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2014年2月21日(金)第4,475回 例会

デザインのなせること

服 部  滋 樹 氏

デザイナー・クリエイティブディレクター
graf 代表
服 部  滋 樹 

1970年生まれ。現在,京都造形芸術大学情報デザイン学科教授。’98年,大阪・南堀江にショールーム「graf」をオープン。建築,家具,グラフィック,プロダクトデザイン,アートから食に至るまでプロジェクト単位で様々に構成されるクリエイティブユニットにより,既存の枠組みにとらわれない自由なデザイン展開で活躍中。

 東日本大震災以降,東京などで「繋がり」とか「人と人の優しさ」みたいなものを思う方がとても増えています。都市から地方に目を向けて,様々な地方の暮らし方を意識しています。

「graf」とは

 私は「graf」というデザインユニットをやっています。バブル崩壊後にこのアイデアを思いつきました。当時,世界中で「ユニットでモノづくり」をする人たちがいました。建築家,グラフィックデザイナーの集団,そういう専門分野の中で一つのカテゴリーで仕事をする人たちが多かったのです。私たちが考えたのは「異業種の仲間」と一緒に会社を構成する。プロダクトデザイナー・建築・家具をつくる職人・シェフ・映像作家・私はデザインの監修,この6人が集まりまして,様々なプロジェクトに合わせてチームを編成するやり方をとっています。

 「B to C」がメインです。暮らしをデザインするコンセプトで,様々なことをやっています。家具を設計して,工場でつくって販売する。スプーン・ナイフ・フォークのデザインを,メーカーの仕事をデザインとしてやらせていただいています。

 表題の「デザインのなせること」に移りたいと思います。

 私たちのように,世界中でも様々な組織づくり,チームづくり――チームデザインと言ってもいいかもしれませんが,チームデザインをやる人たちが2000年に入って増えてきました。フラットな関係でモノづくりをしていくのです。21世紀にさしかかったところで,形ではなくて,むしろその全体をどのようにデザイン,整理していくかが役割になってきました。

「グローバルスタンダード」から「ローカルスタンダード」へ

 20世紀,それから21世紀になり,デザインの役割は,地方でも様々なことが起こっているのではないかと思います。グローバルスタンダードという言葉自体が意味を持っているのは,世界中の様々な国の均一化です。しかし,地域それぞれ個性があり,均一化は無理です。最近は,「グローカル」と言われています。グローバルとローカルが組み合わさった言葉です。最近では「ローカルスタンダード」という言葉も生まれてきているぐらいです。

 地方でどのような事が起こってきたか。大型の商業施設の進出やチェーンストアの発展で,小さな商店街が劣化しています。これをネガティブではなく,ポジティブに考えることはできないだろうか。グローバルスタンダードという言葉が世界中を飛び回って仕組みをつくり出したわけですが,その残っている仕組みを使って新しい解決方法が見つけ出せないかと思います。地方で起こっていることをヒントにして都市を変えていこうとか,暮らしを変えていこうという動きがよく見られます。雑誌の量でも,地方のライフスタイルを取り上げるという雑誌が20冊も30冊も出ています。

 大きな動きの中で物事を考えるのではなくて,もう少し個人的な活動や地域の中で起こっていることを磨き上げて,そこから新しい創出を始めていくということが重要なのではないかと思います。コミュニティという言葉が使われておりますが,実際は家族もコミュニティという単位になって,次に大きな村,町,そして都市という流れになっています。その中で,コミュニティがどのように考えているかを,マーケティングという手法で捉えていました。しかし,むしろ個人,個人の繋がりの中から正しいヒントを見つけて,そこから生み出すということが必要なんじゃないか。

「コンセプト」を見つけ出す

 例えば,「コンセプト」と言うことはマーケティングの世界の中ではよく言われます。しかし,コンセプトを創るのはすごくナンセンスな話です。むしろコンセプトは見つけ出すことが重要だと思います。

 「コンセプトを見つけ出す」というのはどういうことかと言いますと,そもそも生まれた時代から改変していく中で,例えばコンセプトの種の上に落ち葉が降り積もっている状態のような気がします。落ち葉を1 枚1 枚はがしていく作業で,正しいコンセプトを見つけ出して,それに必要な栄養,必要なお水,光を与えてあげるのが今後の流れになると思います。

 「grafのモノづくり」は,改めて考えなくてはならないモノづくりのあり方です。今若い人たちが考えているモノづくりのあり方と思ってください。まず,「サーベイは多視点で行うこと。異業種のチームづくりによって様々な視点でモノづくりを行う」――先ほども言いましたが,本当の問題を発見するところからデザインをやっていきます。次に,「つくられる現場とともに共創すること」――つくられている現場とともに正しくつくることがその地域興しとなっていくのではないか。

 その次は「コミュニケーションのためにデザインを行うこと」。さらにその次は,「デザインは手法であり,目的はその先にある。デザインすることを目的にしないこと」――これが重要じゃないかと思います。そして「発見や気づきを見つけ出そう」。「見えないモノを見つけ出し可視化することを目指す」。「クリエイティブコミュニケーションを楽しみながらモノづくりをする」。

 最後に,「『生活』,生きる活力を生み出そう」――生活という言葉には「生きる」「活力」の2つの言葉があるわけです。生きる活力を生み出すためには,気づきや新しい発見,日常の中に非日常を見つけ出すような様々なハプニングが必要だと思います。そのハプニングづくりというのも,実はデザインの中に必要な要素として考えられるのではないかと思っております。

(スライドとともに)