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2010年10月15日(金)第4,321回 例会

忘れられた女性と子どもたち

レンカ・スザナ・<br>ハニバロバ 氏

2010~11年度
当クラブ受け入れ米山奨学生
レンカ・スザナ・
ハニバロバ 

1983年チェコ・オストラバ生まれ。チェコ・オロモウツのPalacky大学(2001年7月~’05年9月)を休学し’05年10月から大阪市へ。
’05年10月~’06年4月,ISCアカデミー,’06年7月~’07年3月,大阪文化国際学校で学び,’07年4月から関西大学文学部総合人文学科に学ぶ。
現在,同学部の4年生。2010年,2660地区米山奨学生に合格。当クラブ受け入れは2010年 4月から2011年3月まで。

 皆さんに私が大事に思っていることを伝えたいと思います。それは私が最近,毎日考えることでもあり,私の卒業論文のテーマでもあり,私の来年からの大学院の研究テーマでもあり,私の夢でもあります。

 皆さんは自由が好きですか。私も自由が大好きです。私の母国,チェコも今は自由に動ける時代になったから,日本までやってこられたし,好きな勉強ができるし,会いたい人に会えます。

今も残る奴隷制

 自由がなければ何になるのでしょうか。奴隷制です。奴隷制は5千年前からありました。特に,16世紀から19世紀まで続いた大西洋の奴隷貿易が,思い浮かぶのではないかと思います。

 その奴隷貿易は1865年のリンカーン米大統領の奴隷解放によって終わりました。しかし,21世紀になった現代においても,残念ながら奴隷制は存在しています。しかも,それは新しい形となって全世界に広く見られます。

 現在の奴隷制度について紹介したいと思います。暴力の恐怖のもとで賃金なしの労働を強制され,その人たちは逃げられないのです。2010年には,全世界で2,700万人の奴隷がいるといわれています。それは,大西洋の奴隷貿易でアフリカから連れ出された奴隷の総合計の2倍です。

 現在,奴隷制はどこの国でも違法です。しかし,どの国でも起こっています。ですから,現在の奴隷制は,発展途上国だけの問題ではなく,世界全体の問題です。

陰のグローバルビジネス

 奴隷制は経済的な犯罪です。現在の奴隷制度はいろいろな形があります。私が特に関心をもつのは,「セックススレイバリー(性的奴隷)」の人身売買です。21世紀の世界には3つの大きい組織犯罪があります。麻薬売買,武器売買,人身売買です。  麻薬や武器は1度,売れば,1回だけ利益が入り,それで終わりです。しかし,人身売買は女性と子どもの労働力を使っているものですから,繰り返し働かせて,何度も売って,何度も利益が入ります。非常に多くの利益が得られるビジネスです。

 人身売買は残念ながら,どの国にも関係があり,自由に人と物が動くグローバルな時代の中でも,最も急成長している“陰のグローバルビジネス”です。年間70億ドルから120億ドルの利益に達していると言われています。1年間に大体200万人から400万人の若い女性や子どもが売春をさせられています。

 私はいつか,犠牲になっている女性と子どもたちの支援団体をつくりたいと思います。支援では,まず情報を与えることが必要だと思います。

 女性や子どもには人身売買の危険性や仕組み,手口について,犯罪に対抗する法律や権利について,教えなければいけません。しかし,被害者側だけではなく,社会全体を教育することが最も大切だと思います。つまり,買春する人にも,買うのは犯罪だと認識させることが必要だと思います。

社会復帰に支援を

 被害を受けた子どもや女性を売春宿から救い出すだけではなく,これからの人生を作り直す支援をする必要があります。長い間,売春宿で売春させられていると,体の被害に加え,精神の被害がとても大きいのです。だから,精神被害の治療をし,自分自身を認めるようになるまでのリハビリテーションの支援がとても大切です。

 しかし,一度なくした愛や信頼,自分自身を取り戻すのはとても難しいことです。そのためには,周りから愛やパワーが必要だし,そういう愛やパワー,自信を精一杯,彼らに与えたいと思います。最も大切なのは,愛,パワー,自信をもらうことではなく,彼ら自身がそれに気づき,自分の中でもう一度,愛と自信と信頼を生み出すことです。それさえできれば成功だと思います。

 被害者たちが不安なく社会に戻れるようにすることもとても大切です。子どもの場合は,技術や特技がなければ,仕事を見つけるのが難しく,もう一度,売春のサイクルに落ち込む可能性が高いのです。だから,スキルを身につけることが重要です。いろいろなことができるようになったら,自分自身の価値観がわかるようになって,やりたいことをたくさん見つけられるでしょう。それがとても大切です。いろいろな仕事ができ,経済的に安定するようになれば,新しい夢も生まれるでしょう。

 被害者たちを直接,支援する方法はいくつかあります。その1つは彼女たちがつくった商品を売ること,あるいは売れる道をつくることです。彼女たちの手作り商品の1つ1つには,大事な意味があると私は思います。それは,頑張ってスキルを身につけたというだけではなく,「私たちも元気ですよ」「仕事ができますよ」というメッセージが含まれています。先進国はそれを買うことによって,大きな責任の一端を果たすことができると思います。

 私の夢は,彼らが尊厳と安定をもって経済的に自立した生活を築き,愛と信頼,自信を再び持つこと,そして,持続的に自由であり続けることです。1人ひとりの新しい夢が生まれるまで,サポートしていきたいと思っています。私の夢は,彼女たちの夢が叶うことです。最後に,皆さんと分かち合いたい夢があります。それは,すべての人が奴隷制から自由になって,そして,すべての女性と子どもたちが安全と思える世界をつくることです。