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2020年9月25日(金)第4,765回 例会

分業制スポーツにおける組織論

鳥 内  秀 晃 氏

関西学院大学 アメリカンフットボール部
元監督
鳥 内  秀 晃 

1978年関西学院大学文学部入学,アメリカンフットボール部に入部。大学卒業と同時にアメリカのサザンオレゴン大学,UCLAにコーチ留学。帰国後,アシスタントヘッドコーチ兼守備コーディ―ネーターとしてファイターズを指導。’92年に監督就任。以降,甲子園ボウル優勝12回,ライスボウル優勝1回,2016年には世界大学選手権日本代表チームも指揮。’19~20年シーズンを最後に退任。
著書:どんな男になんねん 関西学院大アメリカンフットボール部鳥内流「人の育て方」

 私は28年間,関西学院大学アメリカンフットボール部の監督をやってきました。勝つことを目指す中で,毎年毎年,繰り返し言ってきたことは「どんな人間になっていくんや」ということでした。
 人間,上から言われたことをやらされていても,あるレベルまではいきますが,それ以上の向上心は絶対に生まれてきません。学生との面談で「目標設定」を聞きます。学生は「秋に試合に出たい」などと言いますが,うちのクラブでは「出たいだけでは困る」「出て何するねん」―そこまで真剣に考えてください,と言っています。自分の今の立ち位置を考え,なにで今年,貢献できるのか,と。
 クラブ自体,フットボール自体がトレーナーや相手チームの分析担当などの後方支援が大事です。それをきちんとしていなければ,強いチームになれない。だから部員の2~3割は裏方にいってもらっています。命令ではなく,自分たちで話し合いをしてもらうんです。親からは「なぜうちの子が」となりますが,自分が本当に貢献できるのはなにか,葛藤を乗り越えて自立してもらうんです。
 なぜ75年もファイターズが続いているか。歴史があるからと言われるのですが,違うんです。前の年,前の前の年,1年のときに,甲子園ボウルに連れていってもらった,勝てた,だから自分らもああいう人間になりたい,と。この繰り返しでやってるだけなんです。

夢,期限を切ってはじめて実現

 「夢」,皆が夢を持ってますよね。甲子園で勝ちたいという夢があるんです。われわれのクラブは毎年,甲子園,学生チャンピオンを狙っています。夢というものは,期限を切ってはじめて実現できていくものです。期限なしで夢を追っていたら,永遠に夢で終わってしまいますから。そこを間違えてはいけない,というのは,伝えています。
 夢を現実にするのはどうしたらいいか。これは毎日毎日の繰り返しじゃないんです。そりゃ,さぼっていたらだめです。日本人はまじめでしょう。まじめだけど,好きでやってるはずなのに,やっぱりどこかに弱い自分が出てきて,邪魔をする。だからそのために仲間がいるんです。練習,ミーティング,勉強の時,やっぱり楽なほうにいく。そんな時は「わざときついほうにいけ」「それが自分のプラスになっていく」「逃げるなよ」と言っています。これは1人でできませんから。そのために仲間がいるんです。
 常に競争になっています。各ポジションに10人ぐらいいます。今年,自分はどこで活躍できるかを自分で考えたらいいんです。そこを狙うんだったら,真剣に何が足らないのかを考える。その手伝いはなんぼでもしますよ,教えますよ,と。結局フットボールは瞬間,瞬間で判断してるんです。そうやって失敗しないチームが一番勝つ確率が高いんです。

教えられる立場から教える立場に

 「聞く耳を持つこと」。せっかく下級生が質問してるのに「俺が言ったことを信用したらいいんだ」ではだめです。やる気をなくします。日本の場合,指導者がボロカス言って,口答えしたら怒られるんです。わかってもわからなくても,はい,はいと言わなければならない。小・中・高とそういうふうにやってしまうと「なんでやねん」という考える力がなくなるんです。うちは鉄拳制裁はありません。いくらでも下級生は意見を聞いてもらえるし,建設的な意見を述べられる。その時の一番よい方法でずっとやってきてるんです。だからずっとトップレベルでいられるんです。
 会社も一緒だと思います。いくらよい提案をしても,上からボロカスに言われると考える気がしませんよね。なぜだめなのかお互いに話をしたらいいんです。でないと成長できません。うちのクラブは4年間で教えられる立場から教える立場になっていく,ずっと経験できていくんです。あの時の教えられ方は嫌だったな,まずかったな。だから自分はどうやって教えたらいいのか,と考えるんです。

失敗の原因を理解する

 また,「失敗の原因を理解すること」が大事です。結局,勝った試合は,相手が自分の力を出せていない状態のことが多いのです。お互い力を出し切ってというのは,なかなか少ないのです。持っている力を出せないほうが負けます。そういうことが起こらないようにするのが練習です。
 結局,チームにどんなによい選手がいても,全員がその方向を向いていないとだめなんです。試合に出ている選手だけでは無理なんです。最初に言いましたように,後方支援もいっぱいいます。その人たちも試合に参加しています。試合メンバー以外に,練習台になってくれる人もいます。仮想敵のチームが完璧に真似してやってくれるんです。それが非常にプラスになる。その人たちのためにも,自分が試合でヘマできない,と。そうなった時に,ベンチの前でウォーッとチーム全員がまとまったら,これはすごいパワーになるんです。
 「俺は関係ない」「勝っても負けても,全然うれしくないし悔しくない」という人がいたらだめなんです。僕は「いらない人はいない,皆,なにかで役に立ってくれ」「今年は,来年はなにで役に立つか,なにで貢献するか,よく考えてくれ」といつも言っています。
(スライドとともに)