大阪ロータリークラブ

MENU

会員専用ページ

卓 話Speech

  1. Top
  2. 卓話

卓話一覧

2004年2月27日(金)第4,013回 例会

2004年日本のダイナミズム

廣田 俊夫 君

会員 廣田 俊夫

1957年三重県生まれ。81年3月東京大学卒業。81年野村證券(株)入社。法人二部課長,事業法人二部次長を経て,97年高崎支店長,99年広報部長,01年企業金融一部長兼企業金融三部長。03年4月取締役大阪支店長,6月執行役大阪支店長。 当クラブ入会 : 03年8月。 PH準フェロー,準米山功労者。(証券業)

 株式を中心にマーケットの見方や,“日本人のポケット”についてお話しします。

 マーケットには,大きく分けて企業業績,需給,外部要因の三つが影響します。まず企業業績ですが,400社の経常利益の指標である「NOMURA400」を見ますと,バブルのピーク時だった1989年度を100として,2003年度には151まで上昇します。

 業種別に見ると,03年度に過去のピーク利益を更新したのが7業種,04年度の予想は10業種です。企業の経常増産率では03年度は12.9%の予想だったが,急激な円高を乗り越えて19.3%と増額修正されています。来期には収入も増え始めそうで,日本経済の復活が具体的に目に見えて表れてくると思われます。

企業業績が急速に回復

 株主資本が有効利用されたかを示し,株を買う指標の一つであるROEは今期8.7%で,バブル最盛期(9%)に近い水準まで回復しています。設備の過剰は89年水準まで減少し,設備の稼働率と設備投資は上昇機運にあります。結論をいうと,企業業績は予想以上のスピードで回復に向かっています。

 次に需給では,株売買に占める外国人のシェアはずっと高水準です。個人の割合も徐々に上がっています。一方,年金の代行返上や持合解消のピークは越えたと思います。私の実感では,外国人投資家の多くは強気で,日本市場を重要な投資対象と見ており,個人の関心も日増しに高まっています。

 外部要因で重要なのは,アメリカと中国です。アメリカでは失業率と賃金の上昇がポイントですが,失業率は03年6月の6.3%から,直近の5.6%へと着実に改善しています。また,景気が予想以上に底堅い,政策が非常に早く打たれる,先進国で唯一人口が増えている等の理由から,今年から来年にかけて3~4%の成長を見込んでいます。

 中国は,世界最大のDVDやパソコンの生産地で,鉄鋼の生産量は現在,日本の2倍以上です。その背景にある自動車の生産量も急激に伸びており,2010年に1070万台と見られ,日本を抜き去ると予想しています。今後もGDP8%程度の成長を続けそうです。

 日本の今の実質GDPは2.8%ですが,03年10月~12月は年率7%と13年ぶりの高い数字でした。輸出は急激に伸び,何より失業率が5.8%から5.2%へ下がっています。

強い日本 復活へ

 日本の強さの指標をいくつか挙げますと,粗鋼の生産量は23年ぶりの水準,新造船の受注件数は30年ぶり,東証の1日の出来高は15年ぶりといずれも過去最高に近い高い水準です。経済のマクロ指標から見て,日本は決して弱くはない。株式投資で弱気になる必要はないと考えます。

 株式投資のもう一つのプラス要因は税金です。株を売買する人にとって厳しい税制でしたが,ようやく売却益,配当とも10%の税率になりました。5年間の時限立法ですが,これを恒久化するか,一段の緩和が望まれます。

 次に,“日本人のポケット”について触れます。個人金融資産約1400兆円の内訳を見ますと,現金・預金が55.6%とアメリカ(12.9%)に比べて非常に多い。株式は7%,投資信託は2%です。一方,アメリカは株式32%,投資信託は12%とバランスが全然違います。しかし,アメリカでも25年程前は預貯金が40%,投資信託は2%でした。手数料の自由化や減税など,現在日本が行っている政策を当時実施したおかげで,個人資産が急激にマーケットへ流れた歴史があります。こうした現象が今後,日本でも起こる可能性が高いと思われます。

 日本人がごく当たり前に思っていた,元本保証で高金利の金融商品が簡単に手に入る時代から,自分でお金の行き所を見つけなければならない時代に変わってきたと言えます。資産管理の時代に入ったと考えます。

老後の蓄え 十分か

  投資家の行動の変化と関連して,老後にどれくらいのお金が必要かをアンケートした内閣府の調査によりますと,驚いたことに「わからない」という回答が最も多かった。日本は長寿国で男性の平均寿命は78.4歳,女性が85.3歳です。夫婦2人で最低限でも1か月25万円は必要という統計がありますから,60歳で定年になり80歳まで生きたとすると,最低でも6千万円が老後の蓄えとして必要になります。もう少しぜいたくをしようとすれば,8千万から9千万円の金が必要となるでしょう。

 以前のように7.2%の高金利の預金なら,10年で資産は2倍になりますが,今の0.1%では約700年かかります。これでは手をこまぬいている訳にはいかず,真剣に資産管理に向き合わなければなりません。最近は海外への資金シフト,外債投資も増えています。

 最後に,株でもうける秘けつを申し上げたい。安い時に買って高く売る。当たり前のようですが,株のグラフを見ますと,一番高値の時に出来高が最高になっています。最高値の時に買う人が多いことを示しています。

 また,投資をする上での重要なポイントは,長期投資と,分散投資。日本人ほど自国通貨(円)が好きな国民はいません。円は絶対大丈夫という確信があるようで,円以外の資産は1%程度しかありません。少し前の調査データですが,ドルを持つアメリカ人ですら,資産の7%をドル以外で,ドイツ人は17%をマルク以外で持っていました。

 地政学的なリスクを考えると,国際的な分散投資が必要な時代だといえます。