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2018年11月9日(金)第4,694回 例会

日本ワインを比較試飲して知る
白ワインの世界

久 保    將 氏

サントリーワインインターナショナル(株)
シニアスペシャリスト
久 保    將 

1957年1月生まれ。大阪府立池田高校卒業,大阪市立大学経済学部卒業。’79年サントリー(株),2000年高級ワイン輸入会社ファインズ設立,’03年サントリー(株)に復帰,現在サントリーワインインターナショナル(株)勤務。
一般社団法人日本ソムリエ協会執行役員。

 私は1979年にサントリーに入社しました。最初の4年余り長崎県で営業マンをやっていたときにワインに目覚め,東京か大阪でワインの仕事がしたいと希望を出し,念願かなって東京のワイン課に転勤することができました。以来34年余り,ワイン一筋。シニアスペシャリストという仕事をさせていただいております。

動脈硬化を防ぐ赤, 殺菌力の白

 最初は健康軸を中心にした話です。酒は百薬の長といわれます。まずは「赤ワインが動脈硬化を防止する」。20年以上前,みのもんたさんとかがテレビで叫んでいた「フレンチパラドックス」,心臓病が宿敵のアメリカ人が言い出した言葉です。心臓病は動物性脂肪を取り過ぎると良くないんですけれども,フランス人はアメリカ人よりも動物性脂肪を取っているにもかかわらず,心臓病の割合はずっと少ない。これがフレンチパラドックスです。赤ワインのポリフェノール,色素のアントシアニン,タンニンがいい方に働いているからのようです。2011年にNHKの2回の特番で紹介されたレスベラトロールという物質も赤ワインに多く含まれています。ボケを防止し,長寿に関するサーチュイン遺伝子を修復するため長寿につながるといいます。
 白ワインも実は体に大変有効です。「牡蠣にシャブリ」の名言をご存じと思います。サルモネラ菌を50万個近く入れた容器に白ワインを入れた実験では,わずか10分ぐらいの間に60個ぐらいまで菌が死んでしまった。これは消毒用アルコールよりもずっと殺菌効果が強く,食物酢,穀物酢などよりもさらに強いことがわかりました。

知っておきたいワインのブドウ7品種

 ワインの味わいが決まるのは4つの要素――ブドウ品種,作り手(人間),気候,土壌です。
 世の中には約8,000品種のブドウがあるといわれていましたが,今はDNA分析が非常に発達して同じDNA配列のものが整理され,2,000ぐらい減りました。とはいえ醸造用に使われるのは100に足らないぐらい。その中で覚えておくと皆様が出会うワインの80%ぐらいはカバーできるという有力7品種は,赤がカベルネ・ソーヴィニヨン,ピノ・ノワール,シラー,メルロ,白はシャルドネ,リースリング,ソーヴィニヨン・ブランです。
 次は人間がすること。作り手が選べるものは,ブドウの品種・栽培方法,醸造の方法,それから樽なのかステンレスタンクなのかといった熟成の方法です。選べないのが気候と土壌。この2つを合わせてテロワールと言いますが,美しい日本語訳をいまだ見つけることができません。
 世界の名醸地は,北緯30度から北緯50度の帯にあります。南緯では30度から40度。この帯がブドウ作り,ワイン造りに非常にいい気候ということです。土壌は,粘土質で水はけが悪く,鉄分を多く含んで赤っぽいところでは,骨格がたくましくて力強いワイン,でもちょっと重くなる。水はけのいい,石がゴロゴロしたところでは軽やか,香り華やかなワインになりやすいといった傾向があります。
 さて,お待ちかねのテイスティングです。皆様の目の前に2つグラスがあります。左がソーヴィニヨン・ブラン,右がシャルドネです。大まじめに同時に並べて比較するのが実は非常に大事です。両手にグラスを持って,白い布の前でまず色を見てください。次に香りをかいでいただけますか。明らかに違うのはわかりますよね。このわかるということが大事です。最後に口に入れてみます。ソムリエは味わいとか香りをお客様に口で説明するために特訓しますが,皆様はあまり表現にこだわらなくてもいいです。けれども,お友達とワインの話をするときに喜びを共有するためには,表現する言葉を覚えると楽しくなるかもしれません。
 左は青森県のブドウを使った津軽産ソーヴィニヨン・ブラン,ヴィンテージは2016年です。弘前にある岩木山の南向きのなだらかな斜面で,契約農家の太田さんが,もう30年ぐらいにわたってブドウを育ててくださっています。右側は山梨県の登美(とみ)の丘のシャルドネ2017年です。シャルドネは実に変幻自在な品種で,醸造家が例えば樽熟をしたり,別のテクニックを使ったりと工夫するとどんどん変わっておいしいワインができるため,世界中の醸造家がこぞって作る品種です。

ワインと料理はマリアージュが面白い

 最後のテーマは料理との関係性。まず主素材の特徴をよく知ること。次は調理法。素材の切り方,副素材も大きな道筋です。ワインとの相性の道筋には5つの原理原則があります。①本質的な相性。例えば「白はお魚,赤はお肉」など。②同一性の原理は,似た者同士は相性が良く,例えば少し甘い料理には,少し甘さのあるワインが合うなど。③コントラストの原理。味覚には甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つがあり,全てがバランスよくあるとおいしいと感じます。例えば,酸味のほとんどない白身の焼き魚に,酸のあるソーヴィニヨン・ブランのようなワインを合わせること。④洗い流しの原理とは,例えばもみダレで味の濃い焼き肉を食べたときに生ビールを飲むと味がリフレッシュされます。ワインも同じです。⑤マリアージュ・反発。これが非常に面白く,1+1が3や4になったり,時々マイナスになったりします。典型的なのは,動物性脂肪と赤の若い強いタンニンが出会うと甘味に変化。ステーキに濃い赤ワインを合わせるのは,だからなんですね。
 いろんな合わせ方を実験していただいて,ワインライフを楽しんでいただけたらいいと思います。
(スライド・資料とともに)