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2015年3月13日(金)第4,525回 例会

新時代の台日関係

蔡    明 耀 君(外交官)

会 員 蔡    明 耀  (外交官)

1978年,行政院僑務委員会入省。’80年,外交部(外務省)入省。’84年,在マラウイ中華民国大使館第三書記官。’93年,亜東関係協会横浜弁事処部長。’94年,駐フィリピン代表処副部長。’97年,中琉文経協会駐沖縄代表。2003年,台北駐日経済文化代表処業務部長(参事官)。’08年,亜東関係協会秘書長。’09年,在スワジランド中華民国大使館特命全権大使。’13年9月,現職(駐大阪経済文化部弁事務処処長)。’13 年12 月に当クラブ入会。

 台湾と日本はとても長く強い関係を持ってきました。戦後70年,日本は立派な国になり,台湾も今日の存在を維持してきました。台湾は日本の重要なパートナーだと思いますが,残念ながら日本の方々にとっては10年前,あるいは5年前まで,あまりそういう意識はなかったと思います。けれどこの数年,意識が大分変わってきました。

台湾に多くの錨を

 台湾の国会は今,国民党が与党,民進党が野党です。昨年11月29日の統一地方選挙で野党が大勝しましたが,来年1月にまた国会議員と総統の選挙があります。今のところ野党が有利かなと思います。

 1950年に中華民国が台湾に行ってから,国際環境は厳しくなりましたが,22カ国と外交関係を保有しています。日本,米国,欧州諸国とは外交関係がないが,良い関係だと思います。例えば,台湾人は日本にノービザで行けます。昨年は283万の台湾人が日本を訪れました。

 中国は日本と外交関係を持っていますが,中国人が日本に来るにはビザが必要です。日本と台湾には特別な関係があるということでしょう。

 「台湾は大丈夫か」「台湾は中国に併合されるか」という質問がたびたびあります。2008年に馬英九総統が就任してから,中国との関係を良くするように努力してきました。年700万人が中国と台湾を往来しています。

 ただ,台湾は絶対に自由民主を守っていく,という決意は誰も変更はできません。簡単に中国と統一とか,中国に降参するとか,そういうことは絶対にしません。

 重要なのは,日本から投資をもっと欲しいということです。台湾は暴風雨の海原の一隻の船のように,強い風で中国大陸のほうへ吹かれている。できるだけ多く錨を台湾に与えてくだされば,台湾も中国と適当な距離をとっていくことができると思います。

 米国から武器の調達も必要です。中国に軍事で対抗はできないけど,少なくとも2週間,3週間,1カ月ぐらいの自己防衛ができる武力を持たなければならない。

 もう一つ,国民の意思ですね。自分の国は自分で守るという決意です。

台湾と日本の関係

 日本と台湾は運命共同体です。同じアジア太平洋地震帯にありますから,何かあったらお互いに協力し合わなければならない。

 中国大陸の太平洋進出に対して台湾ができることは,日本,あるいは米国と協力して,日本の航路の安全を守ることです。

 台湾は日本の植民地でしたが,日本の方々は台湾で何をしましたか。悪いことも,いいこともしたけど,台湾人は不思議なことに日本人に対しては恨みを持っていません。台湾に貢献された方を神様として尊敬しています。日本時代の建物をそのまま保存し,利用しています。

 1972年,日本が中国と国交を樹立したとき,台湾との関係は民間関係になりましたが,実はお互いに合意があります。例えば,私の身分は外交官ではないけど,外交官の特権を少し持っています。日本と台湾の関係を促進するためにお互いに認めているんです。

 1953年から1972年までたくさん日本の政府開発援助(ODA)をいただきました。日本の投資も,台湾の経済発展に大変貢献してきました。

 断交の前,台湾の国連の地位を守るために,日本と米国は行動しました。断交後も台湾のために,世界貿易機関(WTO),アジア太平洋経済協力会議(APEC)などへの参加にたくさんの支援をいただきました。

 台湾人の「最も好きな海外の国」は,選択肢が一つならば43%は日本を選びました。米国,中国は7%です。複数の選択肢なら,日本は70~80%に上ります。

 これから台湾と日本の関係を強化するため,いろいろな交流を推進しなければならないと思います。観光交流,日本の松山と台湾の松山空港など「同名の交流」,留学生の交換などです。

日本の安保に台湾は必要

 日本と台湾とのいい絆をさらに深めていけば,たぶん日本と台湾の国益につながると思います。

 私は東京,横浜,沖縄にいて,今は大阪ですが,日本での勤務が12年になります。今回,大阪に来て,やっぱり日本と台湾の関係が変わっていると思います。いい方向へ変わっています。

 日本の安全保障をまじめに考えるとき,日本にとっては台湾の存在が絶対に必要だと思います。政府のことは政府の人間がやるだけで結構だ,という意識は駄目です。やっぱり民間から政府をチェックし,監督しなければ民主国家じゃないです。

 中国は民主化,自由化,国際化を推進しなければならない。国際法や国際社会の習慣に従って行動しなければならない。独裁政権のような覇権的な行動は,隣国に迷惑をかけると思います。

 中国は鄧小平時代から改革開放を実施し,国民の所得が高くなっています。海外に行く人も多くなっています。昨年は約220万人が日本を訪れました。台湾にも250万ぐらい。彼らは台湾に行って,日本に来て,自由な生活の様子を見たら,大陸へ帰ってから必ずこれからの発展につながる行動をすると思います。

(スライドとともに)