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2018年6月1日(金)第4,672回 例会

私が歩んだテニス人生と伝統のウィンブルドン

森 上  亜希子 氏

元女子プロテニス選手 森 上  亜希子

1980年生まれ。14歳以下テニス世界ランキング4位,17歳の時ウィンブルドンジュニアベスト4位,2002年アジア選手権女子シングルス優勝,’04年アテネオリンピック女子ダブルスベスト16,’07年WTAツアープラハオープン女子シングルス優勝。現在は日本オリンピック委員会強化スタッフ。NHK全豪,全英ウィンブルドンの解説に従事。

 7歳でテニスを始め,最初のコーチとともに小学校6年生まで一緒に戦いました。6年生の時,全国小学生大会で優勝し,コーチから「僕の見られる範疇を超えたので,新しいコーチを探そう」と言ってくれました。たどり着いたのが神戸・長田のテニスクラブで,米国人のコーチに出会いました。

渡米, そしてプロへ

 英語の勉強をし,少しずつヒアリングができ,さあこれからというときに阪神淡路大震災がありました。神戸でテニスをすることが難しく,コーチが米国に戻ると言ったのが中学3年生の時。私も米国に行くと言ったのですが,父親が猛反対。母が「やりたいことがあるんだったら,行けばいい」と父を説得してくれました。米国はテニスの環境は整っていました。テニスクラブと学校が近く,また,テニスクラブとジムも近く時間のロスが少なかったんですね。日本では移動の時間が無駄になってしまうんですけれども。

 18歳で,ミキハウスが所属のスポンサーに決まりましたのでプロに転向しました。18歳まで国内ではあまり負けた記憶がないんですね。ただ,転向後,勝てなくてプロの洗礼を浴びましたが,スポンサーのお陰でツアーを回ることができました。1年のうち3分の2は海外生活。コーチやトレーナーを雇い給料を支払い,賞金の20%をコーチに渡しました。ほか,交通費,ホテル代などが必要で,年2,000万円はかかっていたと思います。最初の2年半は苦しみましたが,成績が良くなりグランドスラムに出場できるようになりました。また,WTAという女子の世界ツアーに出られるようになると楽になるんですね。テニスは下位の大会に出ているうちは赤字。優勝しても約15万円しか入ってこないことも。上位の大会では賞金がいいですし,大会側がホテルも選手のために用意をしてくれます。

大金が動くプロの世界

 トップ20になりますと,出場しなきゃいけない大会が決まっています。選手を宣伝に使うことでチケットが売れます。選手は出場により金を手に入れますが,欠場すれば罰金を払うことになります。選手によっては何千万円です。チケットを買ってくださったお客様のため,罰則も強化されています。トップ選手のフェデラーは年間賞金だけで11,12億円ぐらいは稼ぎ,スポンサーなどを入れますと年100億円前後と言われています。

 テニスは4大大会があり,全豪はメルボルン,全仏はパリ,ウィンブルドン。そして全米はニューヨークで大会があります。4大大会は2週間のトーナメントですけれども,2週間の興行で大リーグのニューヨークヤンキースの1年の興行を追い越してしまうぐらいの収入が上がってくるんですね。センターコートの集客は約3万人。一番テレビに映るボックス席は大体8席ずつがセットで,2週間で1,000万から1,500万円するんですが,米国の会社が真っ先にそこのチケットを買います。大金が動く中でトップに行けるというのはほんのわずか。大坂なおみ選手,錦織圭選手が活躍していますが,あそこまでやってくれる選手は,今後もそんなには多くはないんじゃないかなと感じています。

華麗なるウィンブルドン

 伝統のウィンブルドンの話です。次の写真,私,画面奥側にいます。ジェニファー・カプリアティという当時世界ランキング3位の選手と夢のセンターコートで戦った写真ですが,テレビで見たところに自分がいるんだっていう思いと,意外と大きくないんだなと思ったことを覚えています。会場はオールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブで,民間のテニスクラブ。主催者推薦枠,試合に出てほしい選手にワイルドカードというのを与えるんですけれども,クラブ会員の承認を受けなければ出場できません。優勝トロフィーもクラブの会長が直接優勝者に手渡す。それもウィンブルドンのみです。

 ビーナス・ウィリアムズってご存知でしょうか。私はあと1ゲーム取ったら勝利というところで逆転負けをし,勝っていたら人生も変わったのにと思いますが,そのままビーナス・ウィリアムズが優勝してしまいました。このウィンブルドンの大会で。私は両方両手打ちなんですが,決勝で戦ったフランスの選手も両方両手打ちだったんですね。ですから,彼女はスピーチで「3回戦で亜希子と戦ってよかったわ」って言ったんです。喜んでいいのか,悔しいと思うべきなのか複雑な気持ちでした。

 センターコートは1年間,このウィンブルドンのためだけに手をかけられたコートです。きれいな状態で1年通し,開幕を待ちます。最初はふかふかの絨毯の上でプレーしているかのようなのですが,日がたつとはげていくんです。決勝になると,ベースライン付近は土状態。こちらは,センターコートに入ってくる選手が通る階段です。ここを通って私も入場しましたが,全部絨毯になっています。こういった作りもウィンブルドンしかありません。これがセンターコートで,花が下側に飾ってあるところがありますが,優勝した選手が観客に向けてトロフィーを掲げるところです。選手はこの場所に立ちたいという思いで2週間,戦っています。

 昨年の写真ですが,ゴルフの松山英樹選手です。松山選手は日本人として初めてロイヤルボックスに招待されました。ロイヤルボックスにはイギリス王室や本当に著名な方々がいらっしゃるんですが,ローンクラブから招待を受けなければ入ることのできない場所です。ウィンブルドンは選手誰もが優勝したいと思っている場所。私もNHKの解説で現地に行きますが,そちらのほうも期待していただきたいと思います。

(スライドとともに)