大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2007年7月20日(金)第4,169回 例会

わたしの関西

藤 井  彩 子 氏

NHK大阪放送局
アナウンサー
藤 井  彩 子 

1969年生まれ。’88年大阪府立北野高校卒業。’93年青山学院大学文学部卒業,NHK入局。松江局の後,’96年8月から最初の大阪局勤務。’99年に女性として初めて甲子園での高校野球実況全国放送を担当。「ニュース10」「おはよう日本」のスポーツキャスターを経て,’04年から2回目の大阪局勤務。

 関西にはなぜか縁がありまして,子どものころに2回,社会人になってから2回大阪に勤務をしているということで,何と10年以上も大阪に住んでいるという計算になります。それだけ大阪に住んでいると,内側から見る関西と,外側から見る関西と両方の見方ができて,ジャーナリストとしては非常に向いているのではないかと,私自身は都合よく解釈しています。

「高校野球」の文化を育む

 その私にとっての関西とは,一言で言うと「多彩な文化の宝庫」という印象があります。本当にいろんな文化が根づいた場所だと思います。食文化,芸術,お笑いの文化もありますし,芸能もありますし,さまざまいろんな文化があるんです。

 社会人になって最初の大阪放送局勤務のときには,「高校野球」という文化について親しみました。はっきり言ってハマリました。日本の中でも,プロ野球と大学野球は違いますし,高校野球と大学野球も違いますし,非常に多彩な文化を育むものだなということを感じております。中でも,高校野球というのは,日本独特の文化じゃないかなというふうに思っております。というのも,一スポーツのたかが高校生の大会が,全国の大人が熱狂するほど注目をされるというのは世界的にも珍しいことでありますし,プレーに決して適しているとはいえない関西の蒸し暑い中で,汗をダラダラ流しながらするプレーというのも,非常に独特の雰囲気があります。

 おもしろいなと思うのは,出てくる選手たちは自分たちにとってなじみのある選手でもないし知らない選手ばっかりなのに,見始めると見終わるころにはなぜかどちらかのチームを応援したくなるような独特の雰囲気があります。こんなふうにいろんなことを考え合わせると,一つの夏の風物詩になっているんじゃないかと感じるわけです。

 これが,私が高校野球を一つのスポーツのジャンルとしてだけじゃなくて,文化としてとても愛していて,なおかつすばらしいなと思っているところであります。そう考えると,やっぱり大阪,そして関西というところは,そういう高校野球という文化の中心地,それを育んでいる土地でもあるんだなというふうに思います。

「ルソンの壺」を担当して

 この4月から,日曜日の朝8時から総合テレビで放送している「ビジネス新伝説・ルソンの壺」という番組のキャスターを担当させていただいております。

 関西に活気があった安土桃山時代に,大坂堺の商人呂宋(るそん)助左衛門が,ルソン(今のフィリピン)から壺を持ち帰って日本で売ったところ大変な大もうけをした。そういう伝説があると言われております。これが「ルソンの壺」伝説ですが,番組は,そんなふうに独自の発想と挑戦で成功している関西企業を紹介して,その強さの秘密に迫っていこう。つまり,「現代のルソンの壺を探せ!」というのがテーマなんです。

 番組を作るにあたって,プロジェクトチームが最初に確認し合ったことが3つありました。1つ目は,せっかくこれまで番組を作ったことのない時間枠でゼロからスタートするのだから,とにかく「今までNHKにはなかったものをつくってみたい」。2つ目は,これもNHKの局が実は不得意だと言われていることですが,「関西らしさを前面に出してみたい」。3つ目が,「タブーに挑戦したい」。

 「ルソンの壺」というタイトルは比較的斬新なものだというふうに思っていただけると思います。聞いてすぐわからないタイトルというのは,大きなデメリットがある一方で,違ったメリットもあります。人間は,知りたいと思ったときに自分で調べて知ったことに関しては,すぐにわかったことよりも強い印象を持って覚えていられるという傾向があるんだそうです。このタイトルにも,一見わからない分,深いメッセージが込められるのかなというふうに思っております。

 さて,最後に内容についてです。一つの企業を取り上げて,それが宣伝というふうにとられてしまうと,公共放送としてのNHKの存在そのものを疑われてしまうわけです。一つの企業を取り上げて,その強みを紹介する。それはイコールPR宣伝になりかねないことなんですが,それをいかに宣伝ではなくて,客観的な事実としてお伝えするかということをいつも心にとめて放送しております。今回の番組そのものが一つのカラを打ち破る挑戦だというふうに思っていただければいいかなと思います。

関西経済と関西の応援を

 今,東京一極集中がとても進んでおりまして,地方が次第に輝きがなくなっているというふうに言われております。かつては商業の中心と言われていた大阪という土地も,東海地方に負けているんじゃないか,東京から大きく水をあけられているんじゃないかというふうに言われることもたびたびあります。

 そんな中で,NHK大阪放送局というのは日本で2番目に大きな放送局である前に,地方局の中で一番大きな放送局でもあるわけなんです。そこで,NHK大阪放送局としてはそういう地方を元気にするようなことを何かしたいというふうに考えました。その1つが,短絡的というふうに思われるかもしれませんが,関西経済と関西を応援したいということだったんです。そのためにこの番組をつくって,ある意味挑戦ともいえるようなことをしているわけです。私たちは,そんな思いを胸に番組をつくっておりますので,これからもかわいがっていただければなと思います。ご清聴ありがとうございました。