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2017年12月15日(金)第4,652回 例会

最新美容医療の実際~~美を求める心~~

衣 笠  哲 雄 君(形成外科医)

会 員 衣 笠  哲 雄 (形成外科医)

1955年生まれ。’82年奈良県立医科大学卒業。’89年きぬがさクリニック開院。2002年大阪大学医学部非常勤講師。’13年大阪市立大学医学部非常勤講師。医学博士。大阪御堂筋RC 1994~2004年在籍あり。
’12年5月当クラブ入会。

 江戸時代の日本では,梅毒対策として,木の造鼻術が行われ,木の入れ歯も進化していました。国内初の二重まぶたを造る手術は1896年,鼻を高くする手術は1928年にそれぞれ行われました。

時代と共に変化した美しさ

 美とは一体,何なのでしょうか。「風景の中のビーナス」と,江戸時代の「見返り美人図」を比べてみると,西洋と東洋で,美に対する様相が全く違います。人種,社会,文化,または経済などによるものかもしれません。

 西洋では,20世紀の初頭ごろから,体型の変化はさほど見られません。一方,日本では明治時代の女性は胴体が長く,足が短く,お尻も大きい。まさに「でっちり」という感じでした。現代の日本女性は,足がスラリと長く,8等身に近い西洋的な体型となってきました。

 顔はどうでしょうか。西洋の凹凸のある立体感と比べ,元々,日本の美は平面的でした。8世紀の「鳥毛立女屏風」はふくよかな顔,細い目,小さな厚い唇。12世紀の「源氏物語東屋」は下ぶくれで細目,おちょぼ口です。大正時代のCMポスターになると,かなり目が大きく,はっきりします。大きな目が美人であるという時代の変化が見られます。1909年に開催された第1回日本美人コンクールで優勝した福岡県の末広ヒロ子さんは,二重ではっきりとした目と,すっと通った鼻筋をしています。

「美のプラス方向」を目指す美容外科

 美容医療は,美容外科,美容皮膚科,美容内科,アンチエイジングを求める医療,診療科目としてはこれらすべてを含んでいます。生まれて何の異常もない状態を±0(プラスマイナスゼロ)とします。生まれついての奇形や,生後の事故による変形を治す医療が形成外科です。いわば,マイナスを±0の方向にもっていこうとする外科です。±0をプラス方向,「美」の方向にもっていこうとする外科が美容外科だといわれます。

 別の観点からとらえると,美容医療は保険診療外です。病気の治療ではなく,外面の美しさ,内面の健康,若々しさ,精神の高揚等を求める医療です。生老病死の「病」が対象ではなく,老にあらがう,アンチエイジングを追求するものです。

 美容皮膚科における診断には,ロボスキンアナライザーという器機を用います。肌のきめ,水分量,毛穴,しみ,くすみ,毛細血管などを計測します。肌年齢がデジタル化され,実年齢は40歳だけど,たとえば水分量は54歳という肌年齢が出ています。

 シワ,たるみの治療には,大きく分けまして注入療法,レーザー療法,外科的手術があります。シワ,たるみをとる手術,フェイスリフトです。余分な皮膚,皮下組織を取り除き,表在性筋膜を外上方に引き上げています。上まぶた,下まぶたのたるみ取りも同時に行っています。最近は,切る手術,ダウンタイムの長い手術を避け,切らない手術,ダウンタイムが少ない施術を求める人が多くなっています。

 再生医療に移りましょう。澤芳樹先生が理事長を務める日本再生医療学会,そして再生医療等安全確保法の第3種に分類されています。患者さんご自身の血液を10~50cc採取し特殊フィルターに入れ,遠心分離し,血小板の多い血しょうを作ります。そこへ細胞成長因子を添加し,注入します。PRPと呼ばれます。3年ほど効果が持続すると言われています。昨年,NHKの「あさイチ」で放送されたのでご覧ください。(動画)

 メスを使わないレーザー医療も紹介します。ここ十数年,ほとんど進歩がありませんでしたが,2014年に登場したPICO(ピコ)レーザーが旋風を巻き起こしました。ミリセコンド10のマイナス3乗,マイクロセコンド10のマイナス6乗,ナノセコンド10のマイナス9乗から10のマイナス12乗,1兆分の1秒,ピコセコンドの時代へ突入しました。従来のレーザーは,大きい金槌でゴンゴンゴンと壊すような感じでしたが,ピコレーザーの場合は,非常に細かく砕くイメージです。タトゥー・入れ墨・しみ・そばかす・傷跡・組織の再生などに活用されています。リストカットの傷跡や唇裂の手術跡なども適応できます(動画)

様々な治療法の併用も

 様々な治療法を併用し,患者さんに外部への露出も許可して頂いた事例を紹介します。世界的なアンドロイド研究の第一人者である石黒浩教授が十数年前に作られたアンドロイドは,石黒教授とそっくりだったといいます。しかし十数年の歳月を経て,眉間のシワが深くなり,目が怖くなり,頬もこけて老化が進んだ石黒教授は,「若返らせてほしい」と私に依頼されました。顔出しOKで,本やTVなどで紹介していただいています。

 まず,サーマクールCPT600ショット,続いて,ヒアルロン酸を注入しました。6ヵ月後,サーマクール2回目,再生医療PRP・F,2キット分を注入しました。レーザーその他も行っています。術前・術後6ヵ月,術後2年です。12年前作製のアンドロイドと,12年後の石黒先生,術後2年の石黒先生です。「自分がアンドロイドに似てきてよかった」と言ってくださいます。

 落語家の桂小枝さんにも,モニター承諾書にサインをいただきました。全く太れずどんどん痩せていくので,若返らせてほしいとのことでした。高座に上がらないといけないため,きつい手術は出来ないとのことで,ダウンタイムの少ない手術を少しずつ行いました。今も,暇を見つけては来院されています。

 今回の特別映写につきましては皆様に本当にお世話になりました。この場をお借りし,厚く御礼申し上げます。

 (スライド・動画,400インチの大スクリーンにて)