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2014年10月17日(金)第4,506回 例会

「HONDA」と私の夢

NGUYEN, Phuong Thao Thi 氏

2014~15年度米山奨学生 NGUYEN, Phuong Thao Thi 
(グェン フオン タオ ティ)

1986年ベトナム生まれ。2009年ホーチミン工業大学経営マネジメント科卒業。’10年に来日し,日本語を学んだ後に’13年4月に大阪経済大学大学院経営情報研究科修士課程入学。’14年4月から’15年3月まで米山奨学生。

 私はベトナムの南にあるタイニン省の出身です。カンボジアとの国境がすぐ近くで,ホーチミンにも近い場所です。高校まで育ち,ホーチミンの大学に通うためにホーチミンに住むことになりました。その後,日本に留学しました。4人家族で,父と母と弟がいます。両親は学校の先生でしたが,生計が成り立たないのでワニを育てて収入を得ています。

日本の象徴が夢をもたらす

 ベトナムにある「HONDA」の文化はどういうことか。ホーチミンの街で,バイクは70%,HONDAのメーカーです。20~30年,いやもっと前からベトナム人が日常使う日本の単語があります。「HONDAを何台持っていますか?」「いつHONDAを買ったの?」。何気ない会話でバイクのことを「HONDA」と呼びます。修理屋さんの看板はたいてい「HONDA」と書いてあります。メーカー名としてではなくて,一般名詞として定着しています。

 1990年代に自由市場となって初めて経済的余裕ができ,バイクを買えるようになりました。日本に居住していたベトナム人により中古のHONDA社製のバイクが大量輸入され,はやるようになり,バイクを「HONDA」と呼んできました。他社製バイクでも「HONDA」です。修理店はどこにでもあります。ほかのメーカーは正規代理店以外で修理できないのです。毎日使っているバイクが故障したら,遠くの代理店へ運ぶのは面倒です。

 HONDA社製は,信用できる日本の製品の象徴です。そこから日本製品は高品質という「日本文化」が形成されました。「HONDA」文化は,いいものをつくるために先端技術を応用できる,勤勉で責任感が強い日本人を反映しています。「HONDA」文化は日本の「営業」文化を象徴し,私に日本への夢をもたらしました。

とにかくチャレンジ

 「ベトナムから近い日本が,なぜアメリカと同じくらいに経済が発展した国になったのか」ということに疑問を持っていました。ベトナムの経済を日本と同じくらいに発展させるためには何が必要なのか。この疑問を解消するために,憧れてきた先進国である日本で,経済,そして興味のある情報通信の高度な知識を身につけ,日本の文化,日本人の考え方や価値観などについて理解を深めたいと考え,留学を決めました。

 日本に来たばかりのときは,外国語の不便さと異文化の中での苦しい生活を過ごしました。人間関係,ホームシックなど複雑な問題が次々と起こりました。毎日イライラして,だんだんしゃべらなくなって,日本での生活が嫌になりました。日本語が通じない私は新しい環境に適応できなく,勉強もアルバイトも順調にいかなくて,将来に迷いました。つらかったです。

 アルバイト先でおばさんが「今は始めたばかりなのだから,自信を持ち,前向きに,勇気を出してやってみたら,失敗することがあっても,その経験の中から学ぶことが多いでしょう」と言ってくれました。若いときは,自信がなくても,失敗を恐れず,とにかくチャレンジしてみることが大切です。人生まだ始まったばかり,今後の道はもっともっと難しくなるかもしれません。おばさんの言葉は私の心に刻まれました。日本は外国の人に冷たい国ではないと感じました。笑顔で温かく外国人を歓迎していると知りました。

知識と経験をベトナムに

 大阪経済大学での専攻はマーケティングです。「経営学」「経営組織」「マーケティング戦略」など,様々な科目を学んでいく中で,日本の考え方や経営手法,ノウハウなどがよく理解できました。日本という国がどこの分野で優れているのか,グローバル化の波でどう苦戦しているのかということが分かりました。なぜ技術に優れていても販売では負けてしまったのかという原因もよく理解できました。

 サービスの質の評価結果を通じて,ベトナム企業のサービスの質,マネジメントはマイナス点が多いと指摘されています。それは経済発展する上で障害要因の一つだと考えられています。現在,競争環境におけるサービスの役割は企業の存在にも影響を与えると思います。国際化が進むベトナムは経済大国の経験を学ぶ必要があります。私は日本における顧客,あるいは対人サービスについて調査,研究を行いたい。卒業後,日本の企業をより一層理解し,自分の仕事の能力を向上させたいと思います。

 そのような経験を積んで帰国するつもりです。知識と経験をベトナムに伝えたい。特に日本のサービス,接客をベトナムに導入します。ベトナムにはない平等できめ細かいサービスは,本当にすばらしいと思います。

 日本の文化や習慣,日本人の生活を深く理解できる機会がありますので,将来は日本とベトナムの懸け橋になりたいと思っています。日越友好関係の発展のために,自分の力を全力で注ぎ貢献したいと思います。

 米山奨学生として6ヵ月が過ぎました。いろいろな活動に参加させていただきました。ロータリーの方々との出会いによって,人と人の触れ合いや思いやりの大切さについてもあらためて考えさせられました。なかなか体験することができない貴重な経験になると思います。今後の人生に大きなプラスとなっていくと思います。日本の文化と習慣,日本人の生活をより理解できる機会もあり,視野も広げることもでき,人生観や世界観について深く考えさせられたのも,得るものが大きかったといえます。奨学生の留学生活をサポートしてくださるロータリーに感謝を申し上げます。ロータリーの皆様を見習って,米山奨学生としてふさわしい行動をしたいと思います。

(スライドとともに)