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2018年12月7日(金)第4,696回 例会

国難!少子高齢化と大学改革

森 島  朋 三 氏

学校法人 立命館
理事長
森 島  朋 三 

1986年に立命館大学を卒業後,京都・大学センター(現在の財団法人大学コンソーシアム京都)を経て学校法人立命館に入職。2004年に立命館小学校設置準備事務室事務長としてプロジェクトの中心を担う。’13年,専務理事に就任し,立命館大学大阪いばらきキャンパスの開設を牽引。’17年7月,理事長に就任。

 立命館は京都の大学として発展してきましたが,2015年春,大阪府茨木市に新キャンパスを開設しました。そのため今では“立命館は大阪の大学”とも言うことができます。現在受験者の約4割は関西出身です。このように,立命館は関西・大阪に支えられているという背景もあり,今日はこちらでお話をさせていただくことを大変光栄に思っております。

大変厳しい日本の大学近未来図

 1990年代の初頭,18歳人口は205万人程度と言われていました。ところが,今年は何人と思われますか――約118万人です。この2,30年ほどの間にそれぐらい少子化が進みました。文科省が今2040年の大学の将来図を作ろうと議論していますが,’40年の18歳人口は何人になると思われますか――約80万人ですよ。これは本当に深刻な数字で,大学経営以前に,縮小日本という状況だと思っています。
 また,「生産年齢人口」も1970年の7,100万人から2040年には5,900万人ほどになるという計算です。今後AIや外国人が労働力に加わることも考えれば,単純に生産の質や量,規模が小さくなっていくとは思いませんが,少子化は大変な問題ですから,困難を超えて「国難」であると私は考えています。
 さらに「地域格差」の問題もあります。’40〜’50年,人口増が想定されているのは,東京都23区内の一部と名古屋市の一部だけで,あとは全て減少していきます。ですから,大学をはじめ中学校・高校も経営は厳しくなり,何といっても日本の国力が将来どうなってしまうのかと危惧されているわけです。
 皆さん,世界大学ランキングをご存じでしょうか。有名なのは,イギリスの「THE世界大学ランキング」と「QS世界大学ランキング」です。前者は研究の質が問われる評価で,後者は研究に加えて企業が大学をどう見ているかという評価も加わり,教育の質が評価されます。日本の大学は,どちらでもここ5年ぐらいの間に順位が低下していますが,それは要するに日本の大学はグローバルに通用する分野が徐々に減少しているということです。
 今地方の国立大学がどんどん定員割れしていますが,統合することで対処しています。さらに私立大学では,全国の4割は定員割れしています。現在ですらこのような状況で,今後ずっと18歳人口は減少していきますから,私立,国公立ともに大学の現状は大変厳しい状況であります。

プラットホームを変えてグローバル化

 これからの大学改革のポイントは「グローバルに通用するかどうか」。ここに絞られていくと思っています。これまでグローバル化とは,留学生を受け入れ,学生を留学に送り出すことでした。欧米では,いろいろな国から留学生が来ていて一緒に学ぶというようなことは当たり前ですよね。ところが日本の大学では学生の30%は留学生ですよという大学はほぼありません。東大や京大といった大規模の国立大学でも,この数字は25%にすら届いていません。日本の大学はまだまだグローバルに通用していないのです。
 しかし,’00年に我々が設立したアジア太平洋大学(APU)では,留学生が約50%です。留学生の国の数は88カ国で,過去の学生も合わせると127カ国です。一方,立命館大学は,留学生の受け入れ数は20%を切っています。この数字を高めるために考えたのは外国語で授業をすること,それも科目単位ではなく,学科や学部そのものを卒業できるような仕組みです。そこで’19年,大阪いばらきキャンパスに新設するグローバル教養学部には,オーストラリア国立大学と共同の学士課程,要するに卒業するとオーストラリア国立大学の学位ももらえるという学部をつくります。このように海外,特に欧米に通じるように大学教育のプラットホームを変えていくことが次の課題になると思います。
 また,海外で評価される大学になるためには,研究における産学連携の高度化が必要です。国による大学運営費は年々減っていますが,科学研究費は増えていますから,そこに希望はあるわけです。海外で通用する大学とは,研究分野で通用する,つまり外国での研究や共同研究,あるいは研究内容を論文として評価されるということが必要ですが,そのための研究が前提なんです。立命館でいうと今の倍ほどの予算を目指さないといけません。

海外の大学との行き来で少子化に対処

 立命館は現在,関西で3キャンパス,3校の中学校・高校,そして小学校もあり,総学生数約5万人の展開をしています。今後は’25年の大阪万博に何か協力するなど,関西・大阪を拠点にして,より振興を図っていきたいと考えています。
 ただ,日本は少子高齢社会ですので,海外での展開も考えねばなりません。海外の大学に通用するプラットホームをつくれば,現地でも展開できる。留学へ送り出すとか,留学生を迎えるということを超えて,海外の大学と行き来できるという環境を’20年代につくって,’30年代,’40年代に入れば海外にも展開する。そうなれば,恐らく海外からも大学が来るだろう。そうすることによって初めて,少子化が国難ではなくて,日本がさらに発展してく上でのキーになっていくということです。
 立命館として経営戦略は様々ありますが,国難としての少子化に対し,今後質の高い労働力をつくっていくために大学がどう発展していかなければならないか,というところをポイントにお話をさせていただきました。ありがとうございました。