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2018年2月9日(金)第4,658回 例会

数字でみる大阪・関西

阪 本  浩 伸 君(新聞)

会 員 阪 本  浩 伸 (新聞)

1983年4月日本経済新聞社入社。東京本社編集局証券部配属。2006年東京本社編集局法務報道部長,’09年東京本社編集局産業部長,’10年秘書室長,’12年東京本社編集局次長,’14年経営企画室長,’15年執行役員大阪本社編集局長,’16年常務執行役員大阪本社編集局長,’17年3月常務執行役員大阪本社代表。
’17年6月当クラブ入会。

 日本経済新聞が力を入れています日経電子版のコンテンツや最近の報道などから,大阪を物語る数字を選んできて,お話をしてみたいと思います。

 全国平均の基準値を100とした場合に神奈川県茅ケ崎市が210.2,大阪の茨木市が30.9という数字があります。この数字は何か,お分かりでしょうか。昨年12月25日付の日本経済新聞の一面で報道もしましたが,これは老衰で亡くなる男性が多いか少ないかということを全国平均からカウントして指標化したものです。

 同じように老衰死の死亡率を全国の人口20万人以上の都市でランキングしていくと,下位四つ,123位・吹田市,124位・枚方市,125位・寝屋川市,最下位の126位・茨木市は大阪府内で30ポイント台。全国平均の3分の1です。

老衰死の割合, 全国で下位

 老衰死は,個人の死生観によりますが,一般的には大往生と言っていい亡くなり方ではないでしょうか。恐らく病気で病院にかかるという頻度も少ない。実際,後期高齢者の1人当たりの医療費では,茅ケ崎市は全国平均より14万円安く,茨木市は13万円高い。全国の市町村が茅ケ崎市レベルの医療費だと仮定すると,日本全体の医療費は今より2兆3,000億円少なくて済む計算になるそうです。日経電子版のビジュアルデータにこれらの数字が載っています。興味のある方はご覧下さい。

 では,何が原因で亡くなっているのか。3大疾病のうち,大阪は脳血管疾患の死亡率はむしろ低い方ですが,逆に心臓病はやや高い。がんでは,男性は全国平均のおよそ1.3倍,女性は1.4倍肺がんになりやすく,男女ともに1.5倍,肝臓がんで亡くなりやすい。西日本は昔から肝炎ウィルスの感染者が多く,慢性肝炎から肝硬変になって肝臓がんに至るということがあったことが影響していると思います。

高齢で活動, 健康寿命長く

 去年12月発表の平均寿命を比較すると,大阪府は残念なことに全国38位(男性80.23歳,女性86.73歳)。健康寿命も最近割とよく聞く言葉です。「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。大阪府は男性43位(70.46歳),女性は何と最下位(72.49歳)です。女性に着目し,健康寿命の上位を調べると,トップは山梨県,2位は静岡県です。総務省の家計調査などによると,山梨県は海がないのですが,割と魚をよく食べます。お寿司屋さんの数が人口当たり一番多い。1回平均の食事時間も全国1位です。家族団欒でゆっくり食事をするというような風景が目に浮かびます。高齢者の活動度合いに関係がある図書館・公民館数,老人福祉センター数,障害者対象のボランティア活動の項目は1位,2位,1位でした。静岡県もやはり魚の消費量が多い上,野菜もよく食べる。一方,関西の女性は就業率(有業率)が低いとよく言われます。生産年齢人口の女性の就業率を低い順に並べると,1位奈良,2位兵庫,3位大阪と全部関西です。65歳以上の女性の有業率の上位を見ると,都道府県別で平均寿命や健康寿命の上位と一致しています。まとめると,魚,野菜の消費量が多く,高齢になっても活動的ということが健康寿命に関係があると読み取れると思います。

東京一極集中進み人口減

 最近,総務省が発表した去年1年間の人口の移動状況を見ると,相変わらず東京圏に集中が続いています。東京圏は22年連続で人口増で,11万9,779人は2009年以降で最大。名古屋圏は-4,979人,大阪圏-8,825人で,ともに5年連続で減っています。ただ,大阪府に限っては実は増えています。特に大阪市は東京23区に続く10,691人増。しかし,堺市は全国1,700余りの市町村で2番目に減り方が多く,寝屋川市,東大阪もワースト10位と19位です。ワースト20位以内に3つの市が入るというのは,大阪府と福島県だけです。参考までに神戸市もワースト5位です。

 もう少し分析すると,大阪府は転入超過ですが,増えているのは女性で,男は減っています。元々関西は女性比率が高く,関西の浮揚は,女性がいかに活性化するかにかかっているという言い方もできます。

 大阪府の人口は2016年に万博当時(1970年)より120万人増える一方,2015年に戦後初の人口減少となっています。大阪府の人口予想では2040年には,総数が750万人で,1970年の万博の頃よりも縮小。生産年齢人口は400万人で,万博当時よりも130万人減となります。人口減は地方の問題だと思いがちですが,実は大阪が一番深刻です。

 去年の秋に日本経済新聞出版社から「都道府県格差」という新書版の本が出ました。京都大学の橘木先生が監修されています。冒頭に,日本総研が試算した「都道府県別幸福度ランキング」というのが載っています。トップは福井県。どうしてそんな地味な福井県がトップなんだろうかということをいろいろな角度から分析しています。大阪の幸福度は44位でした。正規雇用,平均寿命,健康寿命,老衰の死亡率が低いとか,不登校の学生が多いなどで客観的数値としては低くなってしまいます。この手のランキングはどういう手法を取るのかによって順位が決まってきますので,絶対的なものとして見る必要はないと思いますが,いろいろな調査で,トップは福井県,大阪は下位となっています。何か共通する課題があるんじゃないかという気がします。

 2025年の万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。私ども新聞でも折に触れて大阪の課題というのをこれからも報道していきたいと思います。

(スライドとともに)