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2018年4月6日(金)第4,666回 例会

イタリアレストランにおけるワインと料理の
楽しみ方

鈴 木  浩 治 氏

「ラ・ルッチョラ」
シェフ
鈴 木  浩 治

1974年12月生まれ,滋賀県出身。子供の頃から手作業や何かをつくる事が好きだった。学生の頃にレストランでアルバイトをし,それがきっかけで接客の楽しさと「美味しいものは人を幸せにする」ということを実感。その後,スイスやドイツ,イタリアなどで修行。大阪のレストラン数軒で経験を重ね,シェフとして現在に至る。

 きょうは,料理とワインの選び方,もしくはレストランの選び方をお伝えできたらと思います。初めてイタリア料理店に行かれて赤ワインをオーダーする際,「イタリアワインは全くわからないからお任せで」と丸投げするお客さまも多数いらっしゃいます。そんな方に「あの人知っているね」と周囲から言われるように,ワインと料理をオーダーしていただける技をお伝えできたらと思っています。

 イタリア料理店はバリエーションが豊かで,トスカーナ料理や北イタリア料理,魚介を使ったナポリ料理など地方性をうたうお店も増えました。一方,地域性,地方性に全く関係なく,個人の独創性を重視する料理人も出てきました。お任せコース一本のイタリア料理店はアイデンティティーを料理に反映させています。そのお店を食べにいくというつもりで行っていただけると,トラブルなくいけます。一方,オールマイティーに柔軟な対応をしてくれるレストランは各店の良さ,強みを知っておくと,お店選びに困らないのではと思います。部下の方がお誕生日とか,結婚祝いに店を探していた時,「こういう店ならどうかな」と言えたら,かなりバリエーションに長けた方なんだと思われるでしょう。

海外修行,帰国後も魚,肉を勉強

 私はちょうど高校を卒業する時に,がんが進んだ叔母の喫茶店を継ごうと思いました。小学生の時から本当に料理が好きだったのです。しかし,叔母は奇跡的に復活したため,フランス料理を勉強したいと思い,ドイツやスイスで修行後,イタリア料理に転向しました。

 修行の最終仕上げとして大阪の中央市場でも働きました。魚には「腰」という部分があり,魚を立てて上から見ると,背びれが終わったぐらいのお腹と背中の間のちょっと短くなっている部分が太っていると,よく脂が乗っていて,高値で取引されることにもなります。また,魚は産卵期の前に栄養を蓄えるためにたっぷり餌を捕食して太ったものが旬になります。一度やせますが,半年後ぐらいにまたいい形に戻ります。これを「裏旬」と呼んでいます。春おいしい魚が秋口においしかったり,冬おいしい魚は意外と夏もおいしいのです。こうして学び,独立して自分で店を開いた後は魚介のナポリ料理という形でうたっています。

 それでもお肉も知らなくてはと考え,滋賀県の近江牛を屠殺場から買って,一次加工する店へ勉強に行きました。今は近江牛をメインに使っています。

料理の素材と産地を合わせる

 ワイン選びですが,トスカーナ料理のレストランに行くことになれば,「やっぱりトスカーナ料理にはトスカーナのワインだよね」と一言言ってもらえれば,それだけでレストラン側は「この方はよくご存じだな」と考えます。「これだったら酸味があります,これだったら渋みがあります」という形でお勧めできるのです。

 シャンパンも含めたスパークリングには甲殻類とかバター,クリームを使ったものが非常に合います。よく「キャビアとシャンパンは合う」と言われますが,魚卵のヨード香はシャンパンの白ワインの部分を刺激して非常にモアモアとします。ここにキャビアとバター,もしくはクリームと小麦を使ったものを足すことによって,シャンパンとはすごく合います。シャンパンの香りは「ブリオッシュ香」,つまりバターをたくさん使って焼いたときのパンの香りに近いものがあるので,香りが近いものを合わせると,非常にまとまってマッチングいたします。

 白ワインですが,「ナポリは海に近い。魚介の料理には海に近い産地のワインが合うよね」と言えば,「さすがだな」となります。料理の素材の産地とワインの産地を合わせることによって,マッチングに外れが出ません。シャルドネなど標高の高いところでできた白ワインは,山で採れるキノコや野菜,鳥や仔牛の肉と非常に合います。

 赤ワインですが,フランス料理店で基本的に茶色いソースがある場合は,ある程度オールマイティーに合います。牛肉のグリルは,ほとんどトスカーナ料理ですが,ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(フィレンツェ風Tボーンステーキ)には地元のキャンティやブルネッロなど若干酸があるものがよく合います。テーブルで2本飲む場合は軽いものから重いものへという形でオーダーしていただけるといいと思います。

自分の好みを知り, 店に伝える

 大切なのは,自分の好みを知っていただくことです。甘味,酸味,渋味,そして香りです。赤ワインに関しては,余計に甘味と酸味と渋味のころ合いをご自身がわかっていただけるといいなと思います。渋いのは苦手で,酸味もあまりなく果実味があるほうがいい場合はメルローを,渋みがあり,酸味がそこそこで,果実味もあればという場合は,カベルネソーヴィニヨンなどをお勧めできます。

 フランスはボルドーがあればボルドーで,ブルゴーニュがあればブルゴーニュという形で言いやすい。その点で,イタリアワインは30年ぐらい前からやっと出来上がってきたマーケットで,中々枠にはまりません。できる限りレストランに通っていただいて,自分自身の好みを伝えていただけると,レストランといい感じでおつき合いいただけると思います。「ラ・ルッチョラ」もどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。