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2007年12月21日(金)第4,189回 例会

店頭から見た本年の消費動向

山 本  良 一 君(百貨店)

会 員 山 本  良 一  (百貨店)

1973年明治大学商学部卒業,大丸入社。’93年同社大阪・梅田店営業企画部長,’97年同店婦人雑貨子供服部長,’98年同社本社百貨店業務本部営業改革推進室部長などを経て’01年理事・企画室長,’03年5月同社代表取締役社長兼本社百貨店事業本部長事務管掌(現任)。’07年9月J.フロント リテイリング株式会社取締役。’03年当クラブ入会。’05年度雑誌委員長。準米山 功労者・PH準F。

 今年の全国の百貨店の売り上げは,1月はまずまずでしたが,春夏は天候不順で不調。6月に前年をやっと上回り,猛暑の8月も帽子や紫外線カット化粧品が売れてプラスでした。9,10月は残暑で衣料を中心に苦戦。11月になってやっと良くなってきたようです。

 大丸は,11月に東京に新店をオープンし,大都市は比較的良いのですが,地方は苦戦しています。一方,少し明るい材料は,中国からの観光客が年々15%近く増えていることです。一番の目的はショッピングだそうで,大丸にも大勢来ていただいています。

 そんな中で今年は,ライフスタイルをしっかり持った消費者の姿がいっそうはっきりしてきました。特に20代,30代の女性が「自分の感性や価値観に合っているか」「能書きより,使って心地良いか」を重要視して商品やサービスを選んでいるようです。

 そこで,本日の演題を,3つのキーワードで解いてみたいと思います。

オードリーの生き方に共感

 まず初めに,「自分らしさへの回帰」。

 女性ファッションは「本来の柔らかさ,穏やかさ」に立ち帰るスタイルが注目されています。大丸は「生き方が美しい」をキャッチフレーズに,名女優オードリー・ヘップバーンをイメージ・キャラクターに選んでキャンペーンをし,とても好評でした。スターへの憧れだけでなく,ユニセフの活動に献身するなど,自分らしさを貫いた彼女の生き方や内面の美しさが共感されたのだと思います。

 私どもの社員をモデルにして,ファッションをご覧いただきます。(モデル登場)

 その名も「女優コート」。イタリアのデザイナーの商品です。襟元にフォックスのファーをあしらい,色は今シーズンのトレンドのグレー・ブラック。黒のロング手袋とブーツがエレガンスを醸し出します。37万円です。

 次は,使い心地良く足にフィットする「レギンス」。元々は,靴に砂が入ったりズボンの裾が機械に絡むのを防ぐ実用品でした。20代女性を中心に大ブレイクしています。靴は「ブーティー」という短いブーツ。足首が細く見えるとのことで,これもヒット中です。

 抱えているのは「エディターズ・バッグ」。大きな書類が入れられ,アメリカの雑誌編集者やジャーナリストの愛用品です。若くおしゃれなお母さんが赤ちゃんのミルクや着替えを入れるのに,人気を呼んでいます。

 可愛い商品も話題になりました。大丸がアップリカと共同開発した「天使の羽のついた夢のようなベビーカー」。元々展示用でしたが,大きなタイヤや珍しい白色が注目され,販売の要望が相次ぎました。安全,通気,保温機能も充実。予約限定で15万7,500円です。

 黒い方は,シャープの液晶テレビ「アクオス」をデザインした喜多俊之さんによる,使い勝手の良さに徹底的にこだわったベビーカー。こちらも大丸の限定販売です。

エコバッグすぐに売り切れ

 2番目は,「健康やエコ志向はお洒落」。

 一世を風靡したちょいワルおやじも,お腹回りが気になるでしょう。最近は「ちょい太おやじ」と失礼にも呼ぶようですが,お洒落に体型をカバーできる商品です。着て歩くだけでお腹を引き締める効果がある下着を,4月にワコールが発売します。普段使わない筋肉を刺激するという仕掛け。女性用はすでに600万枚売れるヒットになっています。

 カジュアル・パンツは,伸縮する素材で,ノータックのすっきりしたシルエット。食後もお腹を締めつけません。大丸がお客様の声をもとに開発した商品です。上着は,襟を寝かせればジャケット風,立てればブルゾン風に着こなせる「ジャケブル」。軽く薄く暖かく,旅行やドライブにぴったりです。

 次は,英国の人気デザイナー,アニヤ・ハインドマーチの「エコバッグ」。7月に世界同時発売され,各地で徹夜組が出たり,警察が出動する騒ぎになりました。大丸でも,あっという間に売れてしまいました。書いてある言葉は「I am not a plastic bag」。「私はビニールのレジ袋ではありません」と言っているのだと思います。2,100円でした。

 思いがけない商品が世界規模で大ヒットするのを目の当たりにし,時代の変化,お客様の意識の変化を的確に捉えることがいかに難しく,大切かを改めて実感しました。

常識超えた先にヒット商品

 そして3番目が,「意外な組み合わせ」。

 「食」の世界でも話題の多い年でした。折れそうなほど細身の女性が,何十人前も食品を食べてしまい,ミスマッチが受けて,一躍人気アイドルになりました。

 健康ブームに真っ向から挑んだのが「メガ食品」「デカ盛りフード」と呼ばれる,1人前の量を思い切り増やした食品です。ハンバーグを4枚も挟んだ「メガマック」,普通の3杯分ある「超大盛り牛丼」…。

 また,「塩味スイーツ」というものがあります。天然の塩をまぶしたチョコレートが大変な人気です。意外性があって,おいしい。他にも「塩キャラメル」や「塩アイスクリーム」。これからもブームになりそうです。

 既成概念や常識を超えたところにヒットが生まれる。私は「常に一歩先のトレンドを読んだ商品を開発しなさい」と言っています。

 日経MJ紙の今年のヒット商品番付で「メガ百貨店」が話題賞に選ばれました。9月に経営統合した大丸・松坂屋のJ.フロント リテイリング・グループの誕生も,一端を担ったのではないかと思っています。来年はさらに,商品開発や販売サービスでお客様から話題賞をいただけるよう,努力する所存です。