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2014年3月28日(金)第4,479回 例会

人を呼び込む関西発のブランド

田 中    功 氏

(株)ユー・エス・ジェイ
取締役
田 中    功 

1944年生まれ。’67年慶應義塾大学法学部卒業,’69年ドレーク大学経営学部卒業,エッソスタンダード石油(株),日本マクドナルド(株)を経て,(株)ハーレクイン代表取締役社長などを歴任。2003年(株)ユー・エス・ジェイ取締役マーケティング・営業本部長,’09年現職。

 USJは2001年3月31日にオープンしました。初年度1,103万人と,この種のテーマパークでは最速で最高の数字を出したわけですが,翌年度たび重なる不祥事が発生して770万人まで落ち込みました。2004年6月に米国人のグレン・ガンペル社長が就任して大きく変化しました。マーケティング戦略を転換したのが発展の基盤になったと考えています。

 USJのビジネスは「小売業」という位置づけです。「顧客とは」「商圏とは」に関して綿密なリサーチ等々をして理解をして,ビジネスに反映しています。売り上げの50%強は入場料収入。他に飲食・物販店舗から40%強,残りが駐車場収入等々です。直近5年間の数字を見ると,売り上げ,集客も順調で今期は1,050万人超の見込みです。もう一つ,ビジネスとして非常にうまくいっているのは,入場料を既に5回値上げしています。値上げとゲスト数が増えたことで,収益面にも非常にいい結果を出しています。東京ディズニーランドが,入場料6,200円を4月いっぱいで6,400円に値上げすると発表していましたが,USJは既にその数字を上回って,4月1日にはもう1回値上げして6,980円になります。それだけの入場料を払っても価値を感じてくれるゲストが増えているのではと思います。

大阪発全国発信の意義は

 全国ネットの報道番組を大阪のスタジオからやるということに,非常に意味があると思っております。私が思うのは,こういう世の中であればこそ,違った視点を提供することに非常に意味があるんじゃないかということです。これは別にメディアに限ったことではなくて,地盤沈下している大阪,元気がないと言われている大阪の中で,全国に向けて,「いや,ちょっと違うんじゃないか。東京の皆さんはそう見ていらっしゃるけども,大阪から見たらそうは見えへんよ」ということを発信することの意味が非常にあるのではないかなと思っているわけです。

 ご承知のように,東京は永田町,霞ヶ関があって,距離感が非常に近い。例えば政治問題について東京の生番組で何か話せば,すぐに反応が返ってきます。もちろん大阪でも大阪発の全国ネットだと反応は返ってはくるのですが,東京の局を通じて返ってくるんです。直接はあまり返ってこない。ということで,本音トークになるんです。「ミヤネ屋」の場合,そもそも宮根さんが台本を全く無視します。実際オンエアーが始まりますが,全く聞かれない。わざと打ち合わせもしない,わざと台本は無視する。それで司会者の能力によって本音を引っ張り出していくというのが,大阪の番組の特徴なのです。

家族連れ・女性向けに営業戦略を変更

 マーケティング戦略の転換ですが,パークのポジショニングを「ファミリーエンターテインメントのテーマパーク」に変更しています。合わせて,中心となるターゲットグループを変更しています。当初は「若年層」に焦点を当て「スリルと興奮」を打ち出していましたが,現在は「お子様を持つファミリー層」「18歳から29歳の女性層」にすべての焦点を当てています。イベント,アトラクションも,その層に合わせています。この2つのコアターゲットに向かって,イベント等々を展開して楽しめるようにしているのが大きな特徴です。

 アトラクション一つ作るには多大な投資金額がかかります。今までで最大の投資金額は「スパイダーマン」で約140億円。建設中の「ハリー・ポッター」は450億円です。パークで働いている人間,従業員,「クルー」と呼んでいますが,クルーは最も大切なアトラクションであると位置づけています。

 USJのマーケティングは「ハーフサイエンス,ハーフアート」と呼んでいます。ビッグデータが大きな話題になっていますが,合わせて市場調査とか,そのような手法を使ってマーケットを理解するために,ゲストを理解するために,日夜動いています。それがサイエンスの部分。それだけでうまくいくとは思っていません。やはりアートな部分は人間の判断が必要です。経験からだとか,これはいけるという見た感じの感触だとか,そういうものも必要だと思っています。

世界最高品質の接客サービスを

 右肩上がりの数字ですが,最大の成功要因はクルーのホスピタリティーをいかに上げるかに注力していることが一つ,それとアトラクション,イベント,クルーのサービスもそうですが,世界最高品質のものをというこだわりがあります。それが成功要因の一つの大きな要因であると判断しています。「ハリー・ポッター」がいよいよオープンします。著者のJ・K・ローリングスは,非常にこだわりを持っています。彼女の頭の中に「ハリー・ポッターの世界はこうですよ」というのが出来上がっていて,その検査が4月18日にあります。このタイミングでオープンしますよとアナウンスできればいいのですが,今は4月18日待ちです。夏前にはオープンしたいと考えております。東京ドーム3つ分ぐらいの広さのエリアに,ホグワーツ城や映画の中で出てきた城の周りの村々がすべて再現されます。アトラクションも城の中から子どもがほうきに乗って空に飛び出すのを実際に体験できます。肖像画が動いたり,話したりしているのをご覧になったかと思いますが,そっくりそのまま体験できます。

 現時点で関西からのお客様は60%強です。関東から10%強,中部から12%前後。西日本,中四国,九州,沖縄,北陸はかなり浸透しています。来期は関西の数字を50%に置いています。より遠方から,海外も含めて多くのゲストに来てもらうように,というのが一つの大きな目標です。遠方からのゲストが多くなると,関西経済にも大きなプラスになるのではと考えています。

関西は「点」より「面」で魅力発信を

 私は関西でもう9年以上時間を使っていますが,「戦略があるのかな」と疑問を感じることがあります。ビジネスは「初めに戦略ありき」ですが,戦略というものをしっかりと見極め,共通して理解する,そしてアクションしていくということが必要なのではないのかなと。それと,東京に対抗するという意識がすごく強いのではないのかなと感じています。私も機会がある時は「東京のことなんて忘れたらどうですか。それよりも大阪というのは,『西日本の中心都市』,または『アジアの中心都市大阪』というようにポジショニングを変えた方がよろしいのではないですか」と話しています。それから,イベントなどが「点」なんです。もう少し横につなげて「面」の展開にしていった方が,情報としての魅力も増しますし,マーケットの反応もより大きいのではないのかなと思います。

 最後になりますが情報発信です。やはり的確に魅力を伝えること,情報を継続的に発信していかなければならない。しっかりした戦略に基づいて情報発信しないと,その情報自身が生きてはこないのではないかと思います。

(スライドとともに)