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2006年5月26日(金)第4,115回 例会

南の島の物語

中 尾  哲 雄 氏

インテック代表取締役
兼インテックグループCEO
中 尾  哲 雄

1936年生まれ。'60年富山大学経済学部卒業。現職:富山経済同友会幹事,(株)テレコムサービス協会会長,電気通信サービス向上推進協議会会長,東北大学東軟情報技術学院(中国遼寧省)客員教授,とやま企業未来塾塾長,富山県立大学客員教授ほか。
ロータリー歴:'73年富山西RC入会,'95年度同クラブ会長,'97年富山みらいRC特別代表。PHF及び米山功労者

 今日は昔話をさせていただきます。2年ほど前,通産省を通して私に1通の知らせがありました。フィリピンには7,000の島があります。その南の島のあるお年寄りが亡くなったのです。亡くなる前からずっと,「日本のナカオという人のお陰で,バナナの木とパーム油(アブラヤシ)が植樹された。そのパーム油を日本が買ってくれ,今では島の財政に大変大きな貢献をしている」。40年にもわたり感謝してくれていた方が亡くなったという知らせでした。

 私は卒業して日興證券に入りましたが,昭和40年の証券不況に直面しました。その後,富山の不二越という会社を創業された井村さんという商工会議所の会頭に誘われ,富山の商工会議所に入りました。

 そこで地域開発のために富山に木材加工業を興そうということになりました。フィリピンの7,000の島のほとんどのラワン材は日本に入っていました。私はフィリピンの島に行き,その島の酋長や島民に挨拶しました。その島で大変変わった出来事がありました。

魚は3匹獲れれば足りる

 川で魚を捕っていたら,とても大きな粗い網で,どんどん魚が落ちて3匹ぐらいしか残らない。私は技術指導が必要と考え,網の目を細かくしたらと提案したのです。すると村の青年たちはケラケラと笑い,「そんなにたくさん捕ったら川に魚がいなくなってしまう。それに余れば腐ってしまう。きょうは3匹あれば十分だよ」。

 そのことは食べ物を無駄にする今の日本のわれわれに何か大きな警告をしてくれているような感じがします。

 島では夜は茅葺きの屋根の家でお月さんを見ながら寝ました。どういうわけか,頭と足の方に女性が座り,朝まであおいでくれました。横に置かれたサンパギータというフィリピンの国花の強烈な匂いで,なかなか寝つかれなかったのを覚えています。

 1泊で次の島に行く予定でしたが,「1泊で帰る者は友達じゃない」と,入れ墨をして槍を持った酋長が怒っているという話を聞き,結局2日間滞在しました。2日目の朝,見送ってくれた島の娘たちが,別れ際に「さようなら」とポロポロと大粒の涙を流して悲しむのです。

 通訳によると,村人にとって両親,兄弟が死ぬことが最も悲しい,村人が死んだり,村人と別れたりすることが2番目に悲しい,3番目に悲しいことは,二度と会えない人と別れることだというのです。私自身も大粒の涙が出ました。昔,私の家内が「涙粒の大きい人は心の優しい人だとどこかに書いてあった。あなたの涙粒は大変大きい」と言ったことがあります。私も自慢の涙粒を落として村人と別れました。

缶ビールで働く意欲を刺激

 7,000の島のラワン材は高度成長する日本で住宅の鴨居や敷居になりました。その後,ポートモレスビーの空港があるパプアニューギニアにも木材を切り出しに行きました。

 そこはフィリピンと違って,みんなほとんど働かない。村の人が山で木を切ってくれない。そこで,日本の缶ビールを飲ませ,味を覚えさせた。ビールを楽しみに働いてもらったのです。現地で角材に製材して輸出をしますが,夕方5時になると彼らはノコギリを止める。あと5分で切り終えても,サッと帰ってしまいます。1週間毎に給与を払いますが,みんな全額ビールを買って帰るので,お金は全部回収です。

 そして,ビールがある間は働きに出てこない。今まで食べ物は必要最小限でよく,着るものは布一枚あればいい生活でしたが,いろいろと物欲を知り,働くようになりました。そんな島のたくさんの木を切り植樹をしないと丸坊主になる。そこで当時の通産省(経済産業省)や富山県に働きかけ,富山の経済界,木材の業者さんからお金を集め,国からの補助金ももらって,現地で植樹しました。マレーシアにも植えました。

 その後,パーム油として日本に輸出されるようになったのです。冒頭の話はそのことに対するお年寄りのお礼だと思います。

 今から2年ほど前に,坂出にある知り合いの化学工場を見学したら,石鹸も石油ではなくて東南アジアのフィリピン,マレーシアのパーム油を輸入してつくっていました。石油の値段が上がると,競争力がついてくるようです。パームにはカロチンというガンの予防剤も含まれ,さらに残った中からバイオの燃料を採り,工場の自動車を走らせています。

性急に成果を求めないこと

 日本では東京や大阪への経済の一極集中が進んでいますが,東京頼みだけではいけません。富山からは中国の大連や上海便も飛んでいます。日本海を介して,アジアといろいろな取引が始まりつつあります。先日,北京から帰りましたが,北京は青空が見える日がほとんどありません。富山には黄砂が飛んできます。黄砂の中には,バクテリアなどさまざまな菌も入っており,富山県の海岸は特に被害を被っています。

 フィリピンの植樹はお金もそれほどかからず,それなりに効果も上がりました。今度は対岸に木を植える必要が出てきたと思います。中国の皆さんはもっともっと木を植えていただきたい。遠い40年前の話をしました。遠い先を見て,あまり性急な形で成果を求めない,ある意味ではとても無意味に見えるようなこと,小さな行為でも根気よく続けることが大切だと思います。