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2011年6月3日(金)第4,350回 例会

いまさら聞けないソーシャルメディア

三 浦  文 夫 氏

(株)電通 グローバル業務
室長
三 浦  文 夫 

1957年生まれ。’80年,慶應義塾大学経済学部卒業。同年電通入社。ラジオ局・営業局・インタラクティブコミュニケーション局などを経て現在,グローバル業務室長。著書に「インターネット世界への扉」,「デジタルコンテンツ革命」など。

 ソーシャルメディアについて最近,世間を騒がせているフェイスブックを中心にお話をさせていただきたいと思います。ソーシャルメディアについて簡単に言うと,「文章や写真,動画などを共有するコミュニケーションツール」です。「自慢し合いっこのツール」ととらえていただくと,何となくわかるでしょう。「こんなうまい飯を食ったぞ」とか「こんないい所に行ったぞ」というのを簡単に他の人に伝えてくれるツールです。

実名への考えで違い

 ツイッターの利用者は世界で1億5,000万人ぐらいです。最も大きいソーシャルメディアがフェイスブックで6億8,000万人。日本の代表はミクシィで,2,000万人です。去年,アメリカで結婚した夫婦のうち,8組に1組がフェイスブックで出会っています。アメリカでは,フェイスブックがグーグルをアクセス数ですでに抜いています。アメリカ政府が今年4月から,テロの警戒レベルの告知にフェイスブックやツイッターを使い始めました。フェイスブックのユーザーの数を国で例えると,中国の13億人,インドの12億人に続いて世界第3位です。

 ソーシャルメディアの特徴や違いについては,代表的なものを3つ覚えていただければ十分だと思います。ツイッターは誰でも見ることができ,誰でも書き込みができますし,匿名でいけます。今,起こっていること,例えば「内閣不信任案が成立しなかった」というニュースもどこよりも早くツイッターで流れています。非常にオープンなことが特徴です。

 フェイスブックは一部の人にしか見られないという機能もあるのですが,大部分が見ようと思えば見られます。ただし,非常に厳しいルールが1つあって,実名でなければいけないということです。ミクシィは非常にクローズドな(閉ざされた)ソーシャルメディアです。登録した人がIDとパスワードを入れてログインしないと見ることができません。ミクシィの場合,実名でなく,ハンドルネームでもいいのです。ただし,ミクシィは検索やリンクができません。ツイッターやフェイスブックに書かれていることは,グーグルやヤフーで全部,検索できますし,逆にツイッターやフェイスブックに書いてあるところから,他のホームページに飛ぶこともできます。

「いいね!」がポイント

 フェイスブックは文章や写真を簡単にアップできます。ユーチューブの動画についても「これを見て面白かったよ」とか「このミュージシャンのビデオクリップ,最高だよ」みたいな話をフェイスブックですると,すぐに共有できます。趣味でもビジネスでも情報収集に有効なツールとして機能し始めています。

 フェイスブックのポイントは「いいね!」というボタンです。これを使って色んな写真や動画,あるいは企業などのフェイスブックページが人気を集めています。例えば,私が日本航空のフェイスブックページを見て「いいね!」ボタンを押すだけで何が起こるかというと,「三浦文夫さんがJALのフェイスブックページをいいね!と言っています」というお知らせが友達の皆に行くわけです。そうすると,「あいつが『いいね』と言っているのだから,きっといいのだろう」と思って,それを見るといった形でどんどん「いいね!」が広がっていきます。仕事上の新しい情報でも,「このラーメン屋がうまかった」ということでも,「いいね!」ボタンで広がっていくというのがポイントです。

 「ソーシャルグラフ(人間関係図)」という言葉を覚えておいていただきたいと思います。自分を中心としてどんな人間関係を持っているかを表すものです。ここにおられる皆様も会社のつながりや同級生,趣味,社会,地域で関係性を持っておられると思います。会社の友達と趣味の友達,地域の友達はバラバラだと思いますが,フェイスブックでは,関係のない会社の同僚と同級生,趣味の仲間がそこから知り合いになっていくというのが大きな特徴です。

 ソーシャルグラフのつながりによって,例えば,私が「いいね!」と言うと,私の人間関係の中の誰かがそれを見て,「いいね!」と言う。そうすると,連鎖的に広がります。だから,自分が発信したことがいつの間にか,日本中あるいは世界中に広がっているという例もあります。

 アメリカの企業では,ソーシャルグラフを見れば客観的にその人の人脈や興味,履歴がわかるので,求人にはフェイスブックが絶対必要になっています。フェイスブックの利用者について,18~24歳が28%,25~34歳が42%で,若い人がいっぱい利用しています。今,世界中で伸び率が最も高いのは55~64歳の女性です。フェイスブックは世界中で利用率が高いのに,日本だけが少ないのが現状です。

絶対必要なツールに

 ソーシャルメディアは個人にとっても,企業にとっても,これから必要欠くことのできないコミュニケーションツールだと思います。ここで何かをやろうと思うと,個人にしても,企業にしても,ウソを言ったり,取り繕うことはできません。いろいろな人の目に触れるし,ウソっぽいと,「いいね!」を押してもらえません。だから,皆の共感を得ることが最も大事です。日本だけがフェイスブックの利用率が低いのは実名を出したり,自分の発言に責任を持ったり,「私はこういう者で,こういう考えだ」と主張することを今までしてこなかったことが大きいようです。しかし,世界中が「私はこういう者で,こういう考え方だ」という自己主張を企業も個人もしている中で,日本だけが匿名を続け,閉ざされたムラの中に居続けることはできないと思います。