大阪ロータリークラブ

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2016年7月1日(金)第4,586回 例会

新年度を迎えて

宮 原  秀 夫 君(シンクタンク)

新年度会長 宮 原  秀 夫  (シンクタンク)

1943年大阪生まれ。’67年大阪大学通信工学科卒業。’72年同大学大学院工学科研究科博士課程を経て,’73年同大学助手(工学博士),助教授,’89年教授。’98年基礎工学研究科科長・基礎工学部長。2003~07年大阪大学15代総長。情報通信研究機構理事長などの要職を務め,’11年アジア太平洋研究所所長。当クラブ入会’12年10月(千里RC在籍あり)。PHF/米山功労者。

 大阪RCの会長を拝命し,光栄に思いますと同時に,重責を感じています。私なりにこの1年の運営方針をまとめてみました。

多様性を尊重

 今年のサンディエゴ国際協議会における本会議場の看板の標語が 「Join leaders, Exchange ideas, Take action(より活発,自発的なロータリー活動を求めよ) 」だったそうです。ここでのキーワードは,「Take action(自発的な活動)」であろうと思います。この崇高な理念のもと,大阪RCとして何ができ,何をすべきかを考え,実践していくことが「Take action」です。これをしっかりと考えていく必要があります。
 そのためには「What to do(何をするのか)」,「Why to do(その目的・意義は)」,「How to do(どのように実践していくか)」が重要です。ただ,「What to do」「Why to do」については,大阪RCの歴代会長や各役員を中心に検討され,まとめられたものがメンバー間で十分に共有されています。よって,諸課題を実践していく,まさに「Take action」していくうえで当クラブをどう運営していくかの「How to do」について,私の考えを示します。
 そこで,新年度のクラブの運営スローガンを「多様性を尊重し,信頼を深めよう!(Respect for Diversity and Deepen the Trust!)」としました。クラブ同士が互いの多様性を認め合い,各クラブの規模や特性に合った独自性のもとに互いのクラブを尊敬し,クラブ運営をしていくということです。
 このようなスローガンを実際の運営にどのように反映していくかを考える上で,考慮すべきは次のことだと思います。
 つまり,組織の運営形態には大きく分けて「集中管理運営」と「自律分散管理運営」の2つがあります。私の研究分野の情報ネットワークでも昔から議論されており,どちらの方法をとるべきかは,対象とするシステムの規模,特性で決まります。ロータリーという組織を見た時,私は当然「自律分散管理」で運営されるべきと考えます。
 現在のインターネットは,ネットワークを集中管理している者は誰一人としていません。中心となる者がいない自律分散だからこそ,世界規模でうまく稼働している。これがインターネットの最大の特徴です。こうした形態で動くシステムを一般にAutonomous systemと言います。トップダウンではなく,ボトムアップとも言えます。

自律分散管理

 ある生物種が一定の規模の集団になると,個々では考えられない知能,機能を発揮することがわかっています。例えば,渡り鳥の群れが三角形を保ちながら飛行しているのは,あの形態が群全体で受ける風の抵抗を最小限にとどめ,全体の消費エネルギーを最小にする最適な飛行形態だからだそうです。
 海中でサンマの大群が螺旋を描きながら動くことでサメなどから身を守っているとか,ホタルの集団が誰も指示を出していないのに一斉に同期して点滅し,心拍まで同期するといった現象は,生物系に多く見られます。「生物の群(むれ)知能」と呼ばれる現象であり,最近,情報科学の分野でも,生物に学ぶと称して盛んに研究されています。
 先ほど述べた自律分散管理システムやボトムアップの方法が,ロータリー,特に大阪RCには適していると思います。なぜならロータリー自体が,それぞれ個性ある極めて多様な方々の集まりだからです。
 ただ,大阪RCを効率的・機能的に動かしていく上で,従来の習慣に則った形式的な作法や,会議及び進め方も散見されます。今後それらを見直して全体を効率化し,ロータリーの機能向上につなげていくことが大切です。
 メンバーの大半の方は本業を持ち,大変お忙しいなかで時間を割いてロータリーの委員活動をされており,各委員長や委員の負担を軽減するべきです。ロータリー活動の重要性は論を待ちませんが,本業への過負担になっては本末転倒で,本業がhigher priorityに位置するのが当然です。これを実践可能にするのが,Autonomousなシステムだと思います。

交流・親睦を促進

 ロータリーにおいては,ロータリアン個人個人の活動,しかも自発的な活動が基本で,それが重要な要素となります。その活動の基本となるのはメンバー間の交流・親睦であることは言うまでもありません。
 例会への出席が義務感からではなく,出席することで仲間と楽しく時間を共有することができる,出席が楽しみになる,皆がそう思えるような「場」こそが,ロータリーだと思います。ロータリーの基本となる奉仕の精神も,そのような「場」から生まれるものだと確信します。親睦あってのロータリー活動です。
 これは大阪RCでは十分に実践されていると思いますが,私はメンバー間の交流・親睦をさらに促進し,対外活動をより活発にしたいと思っています。何事も楽しく,かつ面白くないと長続きしません。ロータリーの奉仕の精神もそこから生まれるものだと確信しています。
 最後に,昨年度の吉川秀会長はじめ執行部の方々の数々のご功績に敬意を表します。これから1年,あまり気負わず,楽しく,面白く頑張っていきたいと思いますので,皆様のご支援・ご協力をお願いいたします。

新年度副会長 髙 杉  英 一 君(研究・教育)

新年度を迎えて

新年度副会長 髙 杉  英 一  (研究・教育)

1945年生まれ。’68年大阪大学理学部卒業,東京大学大学院修士,メリーランド大学院Ph.D。その後,オハイオ州立大学,テキサス大学,オレゴン大学研究員。’80年大阪大学助手,’89年同教授。2007年理事・副学長。11年退職。大阪大学名誉教授。当クラブ入会’08年1月。’12年副S.A.A.,’14年青少年奉仕委員長・理事。PHF/米山功労者。

 宮原会長の方針に多様性という言葉がありましたが,これはロータリーの最も根本的で重要な考え方です。大阪RCにはこれだけの方がおられ,多様性は素晴らしい。次の問題は,多様な人材をどう活かすかです。多様な意見を皆が尊重して話し合い,自由な意見を交わし,他者の意見を尊重する。それが互いの信頼を深めることにもつながります。

 具体的には,まずは例会の出席率が高まるようご協力を頂きたい。テーブルミーティングや例会前の雑談で,今まで話したことがない会員にも話しかけたり,テーブルマスターの方は,若い会員に話しかけることを心がけたりしてほしい。大阪RCが様々な意見を尊重し,共有できる場になることが私の目標です。また,若い会員は地区の委員会に積極的に参加して欲しいと思っています。

 科学誌「サイエンス」に最近,多様性の重要性に関する研究成果が載っていました。「恐竜はなぜ絶滅したか」という記事でしたが,恐竜が絶滅した直接の原因は,巨大隕石が地球に衝突して天候異変を起こしたことです。ただ,なぜ種が全て無くなったのについては疑問が残ります。幾つかの種が生き残っていれば,現在でも生きているはずですから。

 そこである研究者が「何かもう一つ大きな原因があったのではないか」と恐竜の多様性を調べると,そのアクシデントが起こる所が,ちょうど多様性が一番極小の所だったそうです。不運なことに最も多様性が減った所に隕石が落ちたため誰も助からず,絶滅したということです。多様性を軽視すると人類もいずれ滅亡するのではないかと危惧しています。

 私はかつて,ロータリーの奉仕がどういうことか,その心がよく分かりませんでした。寄付をすれば奉仕になるなら,世界中の色々な財団とロータリーは何も違わないと思っていたのです。

 そこで私が感動した「Thoughtfulness of and helpfulness to others」という英文があります。日本語では「思いやりの心をもって他人のために尽くす」という意味です。これは非常に大切で,他者と同じ目線で他者をよく理解し,本当に他者のためになることをするのがロータリーだということです。思いやりの心が入っている所がロータリーのロータリーたるゆえんだと思い,素直に納得できました。

 当大阪RCでは「みおつくし奨学金」が好例です。会員が機会あるごとに奨学生と接触し,卒業まで色々面倒を見ている。これがロータリーの本当の奉仕だと心から思います。「奨学金をあげたら後はいいじゃないか」ではなく,お金を出す限りは最後まで目配りすることが,他者をおもんぱかって奉仕をすることだと思います。

 大阪RCは,ロータリーの本来の奉仕の精神を色々な所で実現していると私は思います。これがRIの方では随分変わってきつつあります。これに対し,大阪RCが「我々はこう考える」という所を定め,それを共有してやっていくことが大阪RCの戦略計画だと思います。そうした点も,8月5日(金)のクラブ奉仕部門のフォーラムで皆様の意見をお聞きして共有したいと思っています。