文箭元会長から,「相談がある」と電話がかかってきまして,住友病院の院長室にお見えになったとき,まさか会長就任の要請とは夢にも思いませんでした。今年度は90周年を迎える記念の年でございまして,責任の重さを感じています。

生活習慣病を研究

 私自身は和歌山県田辺という田舎の出身でありまして,高校卒業後大阪大学医学部に入学して卒業,大阪大学第二内科に入局し,内科医師として研鑽するとともに,脂質,つまり脂の代謝をテーマに生活習慣病解明の研究を続けてきました。医学部卒業後,芦屋市民病院や故郷の田辺の紀南病院で研修をした後,第二内科に戻り研究を始めました。研究の主題は,いろんな組織に脂質,つまり脂が異常にたまる病気のメカニズムを研究するということでございましたが,最近では身近な病気の肥満という状態がなぜ多くの生活習慣病を起こすのかを研究してきたわけであります。

 調べている中で,相撲取りに代表されるような150キロや200キロを超える超肥満の人でも,糖尿病とか高脂血症のような生活習慣病を全く持ってない人が多いのに,小太りの人でも2~3キロ太るだけで血糖や血圧が一気に上がる人がいることがわかりました。つまり肥満の程度が問題なのではなく,内臓脂肪という腹腔内の腸の周りの脂肪の過剰蓄積が多くの生活習慣病の原点であることを明らかにし,内臓脂肪症候群,つまりメタボリックシンドロームの概念を提唱させていただいたのであります。

世代間で交流・情報交換

 さて,今年度の国際ロータリー会長は,30年振りに日本人が選ばれました。その田中作次会長が掲げたテーマは,「奉仕を通じて平和を(Peace Through Service)」であります。平和という意味は,もちろんロータリーの究極の目的であります世界平和を意味いたしますが,それに加えて発言と選択の自由や安全で安心できる未来など,個人個人の心の平和を目指すことも含まれているということで,タイムリーで立派なテーマであると思っております。大阪RCの今年度の方針は,RI及び地区の方針を受けて,「親睦と奉仕を通じて心と身体の健康を,そして次世代の育成を」といたしました。

 当クラブには,各職業分野で関西はもちろんわが国を代表する方が会員として名を連ねておりまして,その年齢構成は,90歳代から30歳代まで極めて広い範囲に分布しています。つまり現役は退いていても,それぞれの分野で成功された長老から現役の若手の皆様まで,各世代が横の交流だけではなく,縦につながる異なった世代間の情報交換をすることができる,ほかには類を見ない層の厚い組織であるとも言えます。

 今社会では,精神不安,意欲低下,最終的にはうつ状態の人が増えてきていますが,その原因として最も大きいのは,人との楽しい交流が減ったことであると思います。高齢者だけでなく若い世代でも,直接のフェースツーフェースのつき合いが減ってきたことが,精神行動に悪い影響を与えているようです。このロータリーを,異業種,異分野の交流にとどまらず,同世代,あるいは各世代間の交流と情報交換を行うことによって,心の健康を保つための最も有益な場にできるものと思っています。

引き続き被災地支援

 東日本大震災の津波被害,原発事故の解決のめどは,まだまだ立っておりません。当クラブとしては,昨年の水野年度では,支援金の寄付では極めて大きな成果を上げておられますが,今年度も引き続きニコニコをはじめ種々の援助を継続していく必要があります。特に,被災地の子どもや若者の育成にかかわる支援は継続性が必要でありまして,90周年事業とからめて長期計画が必要となってくるわけであります。90周年事業委員会が設立していただいている「宮古・大阪 みおつくし奨学金」制度の立ち上げと,100周年に向けた成功を期待しております。

 最後になりましたが,この新米の会長業務を支えていただける役員の皆様はもちろん,事務局の皆様,歴代会長をはじめ多くの会員の皆様のご指導とご協力を今一度お願い申し上げまして,会長就任のご挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。