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2005年5月20日(金)第4,069回 例会

セルビア・モンテネグロの紹介

TIJANA ZDRAVKOVIC氏

セルビア・モンテネグロ大使館 大使秘書 TIJANA ZDRAVKOVIC
(ティヤナ ズドラヴコヴィッチ)

1976年生まれ。 '00年ベオグラード大学文献学部日本語学科卒業。'01年国際交流基金奨学生として, 関西国際センターで大学院日本語研修コース入学・終了。'02年2月セルビア・モンテネグロ外務省入省, 同年4月在日同国大使館勤務・大使秘書。 '04年『各国大使館員スピーチコンテスト』で文部科学省大賞受賞や,「全日本きもの装いコンテスト」でグランプリを取るなど幅広く日本で活躍中。

 セルビア・モンテネグロという国はバルカン半島にあります。2003年に旧ユーゴスラビアを母体として,セルビア共和国とモンテネグロ共和国の連合国家として設立しました。アジアとヨーロッパ,そしてロシアを結ぶ重要な交差点の位置にあります。セルビアは主に大陸性気候で,年間の気温がマイナス2度から32度と温度差があり,日本と同じように四季に富んだ気候です。一方,アドリア海に面しているモンテネグロは地中海気候で気温が年間を通して17度から25度の間。温暖で雨が少ない地域です。

多様な民族と文化

 首都はベオグラード。国土の面積は日本の約1/4の広さで,人口は約1060万人。昔のユーゴスラビアには「7つの国境,6つの共和国,5つの民族,4つの言語,3つの宗教,2つの文字,1つのユーゴスラビア」という有名な数え歌がありました。現在も国民の約62%がセルビア人。その他アルバニア人,モンテネグロ人,マジャール人,ブルガリア人,ルーマニア人,スロバキア人など37の民族が共存しています。宗教も民族ごとに異なる宗教が信仰され,主だったものにセルビア正教とイスラム教,カトリック,プロテスタント,ユダヤ教などがあります。

 なぜ2つの国に,多様な民族や言語,文化があるのか。ユーゴスラビアという国はなぜなくなってしまったのか-。

 ユーゴスラビアというのは南スラブ人の王国という意味です。1945年には侵入してきたドイツ軍と戦い,チトーの指導のもとにユーゴスラビア人民共和国が発足しました。しかしチト-の死後,ユーゴスラビアは分裂します。

 1991年から92年にかけ,ユーゴスラビア社会主義連邦共和国からスロベニア,クロアチア,マケドニア,ボスニア・ヘルツェゴビナが独立。90年代は各国の独立に伴う内戦があり,厳しい社会状況が続きました。2000年にミロシェビッチ政権の崩壊後,事態は徐々に改善され03年2月に連合国家セルビア・モンテネグロが建国されました。その後,治安が安定し経済改革が行われて,セルビア・モンテネグロは急速に回復しています。

魅力的な投資地域に

 旧ユーゴスラビアは共産主義経済体制でしたが,わが国は資本主義に移行。ただ道のりは必ずしも平坦ではありませんでした。(映像で)1993年に発行された紙幣,5000億ディナルです。これで何が買えたか?パンを10個買うことができました。

 しかし国際社会の対ユーゴ制裁が解除され,2000年12月の世界銀行,欧州復興開発銀行への加盟により国営企業の民営化が進み最近の経済成長率は平均5%から7.5%。海外からの直接投資対象国として東欧で最も魅力的な地域の一つになっています。

 わが国と日本との関係ですが,スポーツ,文化交流などが行われ,日本の大学生が留学するケースも増えています。大阪との絆について話しますと,1929年に金鳥の創立者・上山英一郎氏が日本におけるユーゴスラビア王国の最初の名誉領事に任命されました。除虫菊の原産地がユーゴスラビアであり,上山氏が除虫菊を使った蚊取り線香を発明した関係だと思われます。その後長く交流が途絶えましたが,去年8月に大阪でセルビア・モンテネグロ名誉総領事館が再び開設され,上山直英氏が名誉総領事を務めておられます。

 次に,文化についてお話しします。「スラバ」。セルビア・モンテネグロ特有のお祝いです。年間を通して多くの聖人の日があり,家族はそれぞれ,その中の一人を信仰しています。信仰する聖人の日になると,家族皆で集まり特別な昼食を食べ祝います。大きなケーキに一つだけコインが入れ,そのコインを含むケーキを食べた人は,その年幸せになると言い伝えられています。たくさんの川があり,魚料理の種類も豊富。日本人の口に合うのではないでしょうか。私は日本料理も大変好きですが,納豆だけは苦手です。

文化遺産の宝庫

 サッカー,バスケット,水球などスポーツも盛んです。Jリーグの名古屋グランパスで活躍したストイコビッチ氏をご存知でしょう。現在はわが国のサッカー協会会長です。イタリアのセリエAで活躍する選手がたくさんいます。最近では日本の合気道,柔道,剣道などの人気が年々高まってきています。

 国が安定して,外国人の観光客も増えています。残念ながら日本との間に直行便は運航されておらず,ヨーロッパの各空港から経由便を利用することが多いです。首都ベオグラードはヨーロッパの最も古い町の一つ。意味は「白い町」です。中心部では,民謡を歌うタンバリンオーケストラを聴きながらセルビアの料理が味わえます。川岸の水上に浮かぶカフェからの眺めも素晴らしい。モンテネグロとは「黒い山」の意味で,アドリア海岸は約300kmに及ぶ美しい砂浜,豊かな自然,中世の町など地中海の魅力的な観光地です。6月から9月まで海水の温度は22度から25度。その他,ローマ帝国時代の街道の名残や,点在する有史以前の遺跡群など文化遺産の宝庫です。

 苦難の時代を乗り越え,民主主義が定着し,新しい国として経済発展への離陸をしようとしているセルビア・モンテネグロを紹介させていただきました。一人でも多くの方が興味を持っていただければと思います。