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2017年4月7日(金)第4,621回 例会

最新の宇宙の話 パート2

常 深  博 氏

大阪大学 名誉教授 常 深  博 

東京大学理学部物理学科卒業,1978年大阪大学理学部助手,’90年大阪大学理学部助教授,’95年大阪大学理学部教授,2015年大阪大学理学部長,理学研究科長,’17年大阪大学名誉教授。専門はX線天文学,宇宙高温プラズマ,X線検出器開発。

 本日は,宇宙に知的生命体はどのくらい存在するのか。また,太陽系内外の惑星探索の話や文明はどのくらい続くのか,地球外に生命体はいるのかといった話をします。

地球型惑星は確実に存在

 太陽は銀河に属するごく普通の星で,空に輝いている星と全く同じです。銀河の中には1千億個もの星があり,それが全部太陽と同じです。中には地球みたいな惑星があって,そこに生命体がいてもおかしくないというのが,極めて素朴な発想です。

 宇宙生命体研究所所長のドレーク先生が,銀河系に我々と情報交換できる能力を持った文明はいくつぐらいあるか考えました。星の数に,ある係数を掛けたら,それが答えだと。じゃあ,この係数はいくつかということが考え方のストーリーです。

 簡単に説明すると,宇宙にはたくさんの星があり,そのうちのいくつかは惑星を持ち,その中には岩のある惑星が何個か存在するだろう。そこに生命体が誕生し,中には賢くなる生命体が出てきて,さらにコミュニケーションしたいと思う生命体が生じ,それが今でも生き長らえていれば,これが文明の個数になります。このドレークの式はSFの世界では超有名で,アインシュタインの相対性原理と同じぐらい重要な評価をされています。

 次に,惑星の数ですが,いくつか観測方法があり,今年3月末時点で観測された惑星の数は3,500個,もう少し観測するとほぼ確実に惑星だと言えるのが4,500個でした。惑星を持っている星が大体2,600個見つかっています。その中で,地球型の惑星,岩でできている惑星が360個くらいとされています。

 さて,こういうことが観測的に分かりましたので,普通の星は大抵惑星を持っていると言えます。その中で,確実に10%以上は地球みたいな惑星を持っているということは分かりました。

政治の力で文明存続を

 その次に問題になるのは「水」です。太陽に近過ぎると蒸発してしまうし,離れ過ぎると凍ってしまう。太陽系に当てはめてみると,水星・金星は熱過ぎてダメ。地球・火星は,H2Oが液体のまま存在することができるので,生命がいてもおかしくない。木星・土星は冷た過ぎるという考察になります。

 じゃあ,生命体は本当にいるのかということですが,ここから先は正直言って分かりません。悲観的な見方をすると,アミノ酸は宇宙にいっぱいありますが,それがRNA分子なんかつくるわけがないと医学部の先生はおっしゃいます。楽観的な話をすると,地球上では条件がそろうとアッという間に生物ができたので,とにかく条件さえそろえば生命体はできるという考えもあります。そうすると確率は0以上1以下,何も言ってないということになります。

 また,生命体が賢くなるかどうかです。これもやはり楽観的な見方でいうと,地球では10万年前にネアンデルタールとクロマニヨンがいて,ネアンデルタールは滅んでしまいましたが,生命体は必ず賢くなるだろうという勝手な解釈で確率は1だと言う人もいれば,悲観的に見て,地球上で賢くなっているのは二つかもしれないけども,ほとんどの蝶やトンボなどの生物は全く知的になっていないから,賢くなる確率はほぼ0だという考えもあります。最後は分からないということになりますが,まだ観測が足りないということです。

 ただ大事なことは,どのくらい文明が続くかということです。我々が宇宙と交信できるようになって100年たちました。太陽は50億年続きますから,100年以上50億年以下の寿命だということは分かります。じゃあ,知的生命体を滅ぼすのは何かということになります。一つは,全面核戦争です。これはぜひ止めてもらわないといけない。二つ目は,地球に小惑星が衝突するかもしれない。確かに恐竜が滅んでいますから,二の舞にならないようにしないといけない。三つ目は,地球大気の破壊的汚染。PM2.5や温暖化,CO2の増加で,このうちの二つは政治の力で止めてもらわないといけない。

 小惑星が地球に当たるかですが,10年ぐらい前に,小惑星が2029年に地球に衝突するという警報が出ました。その後,観測を精密に行ったところ,2029年にアポシスという200mぐらいの小惑星が地球の前をかすめるということが分かりました。このあと70年ぐらいたつとまた別の小惑星が来るのですが,それが衝突するかどうかは分かりません。

未知の生命体発見に期待

 現状のまとめを言いますと,知的生命体の個数は,悲観的な見方をすると,銀河系の中では我々だけということになる。楽観的な見方をすると,恒星200個につき一つの割合で何億個もある。

 それでは,地球外生命体は見つかるだろうか。現在,まだ太陽系の外の地球型惑星を直接調べられる技術はできていません。もう少しです。地球外生命体が,我々と同じぐらいのレベルで電波を出していたら,交信する技術は実はできています。

 それよりも,太陽系の中で地球以外に知的生命体はいないだろうけれども,多分まもなく我々が知らなかった生命体というのは見つかるだろうと思います。確実に私の生きている間にこういうことは起こります。最悪でも,火星を調べてみると,大昔の生命体の化石が出てくるというような状況にある,これが現在の宇宙の最先端の研究です。最新の技術革新が進んでいて,何が出てくるか楽しみだというのが現状です。

(スライドとともに)

 (2011年9月30日例会にて「パート1」)