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2010年12月3日(金)第4,328回 例会

地球温暖化への対応は
第2の産業革命を興す覚悟で

鈴 木  胖 君(教育研究機関管理)

新陰流兵法第二十二世宗家 鈴 木  胖  (教育研究機関管理)

1960(昭和35)年3月 大阪大学 大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了。
’72年10月大阪大学工学部教授,’95年8月~’99年8月大阪大学工学部長,’00年10月姫路工業大学学長,’04年4月兵庫県立大学副学長。’08年4月より(財)地球環境戦略研究機関関西研究センター所長。
当クラブ入会’98年2月,’10年理事・青少年委員長。

 今日の表題につきまして非常に大きな題だと皆さんお感じだと思います。が,今の事態を乗り切るには,本当に産業革命という気持ちで臨まないと,この問題は解決できません。しかも,もっと重要なことは,その時間があまりないということです。時間をかけてゆっくり取り組めばいいというような話ではありません。

 産業革命が始まってからどうなったか,実はそこに原因があるわけですから,それを戻すことが大変重要なことなのです。しかも,その間に世界は大きく広がりました。

 とりわけ世界の人口は拡大しました。そういったことを大まかに,かいつまんでお話しして,決してこのテーマが過大なテーマではないということを,ぜひご理解いただきたいと思います。

転機は蒸気機関

 産業革命前までは,エネルギーとして薪や炭,水車,風車,帆船,地熱,そういったものを使っています。資源もすべて植物,動物起源のものでした。

 地球の循環系から取り出すものは,非常に大事なものですから徹底的に使いました。リサイクルですね。どうしても使えなくなったものは廃棄物として捨てる。そして,微生物で分解されたり,また炭酸ガスになって,この地球の循環系,大気の中に戻るわけです。

 まさに人間は地球と共生して発展してきました。従って,発展のテンポも非常に緩やかでした。転機になったのが産業革命です。

 1769年に,イギリスのワットが高効率蒸気機関を開発しました。この発明の動機は,皮肉なことに石炭をもっと大々的に利用したいということでした。ここから産業革命が始まるわけです。

 1814年には,イギリスのスチーブンソンが近代蒸気機関車を開発しました。

 今は2010年ですから,このスチーブンソンから産業革命が本格化したとして,まだ200年過ぎていないんです。

 産業革命によって何が起こったのでしょうか。石炭,石油,天然ガスといった化石燃料を使うようになってCO2(二酸化炭素)を大気に野放図に捨てているのです。

 これを何とかしない限り,温暖化は進行していきます。

気温の上昇率が加速

 人口をみますと,1804年が世界の転機で 10億人でした。この後,10億人から20億人にいくのに123年かかって1927年。

 その次の20億人から40億人になるのは 1974年,何と50年を切ります。40億人が80億人に倍増するのはその50年後の2025年。今2010年ですから,もうすぐです。時間があると思ったら大間違いです。

 一方,気温の上昇はと言いますと,平均温度の上昇率は,過去150年,100年,50年, 25年と,曲線の傾斜がだんだん急になっているのです。要するに,地上気温の変化がどんどん加速しているのが今の状態なのです。

 1番の原因がCO2,次がメタンガス,それからN2O(亜酸化窒素),こういう長期滞留温室ガスが大気に残って温暖化を招いているのです。

  産業革命前はCO2の濃度が280ppm,これが2005年には379ppm。現在は383ppmぐらいだと思います。そこまできているわけです。長期滞留温室ガス濃度は,2005年では455ppmです。

 このままいくとエネルギー関連CO2は, 2007年の約28.8ギガトンから2030年には 40.2ギガトン。この2007年から2030年の 20数年間の間に,約11ギガトンのCO2の排出が増えます。

 そのうち,中国は6ギガトン,インドが2ギガトン,中東が1ギガトン,こういうすさまじい状態になっていくわけです。

社会変革を

 それから,CCSです。これは皆さん多分あんまりご存じないかと思います。産業革命以後われわれは平気で大気にCO2を捨ててきたわけですが,これを何とかしなければいけない。もっと具体的に言えば,われわれは今,CO2をジャンジャン出しているわけです。

 CCSは,「Carbon」「Capture」「Storage」の頭文字で,出ていくCO2を途中で回収してどこかに蓄えようということです。

 捨てているCO2を回収してどこかへやれと言うんですから。これは決して長続きする,永続的な技術ではないのですが,そういうことまでカバーしないと目標はクリアできないのです。だんだんそういうところまで来ているわけです。

 持続可能な社会のためにわれわれはどういうことをやらなければいけないかと言いますと,結局最初に戻るのですが,われわれ人間の活動を一番支えているバックボーンの化石燃料を少なくして,再生可能なエネルギーを増やすことです。

 先進国と開発途上国の対立の問題もあります。途上国の言い分は,「この温暖化を招いたのはほとんど全部先進国のツケ」だと。

 途上国は,貧困からの脱出というのが第一命題で,それなしにCO2どころではないという基本的なスタンスがあります。そういう中でお互いに今言ったような問題に向けて妥協点を探らないといけません。

 最近電気自動車というのがはやっています。これは当然ですね。

 私が申し上げたいのは,産業革命から200年,ここまできて完全に壁にぶち当たっているわけですから,われわれはそれに匹敵するような社会の変革を考えなければいけないということです。