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2019年5月17日(金)第4,715回 例会

ポテンシャルを秘めた中央アジア:
新体制下で急進的に改革するウズベキスタン

シャキロフ・アザマト 氏

ロシア連邦弁護士
ウズベキスタン弁護士
シャキロフ・アザマト 

2011年,19歳でタシケント国立法科大学および名古屋大学日本法教育研究センターを卒業。同年,日本政府国費留学プログラムに合格し,15年大阪大学大学院法学研究科を修了後北浜法律事務所に動務。 ’16年4月から弁護士法人イノベンティアに所属。 ’16年6月~’17年12月,モスクワで研修。

 今日は私が生まれ育ったウズベキスタンについてお話しさせていただきます。19歳で初めて日本に来るまで首都タシケントで育ち,あまり外国に行く経験もありませんでした。

中央アジア最大の人口を誇る国

 ウズベキスタンは地理的には中央アジアの真ん中にある国で,カザフスタン,トルクメニスタン,キルギス(ウズベク語ではキルギスタン),タジキスタンなど5つの国に囲まれています。国名に共通する「スタン」はペルシア語由来の言葉で「国」という意味です。カザフ人,タジク人,トルクメン人,トルコ人,アラブ系のウズベク人,モンゴル系のウズベク人などが住む多民族国家ですが,治安はとても良いです。
 通貨は「スム」。面積は44万k㎡で日本の約1.2倍。スペインと同じぐらいの面積です。言語はウズベク語とロシア語。公用語のウズベク語はトルコ語に近い言語で,ロシア語は,かつて旧ソ連の一国でもあったため広く使われています。強調したいのは,人口が3,300万人で中央アジア最大の人口を誇ることです。人口の過半数は40歳以下で,若者が非常に多い。15~65歳までがほぼ7割を占め,そのうち5割以上が40歳以下です。
 経済成長率は,中央アジア諸国ではカザフスタンに次いで2番目ぐらい。石油,天然ガスなど天然資源の輸出が盛んなカザフスタンは1人当たりのGDPが1万ドルありますが,ウズベキスタンは2,000ドルに満たないぐらいです(ちなみに日本は約5万ドル)。
 ウズベキスタンの天然ガス埋蔵量は世界24位,生産量が13位。銅や金,ウラン,石炭も非常に豊富です。天然資源が豊富であると同時に,政府は再生可能エネルギー分野にも力を入れており,水力発電,太陽光発電,風力発電の設備増加への投資を希望しています。旧ソ連時代にしっかりした鉄道ができており,東西を結ぶ鉄道もあります。

新大統領のもとで進む開放政策と近代化

 1991年に独立したウズベキスタンは大統領制の国で,2017年を境に大きく変化しました。
 17年まで非常に厳しい外貨規制のウズベキスタンは、ドルや日本円、ユーロなどの外貨を両替しにくい状態でした。企業や個人がウズベキスタン市場で販売した商品の利益を本国に送金できないなどのトラブルが多発する状態が20年も続いてきました。その結果,公定レートと2倍ほど金額が違うヤミレートが生じました。
 カリモフ大統領の死去後,選挙によって元首相のミルジョエフ・ジャブカットが大統領に就任しました。彼は,経済的に閉鎖的だった国を開放し近代化する政策をとり,新しい国造りに向かっています。
 具体的には,就任後半年で人事を刷新し,省庁などの国家機関を再編しました。 ’21年までの5年間にわたる経済戦略を打ち立て,汚職対策法の制定,外貨レート一本化,税制改革,経済特区設置,野菜と果物の輸出独占の解除などを次々に行いました。企業の利潤税や所得税の引き下げは,今年1月から施行されました。金額の制限を設けない外貨規制緩和やカザフスタンへの輸出手続き簡素化などによって貿易とビジネスの自由化も進んでいます。 WTOに加盟する作業を再開し,日本やヨーロッパなどから入国する際のビザ要件を廃止しました。外貨の規制緩和に伴い,現地通貨スムが切り下げられ,インフレが加速しています。
 こうした中で’12年に166位だった世界銀行ビジネス環境ランキングは,18年には76位になりました。

親日的で投資先としても魅力

 新規事業が始めやすく,不動産登記や資金調達がやりやすい。投資額にもよりますが,外国企業は関税をゼロにするなどの優遇措置を一定期間受けられます。自由経済特区となったまちでビジネスを始めた場合,ほぼすべての税金を払わなくても済む制度も作られました。三ツ星ホテルを建てると,1室当たり約50万円の助成金が出たりもします。
 政府作成の経済協力可能性リストには,石油,天然資源,繊維が挙がっています。繊維は名産の綿花が関係しますが,生産量は世界4位か5位。かつて国際問題となった児童の強制労働も禁止され,大手衣料品ブランドも取り引きを再開しました。来年3,400万人まで増える見込みの国民も資源だと私は思います。平均賃金は3万~4万円で人件費が安い。親日の国で,日本語に興味を持つ人が非常に多い。私がお世話になったJICAも法整備を支援しており,名古屋大学が現地に法律大学を造りました。日ウズの経営者の交流を図るセンターもできています。
 日本とは1992年に国交が結ばれましたが,実際の関係はもっと古い。第2次世界大戦時にシベリアから連行された日本人捕虜が,ウズベキスタン各地にダムや劇場を造りました。一番特徴的なのが首都タシケントのナボイ劇場。 ’66年の大地震でも倒壊しなかったため日本の高い技術力が印象づけられ,今も日ウズ関係を証明する建物となっています。昨年は日本人観光客が1万人を突破し,JCBも参入。元AKBの前田敦子さん主演の合作映画もまもなく公開されます。かつてシベリア経由で1ヵ月かかった日本からの物流は,最近,中国のウイグル地域カシュガル市を経由して最短4日間が可能になりました。もしウズベキスタンに興味がございましたら,ぜひ,私どもに貢献をさせていただく機会をいただければ大変幸いです。
(スライドとともに)