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2021年4月23日(金)第4,787回 例会

スコットランドの音楽と生活

松 岡  莉 子 氏

ケルティック/
アイリッシュハープ奏者
松 岡  莉 子 

英国王立スコットランド音楽院,スコットランド音楽学科(スコティッシュハープ科)の修士課程を日本人で初めて修了。音楽院より奨学金を授与される。2018年,英国スコットランドで開かれたケルティックハープのコンクール「The Princess Margaret of the Isles Memorial Prize for Senior Clàrsach」優勝。’19年にはスコットランドで毎年行われるケルト音楽の祭典「ケルティックコネクション」や世界最大規模のハープの祭典「エディンバラハープフェスティバル」出演。’20年テレビ朝日「題名のない音楽会」出演,’21年関西フィルハーモニー管弦楽団とケルティックハープ協奏曲の共演予定等活動の幅を広げている。’20年3月,ファーストアルバム「New Beginnings」をリリース。

 3歳の頃にピアノを始め,小学校時代はずっとピアノを弾いていた記憶があります。ただ,小学校時代はピアニストとしてやっていく覚悟,自信がまだなかったため,6年生できっぱりやめてしまいました。
 中学校は吹奏楽部が強いことで有名な豊中市立第十一中学校に進み,クラリネットを始めました。それでプロにというところまではいきませんでしたが,それでも何とかして音楽家という道を選びたいと思って見つけたのがハープでした。
 次に,私の専門分野のケルト音楽とは何かというところをお話しさせていただきたいと思います。歌手のエンヤはアイルランドの伝統音楽の影響を受けていると言われています。そして「蛍の光」。実はスコットランドの伝統音楽として知られていて,年末に皆で歌うのが恒例となっている曲です。

独自の音楽文化, 今も発展

 ケルト文化とは何かと思われた方もいらっしゃるかもしれません。スコットランドやアイルランドではゲール語と呼ぶ独自の言葉が今も残っています。そしてイギリスでは,ウェールズ,コーンウォールという地域もケルト文化圏です。フランスのブルターニュやスペインのガリシアでも,独自の音楽文化が今も発展しています。
 スコットランド音楽に使われる楽器の一例をご紹介します。まずは「フィドル」。バイオリンと全く同じ楽器ですけれども,伝統音楽を演奏する際にだけフィドルという呼び名が使われています。次が「ホイッスル」です。こちらは日本でいうリコーダーのような形で,学校教育にも取り入れられています。そして「ハープ」,「アコーディオン」,そして「バグパイプ」があります。
 実際に演奏の様子を見てみましょう。パブに行くと,知らない人たちが集まって,様々な楽器を持ち寄って伝統音楽を演奏する光景が見られます。演奏していると急にダンスを踊る方が出てくることもよくありました。
 ここからは,なぜ私がケルティックハープ,ケルト音楽をすることになったのかというお話をさせていただければと思います。私は関西大学に進み,心理学を勉強していたのですが,それでも毎日,インターネットのサイトで何か有益な情報は得られないかと探していました。そんな時,インターナショナルアイリッシュハープフェスティバルというサイトを見つけました。
 大学3年生の頃に参加し,衝撃を受けました。アイルランド国内,そして,欧州,米国など世界中から100人ぐらいが集まり,老若男女を問わず,皆で音楽を楽しんでいました。そこから没頭していきます。

仕事を辞め,単身スコットランドへ

 その後,就職し,音楽活動と両立しながら,留学準備を始めました。ずっとスコットランド留学を目標にしていたのですけれども,日本人,アジア人としてこの分野を開拓された方がなかなかいらっしゃらなくて,全くゼロの状態から自分で道を切り開かなければいけない状況でした。覚悟を決めて仕事を辞め,とりあえず現地に行けば何とかなるのではないかと思い,スコットランドへ渡りました。
 最初は全くあてがなく,一人で何とかするしかないということで,路上ライブから始めました。パブに通って地元の人に教えていただいたり,路上で演奏していると音大生に声をかけていただいたりして,少しずつ情報を集めました。毎日,有名なハープ奏者の方を調べてメールを送り,「教えてほしい」,「スコットランドで勉強したい」という思いを伝えていました。
 念願が叶い,音楽大学の先生と出会い,オーディションを受け,無事にスコットランドで音楽院に入ることができました。毎日音楽ができる幸せ,そして同じ音楽,同じハープが好きな仲間と過ごす時間というのがとても貴重でした。
 現地で最後の年である2018年。初めてハープのコンクールが行われるという情報を聞き,とりあえず挑戦してみようと応募しました。ファイナリスト4人のうち,私だけが学生で,それ以外はスコットランド人のプロの演奏家でした。この舞台に現地の方と一緒に立てるだけで幸せだなという思いで臨んだのですが,奇跡的に優勝させていただきました。私のような日本人でも,音楽性を認めてもらえたということがすごく大きな転機となりました。

日本人としてつくる音楽に目覚める

 ケルティックコネクションという様々なバックグラウンドを持った方々と一緒に音楽をつくるプロジェクトにも参加しました。私はずっとスコットランド音楽,ケルト音楽を勉強していたのですけれども,その時,日本人としてつくる音楽というものを考え始めました。そして,留学の最後の集大成として,クラウドファンディングで資金を集め,日本の音楽,ジャズ,クラッシック,そしてスコットランドの伝統音楽を取り入れたCDを仲間とともにつくりました。
 私は今まだいろいろと挑戦している段階ですが,この8月には藤岡幸夫さん(関西フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者・当クラブ会員)との共演が待っています。もしよろしければぜひお越しいただければうれしく思います。
(スライドとともに)