大阪ロータリークラブ

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2019年3月15日(金)第4,708回 例会

大阪ミナミの挑戦
時代を先取りしたミナミの努力 モノからコトへ

千 田  忠 司 氏(大阪難波RC 会員)

千田硝子食器(株)
代表取締役
千 田  忠 司  (大阪難波RC 会員)

和歌山県岩出市出身。近畿大学理工学部卒業後,1973年和歌山銀行へ入行,5年間勤務後’78年に千田硝子食器(株)へ入社,’94年同社代表取締役に就任,現在に至る。千日前道具屋筋商店街振興組合理事長,大阪市中央区商店会連合会会長,大阪市商店会総連盟理事長などに就任。

 私は商店街活動をして42年。「集客活性化」に向けて活動した商店街の人間としては一番古い方ではないかと思います。訪日外国人に注目した理由は「自分たちの街は自分たちで守る」ことに尽きます。街の皆さんには「街の資産価値を下げないようにしよう」と話し,人を集めるのが大切と今日までイベントを中心にやってきました。

取引環境の変化に商店街が連携

 千日前道具屋筋は1882(明治15)年から続く商店街です。飲食に関する道具の専門店が集まる街は,全国でも東京のかっぱ橋と大阪の道具屋筋の2つ。入社した1978年頃は,名古屋を境に東はかっぱ橋,西は道具屋筋が問屋業で繁盛していました。「世の中おかしいな」と感じ始めたのはバブル終焉の頃。営業マンとして訪問していた各企業の取引がメーカー直結に変わってきた。それで道具屋筋もこれまでのダース売りやカートン売りを1個単位に置き換えて,一般客に安く丈夫なものを提供し始めた。そんな中で起こったのが’95年の阪神淡路大震災でした。その前年,関空が開港した年に私は社長になり,同時に千日前道具屋筋の会長となっていました。被災地の取引先が翌日からでも営業できるようにと職人がボランティアで回ったけれども,実を結ばなかった。それで,一単組の商店街で取引先を確保するのは限界と考え、人脈や見識を広げて取引先の開拓につなげたいと難波RCに入りました。ボランティア活動などを通して、人間としても育てていただいたと思います。
 2000年頃の大阪は「汚い街」「がめつい街」「暴力団の街」とたたかれていたので,戎橋筋,黒門市場,日本橋の商店街に声を掛けて連携することにしました。また,天満橋筋商店街とも連携を始めました。商店街は街にはなくてはならぬものです。単に商売をしているだけではない。固定資産税や事業税を払い,街の安心・安全にも寄与しています。夜はLEDで明るくし,防犯カメラも設置。今また窃盗が増えて,警察官が毎日のように商店街に来ています。見回りなども強化したいと思っています。

次世代育成と「内需」から「外需」へ

 お客様を育てる意味で企画した「修学旅行生体験学習」では,全国の中学生を対象に1日7時間のコースで,お金の大切さや商店街ならではの「対面販売」を知っていただこうとしました。今の若い人たちはスマホばかりしていますが,外国人観光客には「モノからコトへ」体験が受けています。モノだけを提供するのではなく,その過程,使い方や知識,使う楽しさまで覚えて帰っていただくのが商店街ですよと訴えました。
 若い人の力を信じて,中小企業の集まる大阪で若手起業家を育てたいと,我々商店街のネットワークや人脈を若い方々に提供しています。年間約100社が起業し,この10年間で10店舗,20店舗のチェーン展開で飲食店をやっている方もたくさん出てきました。
 様々に「内需拡大」を目指してきましたが,’07年を機に「外需」へ目を向け,海外の人に「コト」を紹介する中で銀聯(ぎんれん)カードを導入しました。ビザの緩和や円安,LCC導入などを背景に,’10年に商工会議所に作っていただいた「多言語指差しシート」が大きな呼び込みの力となって,アジアのお客様が増えました。食で売り出した黒門市場は,今では朝8時から夕方4時ぐらいまで,テイクアウトの人で通れないほど多くの人が集まる商店街になりました。各所と手を組んで打ち出した’15年の「道頓堀開削400年」が奏功し,関西への訪日外国人客数は右肩上がりに推移しています。
 ’17年の訪日外国人は2,869万人(うち関西1,111万人),’18年は3,119万人(うち関西1,200万人)。大阪北部地震や豪雨や猛暑,9月には台風21号や24号がありながら昨年は増えた。恐らく3年後には2,500万人ぐらいまで伸びるのではないかと期待しています。

目標は商都大阪の復権とアジアのハブ

 私は「まちづくり観光プラットフォーム」の13の活動体系(映像制作・SNS配信,商品開発,Wi-Fi環境整備,ムスリムフレンドリー,ガイドブックと電子マップ・ナビ,地域イベント,にぎわい地域連携,TAX FREE展開,クーポン・ポイント,キャッシュレス・カードレス,留学生タイアップ,通訳・翻訳,国際人材活用支援)全てに携わっています。
 企業は優秀な人材を得て国際化に向かわないと生き残れません。阪大の留学生を関西企業の海外進出のパートナーにしようと動いて,ようやく約700名の就労ビザ登録者を確保しました。今年は何とかたくさんの留学生を関西の企業にご提供できたらと思っています。増加中のイスラム系アジア人の訪日客は,数年先にはさらに増えるでしょう。「ムスリムフレンドリー」に取り組めば「ハラール」の資格がなくても受け入れられるということも飲食業界の人に知っていただきたい。
 大阪では6月28・29日,G20サミットが開かれ,37の国と国際機関の方々が来られます。宿泊はミナミとキタとで打ち出し,ご婦人方にも「コト」という形でいろいろな体験を用意して,大阪の文化,商店街の良さをしっかりと紹介したいと思います。9月にはラグビーワールドカップ,来年には東京オリンピック・パラリンピック,その次は「ワールドマスターズゲームズ2021関西」と世界の3大スポーツがやって来ます。その先には’25年の「大阪・関西万博」。そして関西の起爆剤になると考えている「統合型リゾート(IR)」。私は「これは仕切らせていただく」とはっきり宣言し,関西企業しか入れない高いハードルを設けて,5月28日に飲食系の資材調達に関する1回目の打ち合わせをする予定です。
 ぜひとも皆さんと,商都大阪の復権とともにアジアのハブになるように頑張っていきたいと思います。
(スライドとともに)