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2012年7月20日(金)第4,402回 例会

日タイ関係について

Manopchai Vongphakdi 君(外交官)

会 員 Manopchai Vongphakdi  (外交官)

1959年生まれ。’94年在ニューヨーク国連本部常駐タイ代表部一等書記官。2005年台北貿易・経済事務所参事官,’07年タイ王国ペナン総領事館総領事,’10年からタイ王国大阪総領事館総領事。
当クラブ入会:2011年2月。

 今年は,日タイ修好125周年を迎える節目の年です。日本とタイは長い間緊密な関係を保ってまいりました。両国の友情の絆は,時間を経るに従って多面的な協力関係へと発展していきました。ここにいらっしゃる多くの方々はビジネスなど何らかの形でタイとかかわりがあり,両国が経済的相互依存していることがおわかりになっていると思います。

タイ進出日本企業の3割は関西系

 現在,タイにとって日本は最大貿易相手国です。国外からタイヘの直接投資の半分は日本によるものであり,海外からの投資国の中でも日本は1位を占めています。パナソニックは,最初の海外工場をタイで設立しました。現在,タイで登記されている日本企業は約7,000社に上り,主な業種は自動車産業,電子部品産業です。大変興味深いのは,これらの企業のうちの3割は,関西企業が占めていることです。日本企業が採用しているタイ人は,60万人もいると言われています。2010年には,在タイ日本企業は3,500億円の資金を日本へ送金しました。アジア諸国の中でも,中国の送金額5,200億円に次いで2番目の額です。現在の在タイ日本人駐在員コミュニティーは5万~6万人です。東南アジア諸国の中で最も大きく,アジアでは上海に次いで2番目の大きさです。日タイの貿易額を見ますと,昨年は総額が5兆円に上り,その半分は関西との取引によるものです。

 観光も両国の経済にとって重要分野です。毎年,約100万人の日本人がタイを訪れており,タイヘの外国人観光客の中でマレーシア人と中国人に次いで3番目です。一方,日本を訪れるタイ人観光客は年間で約20万人であり,この数は増えつつあります。タイ人にとって,日本は人気の旅行先の一つです。

災害を機に国民レベルの交流深まる

 両国民の間に結ばれた絆は,とても深いものだと言えるでしょう。それは経済協力の面だけではなく,個人のレベルでも同じだと思います。昨年に起きた東日本大震災,そしてタイの大洪水は,まだわれわれの記憶に鮮明に残っております。その困難な時期に,両国は互いに多大な援助をし,支援を受けました。東北地方で大地震が発生したすぐに,電力不足緩和のため,タイから日本に発電機が2基送られました。この発電機は24万世帯分の発電能力を持ち,3~5年間日本で稼動する予定です。タイで大洪水が起きたとき,日本は洪水被害に遭った工業団地から排水するために,ポンプトラックと専門家チームをタイに送ってくれました。

 今日の日タイ関係は,われわれの先祖が長い世代を通じて努力した成果であります。日本とタイの正式な国交樹立は125年前です。しかし,両国の交流が600年以上前から始まったことはあまり知られていません。歴史的な証拠によって,タイがまだ「シャム」という国名を使っていた当時の首都「スコータイ」と琉球(沖縄)は,14世紀から貿易を通じて交流を始めたことがわかります。17世紀の初期の江戸時代に,両国の貿易交流は日本の他の地域にも広がりました。日本から,当時のタイの第2首都であった「アユタヤ」に「朱印船」が多く送られました。日本人コミュニティーがアユタヤに開かれたのもこの時代であり,約1,500人の日本人が居住していたと言われています。当時,日本人町の頭領も務め,最も有名な日本人は静岡出身の「山田長政」です。山田長政は商人としてタイヘ渡りました。アユタヤの王のために戦争で戦い,アユタヤから日本に外交使節団が送られたときに外交官を務めました。その後,タイ南部の統治者に任命されました。彼は人生の幕を閉じるまで,タイ南部に住んでいました。

 日タイの初期交流の証拠品として,日本で見つかった陶磁器などがあります。その昔,関西はタイとの貿易港としての役割を果たしました。堺の旧市街でタイの壷や甕(かめ)などが30個以上発掘されています。これらの壷や甕は,アユタヤから日本まで商品を輸送する際に,コンテナとして使われたと言われています。貿易を通じた初期の交流の遺産として今日も日本に残っているものに,有名なお酒である「泡盛」があります。もともと泡盛は,14世紀~15世紀頃にタイから日本にもたらされました。当時は,タイ米が泡盛の原料として日本に輸入されました。今でもタイ米が,泡盛の原料として使われています。歴史的には,両国の国交関係はこの時代に確立されました。1635年に日本が鎖国政策をとるまで,アユタヤの王と徳川将軍が,随時外交使節団を互いに送りました。

皇室とタイ王室の密接な関係

 19世紀から始まった日本の皇室とタイの王室の親密な交流を見ずして,日タイ関係の全体像を理解することはできないでしょう。皇室と王室は常に好意的で,親密な友好関係を持っています。皇室と王室は,互いに定期的に訪問し合っています。プミポン国王とシリキット王妃は,1963年5月に日本を公式訪問されました。その際,国王王妃両陛下は,大阪,京都,奈良をご訪問されました。1991年に日本の天皇皇后両陛下は,ご即位されてから初めての外国へのご訪問として,タイをご訪問なさいました。また,2006年に再びタイをご訪問されました。今年の6月に,日本の皇太子様はタイをご訪問なさいました。

 関西地域との関係を見てまいりましょう。古代において,関西はアジアの海上交易圏の一部であり,今日もタイと日本との経済パートナーシップにおいて,重要な役割を果たしています。前述のとおり,タイで事業を行っている日本企業の30%は,関西からの企業です。両国とその国民は,深くて強い友情の絆を築き上げてきました。この500年間で育んできた両国の友好関係は,さらに成長していくと確信しております。