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2008年2月15日(金)第4,195回 例会

笑ってごはん

高 城  順 子 氏

フード・コーディネーター 高 城  順 子 

大阪生まれ,女子栄養短期大学食物栄養学科卒業,栄養士。イタリア,フランス,中国などを歴訪し,調理法と味覚について研究する。フリーの料理研究家として現在,NHKテレビや多数の雑誌に新しい料理を発表し続けている。

  料理研究家という仕事をしております。誰でもなれる仕事でして,私自身は女子栄養大学の食物栄養学科を卒業して,栄養士になりました。

 なぜ栄養士になったかと言うと,食い意地が張っていたんです。大学を選ぶ時,食べ物の勉強ができるということで,悩みもせずに選びました。

 大学の研究室に残ったのですが,学長の方針が「家庭料理が一番大事」ということで,お米を中心とした食生活の国,中国,東南アジア,韓国などのお料理を見に行くチャンスに恵まれたのです。

胃の中が動物園

 私たちのころは,食べ物を五感で知ることが大事でした。中国は四十数回行きましたが,胃の中が動物園や昆虫館になった感じでした。

 ラクダのこぶ・ひづめ,象の鼻,今は協定ができて食べられないと思いますが,30年くらい前は食べられました。市場で蚕が動いていて,私たちが騒いでいたら,ガイドさんが買ってくれて,炒めたものが夕食に出ました。皮がかたいのですが,中身は白子と同じでおいしいんです。いろんな物を食べてきて,実際に食べてみるということが私たちの仕事では大事だな,と思います。

 では今,どんな仕事があるかと言うと,料理教室で作り方を教えるというのが仕事です。それから,メニュー開発というのがあります。これは,食品メーカーだけでなく,調理器具もあるんです。おこがましいのですが,京セラさんのセラミックナイフというのを20年前からキャンペーンガールをさせていただいて,セラミックの包丁を使って,どんな料理ができるか,レシピを作ったりしました。IHの調理器具のメニュー開発もしました。

 私自身は「家庭」という枠をつくって,家庭でどんなレシピができるかというメニュー開発が中心ですが,家庭料理は今,悲惨な状態です。

 家庭料理をテレビでつくるという仕事があります。NHKの「きょうの料理」,それからテレビ東京系の「女子アナクッキング」という番組がありました。

 アナウンサーの方が,もう,びっくりするような作り方をするんです。おだしを取って味噌を入れてつくるのも,「エッ,そんなことをするの」と言われる感じで,収録後に「先生,だしなんか取らなくても,お味噌にだしが入ったのがあるんです」と言うんです。本当に,家庭での食の訓練ができていないのが現状です。

一から教えないと

  「きょうの料理」は50周年で,私も出演させていただいて22年になります。昔はお米を炊く前に洗ったり,野菜も洗って使うのが当たり前でしたが,ビギナーズに全部一から教えないとだめだろう,と。団塊の世代もリタイアして自分で作らなきゃいけない環境になってしまう方もあるということで,「ビギナーズ」という5分の番組が誕生しました。

 アニメーションで,78歳のおばあちゃまが教えるという設定でやっています。私が高城ですので,おばあちゃんは高木さんで,料理を初めてするということで,ハツ江,「高木ハツ江さん」が出てきます。実際の料理は,私のこの手で作っています。頭上からカメラで手元を撮っているので,イナバウアー方式で体を反らせて包丁を使っております。

 NHKの場合,6カ月前にメニューを出してテキストを作ります。テキストができると今度は台本を作って,本番では材料は5倍から6倍持っていきます。

 料理用のスタッフと打ち合わせをして,実際にリハーサルで全部作って時間を計ります。「きょうの料理」は編集をしないということで,完全にきちっとした時間で撮りこんでしまうので,本番で時間通りにいくと「やったー」という達成感があります。スタッフが大勢いますので,料理を5倍,6倍作ってもほとんどなくなって,人気のあるメニューがわかります。

 家庭料理が今,危機状態にあります。外食に対して家で食事をするのを内食(うちしょく)と言いますが,最近は中食(なかしょく)というものがあります。

 中食は持ち帰り総菜のことですが,中食が家庭で占める割合がすごく多くなっています。主菜まで中食で済ませてしまう家庭が多いのです。

できていない食の教育

  一番ショックなのは,それを利用しているのが専業主婦に多いのです。お母さんがあまり作らないということで,家庭で食の教育がなされていないのが現状です。

 ですから,お願いがあるのですが,奥様がお作りになったご飯に必ず感想を言ってあげてください。「おいしいね」でも,何か一言を言ってくだされば,作る側の励みになります。

 外食は非日常の食事であって,内ごはんは日常のごはんです。体の声を聞いたシンプルな料理で,素材を味わえる料理でいいと思うのです。

 中年期からどういう食事をしたらいいかというと,規則正しく,ゆっくりかんでいただくことが大事です。それから楽しく食卓を囲んでほしい,と思います。

 何を食べたか,3日間くらいは思い出せるようにしてください。たんぱく質は肉,魚,大豆製品の繰り返しが良いので偏らないようにしてください。野菜は多くの種類を少しずついただくと,体に良いんです。

 季節の移り変わりを楽しんで,旬の物を召し上がれば,楽しく,明るくお食事ができると思います。食べ方上手は生き方上手,と申します。食事というものを頭の隅に入れて,毎回召し上がっていただければ,と思います。