大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2019年10月18日(金)第4,735回 例会

不二製油のESG経営

清 水  洋 史 君(食品工業)

会 員 清 水  洋 史  (食品工業)

1953年長野県生まれ。’77年同志社大学法学部卒業,同年不二製油(株)入社。2013年代表取締役社長,’15年不二製油グループ本社(株)代表取締役社長,現在に至る。’16年6月当クラブ入会。

チョコレートで世界3位に

 まずは,台風19号で亡くなられた方々のご冥福を祈りたいと思います。私も千曲川の畔で生まれたのでよそ事ではありません。長野県でこういう災害はあまりないことで,とても心を痛めています。
 不二製油グループの紹介から入りたいと思います。1950年にできた会社で,もともとは伊藤忠商事の繊維部門傘下で蚕の繭から油を搾る会社でしたが,食品に変わっていきました。非常に遅れた会社だったので,サラダ油を搾れなかったのですが,今日あるのは,違うことをやってきたからです。
 2019年度の売上高は4,300億,利益は240億ぐらいを予定しています。売上高の40%は日本,60%ぐらいが海外です。欧州,アフリカ,中国,米国,東南アジアなど,日本以外に工場が23ぐらいあります。このうちチョコレートの工場は16ぐらいです。ことしは中期経営計画の3年目で,米国第3位のチョコレートメーカーを買収しました。不二製油は4位だったのですが,買収して3位です。スイスの会社が1位,2位は米国の会社,3位が日本の不二製油です。
 ESG(環境・社会・ガバナンス)の話に入ります。私が社長になったときに「グループ憲法」をつくりました。「おいしさと健康で世の中に貢献します」としましたが,他メーカーも同じことを言っておられるので,「バリュー(行動する上で持つべき価値観)」という項目をつくりました。不二製油のバリューは「人のために働く」です。
 「平成の30年間というのは日本の経済は伸びなかったね」と言われますが,日本の食品メーカーは極めて優秀でした。私が入社した当時,お菓子であれば欧州,スーパーであれば米国に典型がありましたが,10年もしないうちに,欧州のお菓子よりも日本のほうがおいしくなった。チョコレートも日本の製品がおいしくなった。それに加えて安全・安心という機能までつくり上げていったわけです。

困り事を解決

 不二製油は名もない,金もない,何にもない会社だったので,一生懸命考えて,技術者集団にしました。ほかの菓子メーカーは基礎研究をやる暇がなく,それを全部請け負った。これがうまくいきました。
 平成は伸びなかったということですが,不二製油は平成の最後の5年間で時価総額を3倍にしています。昭和のビジネスモデルを一番上手にやったので,一番最後のところでうまくいきましたが,今後はDisruptionが来ます。中期経営計画はDisruption,つまり断絶を越えなければいけないという意味で,「Take the leap(跳べ)」を目標としました。
 米国のチョコレートメーカーを買収して初めて世界の大きさに気づきました。チョコレートメーカーで世界一になるのはなかなか難しい。一番の会社はスイスのバリーカレボー社で,150万トンつくっています。不二製油は40万トンです。メジャー戦略は取り得ないので,マイナー戦略でいく。植物性の原料で,世界の困りごとを解決する会社になるのがいいのではと思いました。
 世界の困りごとの1つ目は人口増加です。2050年に97億人と言われますけれども,100億人近くになります。食糧が全く足りません。一番足りないのは牛乳です。人間は知恵を持っておりますので,「育児粉乳」をつくりました。育児粉乳がなくなれば大変なことが起こります。タンパク質の需要は現在の約2倍に増えると言われています。最も危機が早く来るのは水不足です。真水がないと牛は育ちませんから,肉の問題でもあります。

三方よし

 不二製油が大きくなった理由はメーカーの研究開発の下請けしをして「ウィンウィン」の関係を築いたからだと申し上げましたが,売り手と買い手だけでなく,世間もよい「ウィンウィンウィン」でなくてはダメだと気づきました。「三方よし」は伊藤忠兵衛さんが使った言葉ですが,SDGs(持続可能な開発目標)の原点は「三方よし」でないといけないのかなと思っています。
 2050年になればきっと車は自動運転の電気自動車になるはずです。トヨタ自動車は正月の宣伝で「モバイルカンパニーになります」と言いました。自動車産業は自動車産業でなくなるということでしょうか。食品会社の場合は,おいしさや健康によいというだけでなく他にも貢献することはできないのでしょうか。危機感があるから,未来を予測する際に目標となるような状態を想定し,現在を振り返って今何をすべきかを考える方法「バックキャスティング」を考えるわけです。
 不二製油はカカオやパーム,大豆などサステナビリティ上の問題があると言われている商品をたくさん持っています。その危機感がSDGsに向いたということかもしれません。
 カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP),いわゆるカーボンをどれだけ排出しているかというプロジェクトがありますけれども,森林部門では不二製油が日本で唯一「フォレストAリスト」に認定されています。責任あるパーム油調達ためにマレーシアの現地企業と「UNIFUJI社」を設立しました。
 きょうの例会の昼食の種明かしをしますと,シェフが大豆を使って頑張ってフランス料理のコースをつくってくれました。おいしいですよね。こういうものが世界の潮流としてどんどん,どんどん増えてくるように,いろんなものを提案していこうと思っています。
 大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。ここにもいろいろな提案をしていけるんじゃないかなと考えています。
(スライド・ビデオとともに)