大阪ロータリークラブ

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2018年10月26日(金)第4,692回 例会

大阪のオーケストラ事情

水 野  武 夫 君(音楽事業)

会 員 水 野  武 夫  (音楽事業)

1941年生まれ。’64年立命館大学法学部卒業,’63年に国家公務員上級職甲種合格,’64年から大蔵事務官として国税庁徴収課に勤務。’68年に弁護士登録,’71年水野法律事務所を設立。’98年共栄法律事務所を共同設立。2001年大阪弁護士会会長,近畿弁護士会連合会理事長,日本弁護士連合会副会長,’09年法務省法制審議会委員を経て,’09年(財)大阪府文化振興財団(大阪センチュリー交響楽団)理事長に就任。’11年(公)日本センチュリー交響楽団に改名・理事長。当クラブ入会’10年10月。

 今日はオーケストラの話をしますが,私は全くの素人です。音楽のプロの方から見れば「お前何を言ってんだ」ということになるかと思い,若干躊躇しましたが,大阪ロータリークラブの会員にはプロは数人しかいないので,それならいいかと思い直し,この卓話をお引き受けしました。

大阪で最後に誕生したプロオーケストラ

 まずは日本のプロフェッショナルオーケストラ誕生の歴史と経過についてお話しします。プロオーケストラが加盟する日本オーケストラ連盟には,現在25団体が正会員として加盟しています。関東に11,関西は大阪に4つと京都・兵庫に1つずつ,そして名古屋に2つ。残りの6つは札幌から九州までの各地に点在しています。このように多数のオーケストラが日本中で活動していますが,わずか100年ぐらい前までは常設の楽団は存在せず,東京以外のオーケストラは全て戦後に誕生しました。
 大阪で最初に誕生したオーケストラは,戦後間もない1947年に朝比奈隆先生を中心に作られた関西交響楽団です。これが’60年に大阪フィルハーモニー交響楽団に名前を変え,現在に至ります。朝比奈隆先生は創立から2001年まで,実に55年間にわたって音楽監督,常任指揮者を務めました。このように同じ指揮者とオーケストラとの関係が半世紀を超えて続いたというのは,世界でも例を見ないことです。
 大フィル誕生から23年後の1970年,関西フィルハーモニー管弦楽団の前身となるヴィエール室内合奏団が誕生。’80年には大阪シンフォニカー(現大阪交響楽団)が結成されました。
 そして’89年に登場したのが,我がセンチュリー交響楽団です。当時はまさにバブルの絶頂期。大阪府も資金が潤沢にあり,100億円単位の財団法人が3つも誕生しました。その一つが,文化振興を目的とした大阪府文化振興財団でした。毎年府から4億円の補助金をもらう自治体直営のオーケストラとして大阪センチュリー交響楽団が誕生。2011年に府から独立し,日本センチュリー交響楽団に改名。創立30周年を迎えた現在は,約50名の演奏者が在籍し,飯森範親さんが首席指揮者を務めています。

社会貢献として教育や福祉にも注力

 日本センチュリー交響楽団では,楽団のメイン事業である定期演奏会をザ・シンフォニーホール,いずみホール,さらには豊中市立文化芸術センターでも行っています。こういった演奏会では,古典派からロマン派,現代作品まで幅広いレパートリーを披露しています。
 演奏を追求するだけでなく,社会貢献として教育プログラムにも力を入れています。その一つとして,小学生を対象とする体感型コンサート「タッチ・ジ・オーケストラ」です。楽団員に教わりながら,子どもたちは色々な楽器を熱心に演奏します。私たちも子どもたちの中から,将来プロの音楽家が育つのではないかと思っています。また,小さい子どもたちに目を向けて,毎年8月の最終土・日曜日には服部緑地野外音楽堂で「星空ファミリーコンサート」を開催しています。野外ですので,オーケストラの演奏会には行けないような小さなお子さんでも大丈夫。子どもたちが初めて生のオーケストラ演奏に触れる機会になっています。
 さらに,新たな取り組みとして,地元の高齢者福祉施設の協力のもと,イギリスの国際文化交流機関「ブリティッシュ・カウンシル」とともに,介護施設での高齢者や認知症の人を対象にした音楽ワークショップを展開しています。
 また,JTBをはじめとする3社とともに,豊中市立文化芸術センターの指定管理事業に携わっています。オーケストラが公共ホールの指定管理事業に本格的に取り組むのは全国でも珍しい試みです。

オーケストラが抱える課題解決に向けて

 大阪の4オケが抱える共通の課題の一つは,クラシックファンが年々減少しているということです。演奏会に来るのは年配の人が多く,若い人が非常に少ないのが悩みの種であります。さらに小中学校での芸術鑑賞の予算が削られ,子どもたちがオーケストラの生演奏に触れる機会が激減しています。また,独自の収入源である依頼公演もずいぶん減り,厳しい財政状況の中で頑張っているのが実情です。
 そこで大阪の4オケが協働していこうと,1回の演奏会で4オケが順に演奏する「大阪4大オーケストラの響演」など,色々な事業を行っています。
 最後に,センチュリーの現状についてお話しします。私は’09年に理事長を引き受け,府からの独立後は,財団の基本財産を取り崩しながら運営を続けてきました。就任当初は5年でなくなるだろうといわれていた運営資金も,企業努力のおかげで,なんとか10年はもちました。しかし,このままでは約2年後に楽団の資金は枯渇し,解散も考えられます。
 設立から30年間,大阪府民の税金をつぎ込み素晴らしい楽団に育ちました。センチュリーは府民の共有財産です。30年間の税金の投入がムダにならないようにと必死に頑張っています。皆様方には,そこのところをご理解いただき,格別のご支援を賜りたいというのが,今日の主題です。
 最後に我が団のエースである北口大輔さんのチェロ演奏をお聴きいただきたいと思います。
(スライドとともに)

♪J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番より
(日本センチュリー交響楽団 首席チェロ奏者 北口大輔氏 演奏)