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2017年6月16日(金)第4,629回 例会

私の考えるBCP

細 川  悦 男 君(機械・装置製造)

会 員 細 川  悦 男  (機械・装置製造)

1951年大阪生まれ。’74年甲南大学経済学部卒業。同年((株)細川鉄工所入社,同年6月Mikro Pul Corp. 駐在。’80年ホソカワミクロン(株)に社名変更。2010年~11年(株)ユノインターナショナル代表取締役社長。’15年ホソカワミクロン代表取締役社長,現在に至る。
当クラブ入会1996年4月,副会長,国際奉仕・情報・規定・RACなど数々の委員長,副SAAを歴任。米山功労者・PHF。

 我々は大きな震災を2回経験しましたが,この経験が今どのように教訓として活かされているでしょうか。「のど元過ぎれば熱さ忘れる」と言います。何か大きく変わった施策をしているか,表面に現れているか,そんな疑問を持つようになりました。

通信手段の確保を

 多くの会社でBCP(Business Continuity Plan)のマニュアルを作成していると思いますが,大災害が起きた時,本当に会社が機能するか疑問です。そこでBCP実行のための日常の準備行動について,荒唐無稽,無理難題,奇想天外かもしれませんが,個人的な発想と極端な理想論で考えました。

 まず,社長や役員はどこに住んでいますか。事が起き,少なくとも執行役員以上が顔を合わせて協議するには,どこかに集まらなければなりませんので,せめて役員は遠距離通勤を避けたほうがいい。やむを得ない場合は原付バイクを1台自宅に置き,何とか出勤できるくらいにはしておくべきです。阪神大震災の時も,いち早く活躍したのがバイクでした。

 2番目に,災害時には電話回線が込み合って連絡が取れないことが多いため,役員同士,自宅に専用回線を引き,さらに衛星電話を会社に1台,役員宅に人数分を設置すれば安心です。念のために,アマチュア無線の資格も取って機器を設置すればいかがでしょうか。

 3番目はネット通信環境です。パソコンは持ち歩きが簡単なノート型をお勧めします。メール等のデータを外部で見る時にも必要です。モバイルやスマホとの連携も大事で,通信手段としてポケットWi-Fiは電波が通じるところなら非常に使い勝手が良く,少なくともデータのやり取りは確保できます。

2 つの震災の教訓

 4番目は社有車です。営業などで使う場合はハイブリッド車でかつPHV充電式の,車内に100ボルトのコンセントがあるものがお勧めです。燃費の向上だけではなく,電源があればパソコンや多少のものは動かせます。東北の震災の時,お客様から,修理やメンテ,点検の依頼が殺到しました。しかし,ガソリンの入手が困難で車が使えず,断らざるを得なかったことがありました。メンテ作業が多いとか,部品を配送する必要がある会社は,スーパーカブの購入を勧めます。1リットルで100キロ走れ,工具,部品などある程度のものは運べます。各拠点に何台かあれば理想的です。

 5番目は製造拠点と外注依存度です。日本は地震災害が多く,製造工場はできれば2ヵ所あったほうがいい。1ヵ所は外注依存度を上げ,ほぼ100%外注で生産ができる工場とし,もう1ヵ所はほぼ100%自分たちで内製できる工場にしておくのがベターです。

 6番目は,新工場や新事務所を建設する際に考えておくべきことです。まず事務所は十分に余裕がある未使用のスペースを設けて設計するのが一案です。災害時に他の事業所からの人員を,1ヵ所に集めて仕事ができるからです。工場も空きスペースを設けて生産余力を確保しておく。また,必要最小限の発電機のほか,ヘリポートや,お金はかかりますが地下のシェルターも設置して頂ければと思います。地下には大量の水のタンクを設置すればどうでしょうか。新たに事務所や事業所をつくる際,井戸を掘っておくのもひとつの方法です。東北の時,我々のつくばの事業所にたまたま井戸があり,飲料水だけでなく機械を洗ったり,掃除したりと,非常に重宝しました。

 7番目は人員の配置と把握です。秘書は最低2人確保し,1人は社長の自宅近く,もう1人は会社近くに住んでいる人をそれぞれ任命する。2人が常に連絡が取れるようにして,社長の意を伝え,現場の状況を社長に連絡するシステムを取っておけばスムーズです。

 8番目が臨時組織表の作成です。災害時にどの程度の人間が会社にすぐ出勤できるか,表をつくって人数を把握しておき,出てこられる人だけで組織表をつくって臨時に会社を運営するのです。

 9番目に,資金に余裕があれば近隣の空き地や売地をとりあえず購入する。阪神大震災の教訓を活かし,遊休地を確保して必要と思われる台数のキャンピングカーを置くことを勧めます。通勤時間が普段より長くかかることは肉体的・精神的に負担で,近くで寝泊りできる所を確保しておくことは非常に大事です。

 10番目は近隣同士の連携です。隣の会社の業務や流通,在庫を把握しておけば,業務上助け合うことができるかもしれません。

 11番目。昔はどこの会社にも宿直当番がいました。今は労基法上難しいかもしれませんが,24時間誰かが会社にいることは経営者や他の従業員にとっても安心感があります。

究極のB C P ?

 12番目。「某国からミサイルが飛んできたらどうする」と聞かれると全く答えられません。私の答えは「BCPはあきらめてください」です。ただ,地下シェルターがあれば就業中にミサイルが来ても多くの従業員の命を救えます。「夜来たらどうする」に答えはなく,もう国家レベルで考えてもらう必要があります。

 最後に,これはジョークですが究極のBCPに触れます。日本は地震災害が多く,他国からミサイルが飛んでくることも否めません。それを避ける方法は,日本総動員,民族大移動引越しを行うことです。オーストラリアやアメリカ西海岸あたりの土地をちょっと売ってもらい,今の日本と同じ広さのものをつくる。今の日本の国土と等価交換できればと考えます。ご清聴ありがとうございました。