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2016年5月20日(金)第4,580回 例会

安全な高速道路に向けて

岡 本    博 氏

阪神高速道路(株)
取締役兼常務執行役員
岡 本    博 

1953年生まれ。’77年東京大学工学部土木工学科卒業。’79年同大学大学院理工学部研究科修士課程土木工学専攻修了。’94年博士(工学)。’79年建設省入省,2005年国土交通省道路局企画課長,’08年国土交通省九州地方整備局長,’11年国土地理院長などを経て,’13年7月国土交通省を退職。’13年10月阪神高速道路㈱入社。’14年現職。

 阪神高速道路がどんなものか,日常の維持管理はどうしているのか,これからさらに老朽化するので,ちゃんとした更新をしていかなければいけないというお話と,関西の高速道路の今後の課題を説明します。

8割が高架橋

 阪神高速道路は昨年,開通50年を迎え,今51歳です。延長は259.1キロ,1日に73万台の自動車が利用し,料金収入は年1,706億円あります。

 延長は阪神圏の幹線道路全体の6%と短いですが,貨物輸送は半分ぐらい,乗用車も含めた全体の交通量は約15%を担っており,短い延長でたくさんの方に利用されていることが分かります。

 特徴は,川の上に作ったりしているため,高架橋が全体の8割を占めます。トンネルは1割です。一般道はほとんど土と盛り土でできており,国道の高架橋率は8%しかありません。都市間高速(NEXCO)も15%ぐらいです。橋やトンネルは老朽化してくると壊れやすい場所が出てきます。

 阪神高速はどれぐらい年をとっているのか。33%が40年以上たっており,さらに10年経過すると40年以上が半分を占めます。すぐにダメになるわけではありませんが,歯が痛いとか,胃が痛いとか,悪い部分が出てきます。ちゃんとした手当てをしてあげないと,あるいは人間ドックに行って見ていかないと大変なことになります。

 貨物輸送が多いと話しましたが,主要な幹線道路だと1日に2,200台の大型トラックが走っているのに対し,阪神高速は1万2,600台と6倍になります。

集中工事に理解を

 外国の道路の損傷事例をみると,1994年に韓国ソウルの聖水大橋が通勤時間帯に突然落ちました。原因は手抜き施工で,溶接がちゃんとできておらず,水が入ってサビが広がったとみられます。1~2週間前,揺れがひどい,何かあるのではないかという声がたくさんあり,当局も点検に行って穴ぼこを見つけていましたが,落下までは想像しなかったとのことです。

 カナダでは,高速道路の上に架かる一般道が落ちました。これも1週間ほど前から,下の高速道路にコンクリートの塊が落ちていると通報があり,一般道を管理している当局が点検員を派遣して,損傷を見つけ,2日後に補修をしてくださいと言った30分後に落下したということです。

 実際,私たちも道路を管理していると,何か危ないな,ということがあったとき,大騒ぎしなくてもよくみていればいいよね,とついつい思いがちなところがあるのですが,こういうことを教訓に,無駄騒ぎ,空騒ぎでもいいから,危ないと感じたら申し訳ありませんが車を止めて,点検しなくてはいけないと強く思っているところです。

 路上の穴ぼこ,ポットホールと呼んでいますが,穴ぼこを見つけたときは,パトロールカーが緊急にその場でふさぎます。それだけではまたはがれてしまうので,夜間や休日にちゃんとした舗装をやり直します。こういった舗装を細かくするのですが,利用者に交通規制で迷惑をかける時間が長くなるので,期間を決めて集中工事を行っています。

 昨年度は3号神戸線を8日間通行止めにしました。もし同じことを土,日曜に交通規制をかけて少しずつやっていくと156日もかかります。同じ工事内容でも,毎日毎日,交通規制と解除を繰り返すと時間がかかるためです。

 工事による混雑で出た遅れは利用者の時間の損失になります。それを1分50円,1時間3,000円として計算すると,1車線規制を156日間かけてやると107億円の損,通行止め8日間だと17億円と6分の1ぐらいになるのです。

 先ほども申しましたが,高齢化してきて傷んだ場所が出てきており,今後,長寿命化に向けて大規模な更新,修繕に取り組むことにしています。例えば,橋のアスファルト舗装の下は分厚い鉄板で,固くするために補強材つけていますが,それをちゃんと溶接し直したり,ひびが入ったコンクリート床版を取り換えていったりしなければなりません。

 これからあっちこっちでそういう工事が始まります。これはやらないといけないとご理解いただき,ぜひ優しく見守っていただければと思っています。

使いやすい料金に

 このほかに,今後の阪神高速の課題は,高速道路としてまだつながっていない場所があることです。関西が将来像として東西二極の一極を目指している中で,ミッシングリンク解消に向けた道路ネットワークの整備は重要です。阿波座が渋滞時間数全国ワースト1ですが,東京圏はもう大体環状道路ができてきて,都心部の渋滞が劇的に減ってきています。

 大阪にはまだ環状道路ができていません。大和川線はもうすぐできますが,淀川左岸線はまだ手つかずの状態です。第二京阪までの間をちゃんとつないで,ぐるっと回れるようにすべきです。

 もう一つは料金です。道路公社,高速道路会社,阪神高速会社といろいろあり,阪神高速だと端から端まで乗っても930円,ちょっとだけ乗ると530円です。これも何とかならないのかという話があります。全国レベルで議論が進められていて,近々その結論が出てくると思われます。地域で一番使いやすい料金が示されれば,阪神高速としてはそれに合わせて実際の体系をつくっていくことになると思います。

(スライドとともに)