大阪ロータリークラブ

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2004年7月9日(金)第4,030回 例会

ロータリーを考える

木 村  五 郎 君

会 員 木 村  五 郎

1922年生まれ。 '45年京都大学工学部繊維化学科卒業。'47年松本油脂製薬(株)入社,'60年同社社長,'92年会長, '03年相談役現在に至る。'92~ '99年八尾商工会議所会頭。
'66年当クラブ入会・'86年度会長。
マルチプル5PHF・米山功労者。
(精密化学工業)

 ロータリークラブとはどういうものなのでしょうか。「神様抜きのキリスト教の学習塾」と考えるのが一番理解しやすいと思います。なぜ神様抜きかと言うと世界に広めるには,あまり宗教的な色が濃いと邪魔になるからではないでしょうか。その結果,ロータリークラブは訳の分からないものになったような気がします。気の抜けたビールをちょうだいしているようなものです。そこで「神様ありのキリスト教」というX線でこのロータリークラブと四つのテストを照らしてみますと,骨組みがよく分かると思います。

 例会のプログラムは教会で行われている礼拝のプログラムとそっくりです。点鐘の鐘は教会の塔の上にあります大きな鐘のミニチュアで,礼拝の始まりを知らせる鐘。ロータリーソングは讃美歌,ニコニコ箱は,神様への感謝を示すために礼拝のとき回ってくる帽子。卓話は牧師さんの説教の代わりです。

 四つのテストに「Is it the truth?」があります。この truthは,「真実かどうか」と訳されていますが,そんな意味ではありません。新約聖書に書かれている意味でとらえる必要があると思います。イエス・キリストは,ヨハネの福音書で 「I am the truth 私は真理である」と申しています。イエスが真理なら,言われたことも,書きとめた新約聖書も真理であるということになります。truthの本当の意味が分からないと四つのテストの本当の意味も理解できません。

神の命令で隣人を愛せ

 キリスト教には2本の柱があります。「神を愛せよ」と「隣人を愛せよ」です。神の命令に従って隣人を愛することが基本的な教えの一つです。ロータリーでは「神を愛せよ」がなく「隣人を愛せよ」という柱だけが残されています。

 「隣人」と「愛する」の意味ですが,四つのテストに「concerned」という言葉があります。「関わりのある人」という意味で,これが隣人の一つです。イエスはルカの福音書で,「隣人」に関して「よきサマリヤ人の例え話」という有名な話をしています。関わりのなかった人にも自分から近づき,隣人となって親切を尽くせと教えています。

 新約聖書は最初ギリシャ語で書かれました。ギリシャ語では愛という言葉は,エロス(男女の愛),ストルゲー(親子の愛),フィリア(友人の愛)それからアガペー(神の愛)と4つあります。最初の3つは自然にわき出てくる愛。これに対しアガペーは努力を必要とする極めて意志的な愛で,ときには命さえも犠牲にする大変強烈な愛です。

黄金律を守っているか

 さて四つのテストを考えたいと思います。 最初の「Is it the truth?」のtruthは,新約聖書にあります。マタイの福音書に「ゴールデンルール」(黄金律)という言葉があります。Is it the truth? は,ゴールデンルールに従っているかということになります。

 イギリスには「ジェントルマンシップ」(紳士道)という言葉があります。この本質は「人に迷惑をかけないこと」だそうです。「セールスマンシップ」という言葉もあります。「相手の人に大きな関心を持って,あらゆる面で助けようとする精神を発揮すること」です。次に「Is it fair to all concerned?」(皆に公正か)です。この fairという言葉は「公平とか公正」という意味ですが,もともとは美しいという意味があります。ルールを守ることが fair(美しいこと)で,守らないことが unfair(汚いこと)です。従って Is it fair? は,美しいことか,ルールを守っているかどうかということです。これがゴールデンルールです。この2番目の文章は「すべての関わりにある人々にゴールデンルールを守っているか」ということになります。

 3番目は「Will it build good will and better friendships?」( 好意と友情を深めるか)です。good will(善意)の「善」は,道徳の理想で,ゴールデンルールになります。「友情」は,聖書の中で26回出てきます。3つの人間の愛の中では,一番アガペーに近い。従いまして3番目は「アガペーに裏打ちされた friendship でゴールデンルールを実行しているかどうか」。こうなるかと思います。

 4番目の「Will it be beneficial to all concerned?」(皆のためになるか)ですが,beneficialは,benefit(利益)という名詞の形容詞です。benefitのbeneとは,善悪の善でして,fitは行うという意味。だから「善を行った結果,得られる利益 が benefit」です。この善はゴールデンルールと考えられ「すべての関わりがある人々にゴールデンルールによって心の喜びを与えているかどうか」という設問になります。

アガペーが奉仕の原点

 このように四つのテストには,ゴールデンルールが隠されています。「人からして欲しいと思うことを人にもせよ」というゴールデンルール。「人からされて嫌なことは人にもするな」というジェントルマンシップ。そして「相手の人に大きな関心を持ってあらゆる面で人を助けようとする精神を発揮しよう」というセールスマンシップ。これがロータリーの奉仕の理想で,周りの人々を大切にしようと思うアガペーの愛こそが,ロータリーの「奉仕の心」の原点です。「ロータリーの正体見たり黄金律」。私はロータリーをこのように考えている次第です。