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2004年9月3日(金)第4,037回 例会

僕の国際貢献ボランティア

田 沢  茂 之 氏

(社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
イラン復興支援担当
田 沢  茂 之

現在36歳。法政大学を卒業して,近鉄エクスプレスに入社。輸入セールスや通関業務などを4年9カ月担当した後,米国ピッツバーグ大学で修士号取得。専攻は経済社会開発で副専攻がNGOマネジメント。米国のNGOで研修後帰国。(社)SCJに入局。今年2月からイランの大地震サイトで医療施設の復興支援に従事。7月に業務完了し帰国。

 5カ月余りのイランでの地震災害復興支援を終え帰国したばかりです。本日はセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(以下SCJ)に参加するに至った経緯,実際にSCJで何をしているのかを,5カ月にわたる地震災害復興支援を実例にお話ししたいと思います。

不平等の是正を

 大学時代に哲学を専攻する中で,人間や社会について自分なりの考察を深めたと自負しています。そのころ思ったのは,世の中にはさまざまな不平等が存在する。だからこそ,すべての人が最低限度,享受しなくてはならない権利,基本的人権を実現していかなければならないんじゃないかということです。

 子どもは生まれてくる先を選べない。生まれながらにして所属する上で不平等があること,その是正を行っていくことは社会の義務であって,その義務は社会を構成する一人一人の意識によって改善されていくというふうに思いました。この思いが基礎となって,さまざまな問題が集積する開発途上国と言われる国々の問題に関しても,それなりの関心を寄せました。

 卒業後は国際物流業務を担当しております近鉄エクスプレスに就職し,20代後半で退職して米国に留学しました。語学留学を含めて大学院卒業までに3年ほど費やしました。その後は米国にあるNGOに参加して,1年余りそこで活動を続けました。日本に帰国後は,職員を公募していた団体に採用されてアフガニスタンに赴任しました。2年間ちょっと業務をした後,現所属のSCJで国際業務を担当する職員として従事しています。

 なぜSCJに参加したかというと,まず国際協力分野で,子どもの支援に特化した活動をしている団体だということが挙げられます。もうひとつの理由は,SCJの事業資金のパイが,他の日本のNGOと比較して非常によい状態だということです。安定した支援事業を実施していける,極めて重要な内容になってきます。

SCJの活動

 では,SCJの中で一体何をやっているのか。5カ月間のイランでの活動内容に触れながら,お話を続けさせていただきたいと思います。

 2003年12月26日にイラン南東部のバムで震度6.5の地震があり,死者3万人以上という大惨事になりました。このためにイランに赴任したわけです。支援の総額は約1億5千万円。その中でSCJが担当したのは3200万円ほどで,この資金でもって事業を進めていきました。

 主にやったことは,まず初動の地震災害があってから約1カ月は,寒い時期でもあったのでテントを配布したり,防寒着を配ったり。2カ月ぐらいたって保健センターの設置,医療機材の購入・提供などの支援を実施してきました。私にとって,どのような意味付けがあるのか。ひと言で言えば,それは真剣勝負で,やりがいを実感できる場だなということです。突然,死に直面しなければならない。親類を亡くした方も多い。そうした人たちを支援する中で,おのずから真剣にならざるを得ません。物にあふれた生活をしている私たちにとって,実感が難しい貴重な経験になったのかなと思っております。こうした国際支援は,草の根レベルでの外交という意味づけもあろうかと思います。

 支援の中で会った14歳のパリサという少女がいました。父親のいない大変貧しい7人家族です。地震発生で彼女の家族はすべての家財道具を失い,生活保護もカットされて,精神的にも大きなダメージを受けてしまいました。SCJやNGOの支援,現地の隣人からのサポートで何とか生活を維持しているようでしたが,数千円で家族が食べていくのは非常に困難な状態でした。

 19歳になる兄は失業状態が続いています。結婚が決まった17歳の姉は,個人の意向を全く聞き入れられない状態で早期結婚せざるを得ません。パリサも1年後には恐らく全く自分の意思は反映されない早期結婚が成立してお嫁に行くことでしょう。自分は学校に通い続けたい,というような話をしていました。今,実際に国際協力に携わる中で,子どもの権利は達成されていないんじゃないかと,これをまさしく実感する思いです。

市民社会の行動が不可欠

 構造的な子どもが抱える問題には,市民社会の行動が欠かせないと思います。国家が十分に機能していない国もいっぱいあるし,制度のみをつくっても民意が反映されていないような政策もある。問題への解決も制度のみの変更でよいのではなくて,自分たち自身で行動するボランタリーな発想こそが必要になってくるんじゃないか。そうした心を醸成することにより,他人を思いやる心とか,そういったものが回復してくると思います。だからこそ現在,非営利活動,市民社会による行動というのが欠かせないし,ますます重要になってくると思います。

 最後にSCJの宣伝をさせていただきますと,日本の子どもたちに対しても支援を始めました。学校などに出向いて,世界の子どもたちが直面する現状を語るというようなプログラムです。そうした活動に皆さんもご尽力,ご協力をいただければと思っています。皆さんのそうした力がSCJを支えていることになりますので,ご協力をお願いします。