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2016年1月22日(金)第4,565回 例会

大阪の活性

東 條  秀 彦 氏

公益財団法人 大阪観光局
MICE推進部長
東 條  秀 彦 

旅行会社勤務を経て1991年より(財)千葉コンベンションビューローに勤務。携わった主なコンベンションは世界エネルギー会議,ASEM 経済閣僚会合,世界空港評議会総会,COMDEX等。’99年より2000年まで(特)国際観光振興会・日本コンベンションビューロー(日本政府観光局)へ出向,日本各都市へのコンベンションの誘致,マーケティング事業に従事する。’11年,千葉コンベンションビューローを退職。’12年より現職。

 本日は「MICE(マイス)」について,地域活性化や地域経済に与える影響を説明します。MICEはMeeting(企業会議),Incentive(報奨会議),Convention(学協会会議),Exhibition(展示会)の頭文字です。1996年ごろにシンガポールから出てきた言葉で,われわれも以前からこういった国際会議等を取り扱っており,当時はコンベンションと呼んでいました。日本政府も以前は学術会議だけだったのですが,ほかにMとIとEがあり,間口を広げてすべてを日本に誘致することで地域活性化につなげようという方針になり,観光庁が発足する2年前の2006年ぐらいからMICEという言葉を使い始めています。

観光には携わらず

 私は大阪観光局に属していますが,一切観光には携わっていません。何をやっているかというと,例えばコンベンションでは,学協会の大学の先生方と打ち合わせをしながら,5年,10年先の国際会議を誘致していこう,インセンティブでは海外の主催者と直接やり取りしながら,大阪で2,000人,3,000人規模のビジネスイベントをやっていただこうと,日々折衝を重ねています。

 観光の場合,不特定多数,最近は団体よりも個人のお客様が非常に多く,趣味趣向もバラバラです。また,お客様が宿泊,飲食,買物をされることで,直接的な経済効果は出ますが,社会的に大きく影響を与えるかとなると,表層の部分だけになると思います。MICEの場合,学術研究だと,例えば大阪の大学の先生方で突出した研究をされている分野の国際会議を開催することによって,大阪からそういう学術の新分野の流れを世界に発信するとか,学術の成果をベースにいろいろな産業の創出につながっていきます。

 ですから,われわれの活動は,ただ単に外客誘致ではなくて,特定の目的を持った人たち,特定の影響力のある人たちに大阪に来ていただき,もちろん経済効果も期待していますが,いろいろな面での影響力を対外,対内的に発信して大阪の活性化につなげていくことが目的です。

心配はソフト

 MICEの市場規模ですが,残念ながら政府統計がなく,実際どの程度かという数字が一切ありません。基準になるのは,国際会議の件数と参加した外国人客数しかなく,本当に氷山の一角しかつかめていないのが実情です。ただ,統計をとっている国もあり,ちょっと古いですが,アメリカだと2,500億ドルくらいの規模で市場が成り立っています。

 MICEの中でどの部分が一番ボリューム的に多いのかというと,もちろん「C」の部分も底堅い市場を持っていますが,やはり民間団体が開催するいろいろな企業の会議です。われわれも学協会の会議しか取り扱ってこなかったのですが,こういう流れに従い,「I」の部分は特に熱心に取り組んでいて,最近は国際会議とほとんど肩を並べるぐらいになってきています。

 観光局は大阪域内での活動に限られますが,横の連携ではお隣の京都,神戸と定期的な会合を持っています。関空から入ってきたお客様は必ず大阪を通過しますし,京都,奈良,神戸で大型の国際会議が開催されたときも,それぞれの宿泊事情があり,大阪が恩恵を浴しているのは間違いありません。ですから,関西広域でどれだけ市場規模を上げられるか,その中で大阪にいい案件を持ってこられるかということを日々考えております。

 今われわれが一番危惧しているのはソフトです。観光局のMICE部門は6名ですが,実質上固有の専任職員は2名しかいません。あとは2年単位で替わってしまう出向の方で成り立っています。私どもが一番長く携わったコンベンションは誘致に13年かかりました。先行きを見込んでマーケティングをして誘致をするという意味では,やはり専任のプロの養成が何としても必要だと思います。

メリハリの効いた誘致を

 これからわれわれが目指すMICE市場は,獲得すべき軸,分野を大阪に一番見合ったものに絞り,地域の経済政策や経済界と歩調を合わせる必要があると思います。今までは開催件数で比較されてきましたが,内容,経済効果,社会的に影響力をもたらす案件なのかを精査しながら,メリハリの効いた誘致をすべきだろうと思います。

 一番重要なのは,大阪の成長動力をどこに求め,それに合わせてどういうコンベンションを誘致するのかということです。例えば,大阪は製薬会社がたくさん立地していますが,そういった部門を目玉にするとなったとき,いろいろマーケティングをしながら,質のいい国際会議を大阪に持ってくる努力をします。世界中から業界の方,研究者の方はもちろん,それを産業化しようという企業の方も投資先を見つけるために見にきます。そういう方たちを大阪に集中させることによって大阪のブランディング化を図り,ゆくゆくはそういう分野の展示会を誘致することで,恒常的な取引の場を大阪に創出していくのです。

 また,産業見本市,実は総合見本市が日本で一番最初に行われた土地は大阪です。ジェトロも今は本社が東京に移ってしまいましたが,もともとは大阪で出発していますので,もう一度産業見本市を大阪の成長動力に復活させて,大阪で一番得意とする分野の展示会の誘致,創出を積極的にすべきであろうと思っております。

(スライドとともに)