大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2006年6月23日(金)第4,119回 例会

トラック業界の光と影

辻    卓 史 君(自動車運輸業)

会 員 辻    卓 史 (自動車運輸業)

1942年生まれ。'66年一ツ橋大学商学部卒業。同年宇部興産(株)入社。'83年鴻池運輸(株)入社。'89年同社代表取締役社長,現在代表取締役会長。1984年4月当クラブ入会。'92年度クラブ幹事。マルチプル準フェロー,米山マルチプル準功労者。

 私の職業分類は「自動車運輸業」です。現在の連結売上高約1,900億円のうちトラック輸送の占める比率は3分の1弱で,残りは「物流一括請負」を中心に倉庫業,海運業,国際物流業務を行っています。当社は「自動車運輸業」というより,「総合物流業」です。

 物流とは英語で「LOGISTICS」。軍隊用語で「兵站」という意味です。「兵站」とは「戦場で後方に位置して,前線の部隊のために,軍需品・食料・馬などの供給・補充や,後方連絡線の確保などを任務とする機関」です。米国は軍事戦略・戦術でLOGISTICSを非常に重要視しています。太平洋戦争やイラク戦争でもこの点は明確です。我が国では,司馬遼太郎先生も自著で述べておられますが,伝統的にLOGISTICSをあまり重視しなかった。先の大戦でも戦線が拡大し,補給路が断たれた前線では,兵士が武器・弾薬や食糧不足で,悲惨な状況に追い込まれました。

企業も物流の重要性を認識

 産業界では最近,物流の重要性が認識されています。きっかけはバブル崩壊後の未曾有の不況と,国内外での競争の激化です。「物流の品質」を維持しながら「物流費を削減」するには,単に物流部門だけではなく,企業活動全体の流れから,ト-タル・コストを削減する考え方が必要です。無駄な在庫をなくし,リ-ドタイムを短縮することにより,商品補給でライバルに差をつける。こういう面からサプライチェーンマネジメント(SCM)の「物流と生産・販売の一体化による最適管理システム」という概念が注目されているのです。

 物流企業は陸運,海運,空運,倉庫業,そして国内物流・国際物流と多岐にわたり,動脈物流・静脈物流という分類もあります。弊社では米国西海岸・中国・ベトナム等で倉庫業,アジアで自社船を運航する海運業も手がけております。

 皆様は「トラック」という言葉からはおそらく「死亡事故や重大事故を起こす」「スピ-ドを出して暴走する」「黒い煙を上げ,公害をまき散らす」「飲酒運転で摘発」など,3K(汚い・きつい・危険)のイメ-ジが頭に浮かぶと思います。しかし,全国約6万1000社のトラック事業者で働く80万人強のプロ・ドライバ-のほとんどは,事故を起こさぬよう十二分の注意を払いながら,まじめに運転業務に励んでいます。トラックは私たちの体で言えば動脈・静脈の役割を果たしています。

安全,環境対策に注力

 2004年度の国内貨物輸送トン数55億7000万トンのうち,トラックによる輸送量は営業用・自家用合わせ91%を占めます。トラック保有台数は約730万台で,85%の約620万台は自家用(白ナンバ-,小型車中心)です。営業用の緑ナンバ-は7台に1台ですが,輸送量全体の56%を占めています。運行コストをみると,人件費が約40%を占め,典型的な労働集約型の産業です。原燃料コストは10%強です。全国トラック協会の試算では,軽油価格が1リットル1円上がると,業界全体で180億円のコスト・アップになります。現在,軽油価格は高騰が始まった2004年度に比べ1リットルあたり25円値上がりしましたから,業界全体では約4,500億円のコスト増となっています。

 トラック業界では品質ISOの取得促進,安全性優良事業所認定制度,過積載防止キャンペ-ンのほか,全国のプロ・ドライバ-が運転技術を競う「全国トラック・ドライバ-・コンテスト」開催など安全意識の高揚に努めています。トラックの安全はドライバ-教育が何よりも大切です。私はドライバ-の教育は行き着くところ,山本五十六元帥が言われたように「やってみせ,説いて聞かせて,させてみて,ほめてやらねば,人は動かじ」だと考えています。

 環境対策ですが,京都議定書発効による日本のCO2削減義務は,2008年~2012年に1990年比6%,2003年比では13.6%です。業界としては,エコドライブ(アイドリング・ストップ等),低公害車の普及拡大,GPS機能を有する運行管理システムの導入,省エネ・グリ-ン物流への取り組みなどにより,営業用トラック部門で2010年までに,CO2排出量を1000万トン削減するという国の目標達成は可能と見ています。

 現在営業用トラックには,取得段階の自動車取得税,保有段階の自動車税(積載重量により累進課税),自動車重量税,走行段階の軽油引取税,ガソリン税,揮発油税などの税金が課せられ,2004年度には合計約7,500億円に達しました。現在道路特定財源の一般財源化が問題となっています。税金の中には暫定税率としながらも本税(1964年:15円/リットル)の2.1倍(現在32.1円/リットル)を,40年に亘り恒久化している軽油引取税が約6,000億円も含まれており,業界としては一般財源化に強い反対の立場を取っております。

「つくる」から「使う」高速道路に

 日本では高速道路を利用する自動車の交通量は全体の約13%で,米国31%,ドイツ30%,フランス21%,英国19%と比べ著しく低い。最大の原因は「全国一律の割高な料金」にあります。多様で弾力的な料金により一般道の利用者を高速道路に誘導することにより,「つくる」ことから「使う」道路へと道路行政を転換する必要があります

 私ども業界としては「安全と環境」を最重要視し,「社会との共生」を図っていきたいと考えています。荷主と物流事業者が信頼関係に基づき,知恵を出し合う「パ-トナ-シップの構築」が,何より大切です。全国80万余,家族まで含めますとその数倍に達するプロ・ドライバ-の生活と,社会的地位の向上のため,微力ながら頑張る覚悟です。